~新年を待つ静かな奥多摩~ ごぜんやま(1405m)、くじゅうさん(954m) 2005年12月31日(土)快晴 7:30奥多摩駅-[バス]-7:45奥多摩湖バス停-8:10登山口-9:05サス沢山-10:05惣岳山10:10-10:30御前山11:20-11:25湯久保尾根分岐-12:00クロノ尾山-12:15鞘口山12:20-12:45江戸小屋山-13:10九重山13:20-14:00送電鉄塔14:10-14:15林道-14:30琴浦バス停-14:50奥多摩駅 歩行時間:5時間50分 |
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今年もずいぶん山に登ったものだ。山行回数や歩行距離など、昨年までの記録とほぼ変わらない水準まで来た。 ただひとつ宿泊日数だけは、年間を通して歩くようになった1999年以来、最も少ない数字となった。仕事が忙しかったことに加え、週末の天気予報が悪く(予報が悪いのであり、実際の天気はそう悪くなかった印象もある)、宿泊の計画が立てづらかった点もある。 反面、日帰りの回数がかなり多くなった。皮下脂肪がつき気味なのを気にして、ダイエットの意味もかねて意識的に山行回数を増やした。しかし成果は芳しくなく、逆に3キロほど体重が増えてしまったのだ。 消費するカロリーより体に入るカロリーのほうが多い、単純に言えばそういうことなのだ。しかし摂取カロリー増えたというわけではない。 今までスポーツジムに通って筋力トレーニングをしていた時間を、今年は山行に回してしまったため、基礎体力の維持がおろそかになっていたようだ。その結果(加齢の影響もあいまって)自分の体の代謝力が落ち、カロリーの消費能力も下がってしまったのだろう。 本などに「山へ行くための体力づくりは山に行くことが一番」という説明がされているのをたまに見るが、それは毎日のように登山している人に言えることで、通常1週間に1回程度の山行がせいぜいの人にとってはむしろ、基礎体力の維持がより大切になるだろう。 快適な登山を末永く続けていくには、下界でのトレーニングを省くわけにはいかないと実感した次第である。
大晦日はいい天気のようなので、今年最後の山に登ることにした。人の絶えない奥多摩の山も、年末だけは土日であろうとも閑散としている。 久しぶりに清八新道から小河内峠の道をとり、御前山に登りたい。そしてその後は少しマイナーな道を下ろう。 奥多摩駅からのバスは登山者だけ、4名きりの乗客。ひとり奥多摩湖バス停で下り、寒風吹くダム縁を進む。 長らく(建前上)通行禁止となっていた護岸林道は、少し前から「いこいの路」として遊歩道化された。でこぼこ道も整備され格段に歩きやすくなっている。 整備されたのであの登山口もわかりやすくなったかと思いながら林道を歩いていると、案の定整地された道が山側に伸びている。御前山を示す指導標も立っているのでこれに入ったが、結果的に間違いで清八新道ではなかった。 じきに植林下の支尾根に乗り、急登となる。山腹越しに見える稜線の角度が違って見えたので、ここは清八新道でないとわかった。どうやら1本手前の、大ブナ尾根から西側に派生する支尾根に取り付いてしまったらしい。さっきの指導標が小河内峠でなく「御前山」と書かれていた理由がわかった。
ジグザグの登高を繰り返して着いた所は、アンテナ設備のあるサス沢山山頂(950m)だった。青い湖面の奥多摩湖や石尾根の稜線がきれいに展望できる。 結局大ブナ尾根を登高することになってしまった。歩きやすい道ではあるが、奥多摩でも屈指の急登が続く。 前方に1人、同じ単独の登山者が歩いている。落ち葉を踏み払う乾いた足音だけが、静寂を埋めるように響き渡る。 自然林の割合が多くなり、木の間から富士山が覗き出す。前方に惣岳山のピークが見え出すと、高度はもう1100mくらいだ。気温もぐっと下がり、足元にも雪が目立ってくる。 岩がちの急坂をこなしいくつかの小ピークを越えて、防火用水のある惣岳山(1340m)にたどりつく。小広く気持ちの良い山頂で、腰を下ろして休憩するが、肌をさす風がなんとも冷たい。 