~山村の風景と霧中の山~
タイトル
ししくらやま(1288m)
2006年9月16日(土)曇り

7:30奥多摩駅-[バス]-8:05陣屋-9:00大寺山9:05-9:20大成峠-10:20鹿山10:40-11:25大丹波峠11:40-12:15マリコ川登山口-12:35丹波山のめこい湯14:20-[バス]-15:15奥多摩駅 歩行時間:3時間50分

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こともあろうに、フィルムを持って行くのを忘れてしまった。中央線の電車の中で気がついた。こんな朝早くどこにも売っていないだろう。今日はザックの中のカメラは無用の長物となる。
偶然だが、鹿倉山は前回登ったときもカメラのレンズがトラブルでまともな写真が撮れていなかった。こうなったら今日は携帯電話のカメラを使うことにする。このサイトでケータイの写真を載せるのは初めてである。

登山口から急登

鹿倉山は奥多摩の西の外れ、丹波山村と小菅村に挟まれるようにある。仏舎利塔の建つ大寺山とともに鹿倉尾根を形成している。
鹿倉尾根は大菩薩峠に至る「丹波大菩薩道」と尾根続きになっていて(登山道はつながっていない)、地域的には大菩薩山塊に属するが、何故だか奥多摩の山に入れられている。ガイドでも奥多摩のほうに記載されている。

コナラやカラマツ、檜などの樹林が優勢で冬でも大きな展望は得られないが、穏やかな稜線は奥多摩らしさがあり、どこか心休まる雰囲気がある。丹波山村、小菅村どちらに下りてもいい温泉に立ち寄れるのも魅力である。
1999年に丹波から深山橋、2003年末に深山橋から小菅に下るコースを取った。3回目は同じく深山橋からの急登を詰め丹波に下りることとする。

落ち葉が色づき始める
落ち葉が色づき始める

奥多摩の空は厚い雲に覆われ、土曜日だというのにバスに乗るハイカーも数えるほど。奥多摩湖越しに、大寺山の仏舎利塔は見えているが、その先の標高の高い部分は雲の中のようだ。
深山橋の先、陣屋バス停から売店の横を入り、すぐに登山道となる。このコースは最初から急な登りである。くもの巣を木枝で払いのけながら、ジグザグの道を行く。
傾斜はいったん緩まるが、岩っぽいやせ尾根を経てまた急登。しかし道自体は歩きよく、先週の奥秩父のように下草もない。

登山を始めて間もない頃、奥多摩の三大急登でこの道を上げていた(他の2つは鷹ノ巣山の稲村岩尾根と本仁田山の大休場尾根?)。しかしその後もっとすごい道をいろいろ歩いたので、今はこの鹿倉尾根も急な登りの一つ、くらいに思えるようになった。
雑木が優勢になると落ち葉が目立ってくるが、黄色や赤いものもあり道を早くも彩り始めている。ここ数日気温が低かった影響なのか、気象庁は暖秋予想をしているが、こういうのを見ると今年の季節の巡りは意外と早いのではと感じる。

最後のひと登りで、開けた大寺山頂上(982m)に出る。白い大きな仏舎利塔は、雲取山など他の山からもよく目立つ。
ここからも他の山の展望がいいはずなのだが、今は樹林がじゃまして空しか見えない。葉が落ちれば奥多摩湖の眺めもいいはずである。


快適な森の道

鹿倉山頂上

大丹波峠 現在と7年前

丹波山の風景

鹿倉山への尾根歩きに入る。しばらくは薄暗く密度の濃い自然林で、ここは新緑や紅葉がよさそうだ。
大成峠で鴨沢からの道を合わせ、尾根状のすっきりした道になると、それ以後は檜林が南面を覆うようになる。この植林帯は冬季に日だまりハイクを求めて歩くときの厄介者になる。あまり早い時間に歩くと、行程ずっと日が射さず寒い思いをするのだ。

それでも足元には笹が出始め、気分の良い稜線である。周囲は霧に覆われてきた。急登を2回交えて高度を上げ、鹿倉山頂上に着く。唯一開かれている西面も乳白色の眺めだ。
大気は霧雨のような状態で少し肌寒さを覚える。この天気の中、誰にも会わない。どうやら今日はこの山稜を独り占めしていたようだ。

鹿倉山からは小さな下り登りがあり、やがて高度を落としていく。雑木の道は冬季は気持ちのいいところだ。そのうち植林帯の急降下となる。なかなか長い。飽きが来た頃前方が明るくなり、大丹波峠(946m)に着く。どこか懐かしさの感じられる静かな峠である。
ここから北西に下りれば丹波山村、半舗装道を南に下りていけば小菅村に行ける。町村合併が当たり前の世の中で、2つの村に通じる峠というのも関東甲信付近では貴重なのではないか。
ハイキングコースの説明がある大きな看板には、何故か深山橋からのコースが載っていない。また、道はないが尾根伝いに直進すれば大菩薩方面に通じるはずだ。
なお以前は、峠から丹波山村が見下ろせ展望が得られたのだが、植林が生育し眺めが悪くなりつつある。

丹波山村への下山は、幼植林が育ち眺めのなくなった斜面を下り、やがてマリコ川の流れに沿うようになる。ツリフネソウがたくさん咲いている。
マリコ川という名前はどういう由来でついたのかが興味ある。里の指導標には「マリ子川」と書かれているのでおそらく人名なのだろう。丹波山村には他にもオイラン淵などちょっと考えさせられる、哀しいいわれの地名があるが、このマリコ川もそういう由来なのだろうか。

治山工事をしている場所を通ってマリコ川登山口に着く。舗装車道を歩いて丹波山の集落へ。コスモスの花を前景に、雲のかかった山と村の落ち着いたたたずまいがマッチしている。

青梅街道に上がらずに、のめこい湯には裏側の道を通って行く。つるつるになるお湯は今日も気持ちよかった。しかしここへ入れば入るほど、以前の仮施設の頃の玉子臭のするお湯を懐かしく感じる。泉質が変わってしまったのは施設が大きくなったのが理由か、わからない。

うつらうつらと眠りこけながら、55分のバスの旅で奥多摩駅まで戻る。


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