~生命力溢れるブナの尾根~
タイトル
かやのきのぼりおね
2009年5月16日(土)曇り

7:50奥多摩駅-[バス]-8:27雨降り8:35-8:40ノボリ尾根取り付き-9:22急登終わり-10:12稜線10:20-11:05榧ノ木山11:20-12:00倉戸山12:25-13:10倉戸神社-13:20倉戸口13:41-[バス]-14:00奥多摩駅
歩行時間:4時間
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(ご注意:ノボリ尾根は一般の登山道ではなく、特に下部は難路なので、初心者はご遠慮を。中級の方も慎重に行動して下さい)

鷹ノ巣山の1ルートである榧ノ木尾根は、登山口の倉戸口から登ると長いコースになる。
およそ中間点にある榧ノ木山は、西方に明瞭な尾根を派生させ、峰谷地区に没している。鷹ノ巣山の奥集落登山口に立ったときに真正面に大きく見える尾根で、どこからも目立つのだが不思議と一般登山道はない。
歩くことが出来れば、鷹ノ巣山へのいいショートカットコースに利用できそうである。今日はこの「ノボリ尾根」を使ってみる。
松浦氏著「静かなる尾根歩き」他、ネットにも記録が見られるが数は少ない。


根を張り出したノボリ尾根のブナ

峰谷行きのバスに乗る。天気がいまひとつということもあり、乗客は少ない。
終点から3つ前の雨降りバス停で下車。いつも思うが、このあたりのバス停は「雨降り」「下り」など、面白い名前が多い。いずれももちろん地区名である。どういう言われで雨降りなのか、興味深い。

バス停から50mほど奥に進んだ所に、コンクリートの階段がある。これを登り山に入っていく。
コースは尾根を登っていくのだが、すぐ右手に山道が続いていたのでちょっと入ってみることにした。しかし、黒いフェンスの縁を伝っていった先で、すぐ行き止まりになってしまった。
引き返して尾根伝いに登っていくことにする。周囲は雑木も混じるが、おおむね檜などの植林である。時々ヤマツツジを見る。
踏み跡はほとんどないと言っていい。しかもかなりの急登である。しばらく行くと、東京都の古いマークの石標が、尾根筋に点々と埋められているのに気づく。これを拾っていけば大丈夫そうだ。
地形図上の破線表示である巻き道が分岐するはずだが、全く気づかず。いったん緩やかになるも、再び急登。しかも今度のは半端でなく、手を使って這いつくばるように登る。

雨降りバス停
登り出しは細い尾根
ギンリョウソウ
何かの宣伝車だろうか、下のほうから三百六十五歩のマーチがスピーカーで流れてくる。高度はかなり上げているのによく聞こえるものだ。急坂なので、下界との直線距離は意外と短いのだろう。ワン、ツー、ワン、ツーとリズムをとって歌っているが、とてもそんなペースで足は運べない。

木の幹を手がかりに体を持ち上げたい。しかし岩の出た斜面のため、つかまる木が無い。気がついたら急斜面で立ち往生してしまっていた。
ここは落ち着いて、周りを見る。いったん安全なところまで下りて、別の場所から登ることにする。
踏み跡のない斜面はジグザグに登るすべがないから(敢えてそうして登ってもいいのだが)、直登するしかない。したがって距離は短くなる一方で激しい急な登りが続くことになる。
ノボリ尾根とはよく名づけたものだ。

登りきると、その先はしばらく傾斜が緩くなる。ようやく、崖のような急坂から解放されたようだ。落ち葉溜まりの細い道がやがてはっきりしてきて、踏み跡らしくなった。
アシビの他、新緑の広葉樹の割合が多くなる。尾根は幅広くなりやや左に方向を変える。下界の音楽がまだかすかに聞こえる。さっきの威勢のいい歌から、何故かマイナー調の演歌に変わっていた。

様々なブナの木
オオイタヤメイゲツ
フタリシズカ
奥多摩湖沿いへ

一歩一歩高度を稼ぎ、だんだんと山の深さを感じてきた頃、稜線と思しき場所に到達する。「平成16年度間伐事業」の看板が立っている。登ってきた側はまだ檜の植林だが、反対側はブナの多い広葉樹の森になっていた。

東側に伸びる緩やかな尾根をたどって、榧ノ木尾根を目指す。ブナ、ミズナラの豊かな自然林だ。特にブナは地面に幾筋もの太い根を張り巡らせている。地表が痩せていて根が浮き出ているのかもしれない。しかし溢れんばかりのブナの生命力を感じる。
また、あたりを見渡すと、細く若い木もあれば枯れたり倒れたりしているのもある。この稜線では樹林の世代交代が盛んに進んでいるのか。一般の登山道だとこういう光景はあまり見ない。頭の上は新緑だが、今日に限っては地面に視線がいく。

76/75の見出標を見て、なおも緩く高度を上げていく。見覚えのある指導標が見えてきて、榧ノ木尾根に到達する。指導標は、ノボリ尾根の方向を示した板は外されているが、手書きで小さく書き添えられている。
堂々としたブナ
稜線にはトウゴクミツバツツジが少しだけ花をつけていた。はるか下に奥集落の民家が見える。石尾根方面に目を向けると、見事にガスに隠されている。今日のような天気ではしょうがないだろう。とりあえず、目立たないピークの榧ノ木山(1485m)に登り、休憩する。

このまま下ってしまうと、距離的には物足らないものになるが、今日は厳しい登りを経てきたのでこのまま倉戸山経由で下山することにする。
榧ノ木尾根はここから下、新緑真っ盛りだった。ミズナラやカエデの多い、のんびりした道である。倉戸山(1169m)に来ると緑も濃くなり、樹林だけ見ればちょっとした初夏の様相だ。しかし日が差さないので今日の山は寒い。おそらく気温は10数度だろう。
行き交う登山者は多くない。新緑の奥多摩なのにちょっと意外である。やはり皆、晴天の日を狙っているのか。

今日は倉戸口に下りる。麓のほうは若干日が差している。しかし少し風が出てきた。天気は下り坂だろう。
ガスのかかった山並みを見ながら倉戸神社、そして倉戸口へ下山する。まだ早いせいもあろうか、帰りのバスの乗客は自分だけだった。


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