自然林の尾根を下り上りして、1年半ぶりの御前山に向かう。 頂上の100mほど手前にベンチがあり、ここからは富士山が大きく見える。いつも誰かが先に座っているので今までここで休憩したことがなかったが、今日は独り占めだ。 富士山の雪はやはり、この時期にしては少なすぎる。富士山に限らず、大雪の日本海側とはうらはらに、南関東の山地は今冬雪が少ない。自分が山を歩き始めて、一番積雪の少ない年である。 富士山の左に御正体山、右に三ツ峠山。配置が左右対称で、どうしても太刀持ちと露払いを従えた横綱の土俵入りを連想してしまう。三ツ峠山は山頂の2本のアンテナが鬼の角のように見える。 御前山頂上(1405m)は、北面の樹林が伐採されて広い展望が得られるようになった。三ノ木戸山から雲取山まで石尾根のほぼ全貌、三ツドッケや酉谷山などの長沢背稜、奥秩父東端の山並みまで見渡せる。 登山者もまばらで、今日は本当に静かな山である。 南東方向の道に入る。避難小屋への分岐を見て、さらに湯久保尾根を分けると大岳山へ続く縦走路に入る。 三頭山~御前山~大岳山とつなぐ尾根道は「奥多摩主脈」と呼ばれているが、たいそうな名前の割には歩かれてはおらず地味な存在である。 途中で舗装車道が乗っ越しており、展望もいまいちであることがその理由かもしれない。今日のような年の瀬でなくとも、比較的静かな山道である。
アップダウンを繰り返してクロノ尾山(1170m)へ。このあたりから植林帯が優勢な尾根となる。 目の前に高い、先っぽがいびつに尖った形をしているピークが鞘口山(1142m)である。ここが、これから下る江戸小屋尾根の入口となる。 江戸小屋尾根に入ると左はほぼ全面的に杉・檜の植林、右側は雑木の道が続き、樹相にほとんど変化はない。 下って登り返し始めのところは右側が大きく伐採されており、鋸山の全貌と鋸山林道が見下ろせる。 ちょっとした岩場を登りきったところが江戸小屋山(970m)というらしいが、山名標識もない山頂だ。 さらに急坂を下って上り、九重山山頂(942m)となる。鳥獣保護区の標識にマジックで「九重山」と書かれているだけだ。 このあたりは尾根が竜のように曲がっているように見えるので、九竜山と呼ぶこともあるそうだ。どちらにしても国土地理院の地形図に山名は載っていない。 あまり面白くない道なのでサクッと下ろう。この尾根道は青梅街道の琴浦付近に下っていて、奥多摩駅まで歩いて戻れるのでそれだけでも下山路として利用価値はある。しかし、今日の歩きはこれからが正念場だった。 赤テープに従って、境橋方面へ落ちる尾根を分けて右側の尾根の踏み跡を辿る。かなりのヤブ道である。 やがて急な下りとなり、木の枝や下草をつかみながら慎重に下る。場所によっては落ち葉が厚く積もって滑りやすい。踏み跡も判然としなくなり、尾根が細いのと、細枝につけられている赤テープをよりどころにしながら進む。 ガレ場を右から巻くあたり(25000図で岩場のマークあり)では、それこそ落っこちるような急坂である。日がささず汗も出ないのに、心の中は大汗をかいている。 植林と伐採地の間を縫うようにヒイヒイいいながら下っていくと、はるか下に青梅街道沿いの民家が見下ろせるようになる。 そして眼前には、三ノ木戸山が覆いかぶさるように大きな山体を示している。境の山上集落も見上げる位置にある。 この尾根は展望がきく場所が意外と多い。それも、他では見たことのなかった角度から奥多摩の山並みを眺められるので、とても新鮮な印象を持つ。 もうちょっと、もうちょっとと思っているうち、眺めのよい送電鉄塔基部。小憩して少し進むとようやく林道が見えてきた。鉄梯子でその林道に下りて、残すは伐採地の緩い下りのみであった。 弘法大師の祠の所から尾根を外れれば奥多摩病院の裏手に下りれるということだが、自分は尾根伝いに進んでみた。すると琴浦バス停の西方100mあたりに下ることが出来た。 20分の歩きで奥多摩駅。青梅街道も数台車が通る以外、通行人も少ない。地元の人は大掃除やお正月の用意などでみな家の中なのだろう。 思った以上にタフな道だったが、今年も無事に締めくくることが出来た。ガラガラのホリデー快速に乗って帰途に着く。 |