~晩夏に味わう奥多摩の静寂~ 湯久保尾根から御前山(1405m) 2003年8月30日(土) 曇り 武蔵五日市駅7:03-[バス]-7:35宮ヶ谷戸バス停-8:50仏岩ノ頭9:05-9:40あと2kmの導標-10:40御前山11:20-11:30鞍部-13:25境橋バス停-14:00奥多摩駅 歩行時間:5時間30分 |
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武蔵五日市駅からバスに乗る。土曜日というのに登山者は自分ひとりだ。 宮ヶ谷戸(みやがやと)バス停で下りる。次の停留所は「御前山登山口」なのだが、どちらにも取り付き口はある。 今日は湯久保尾根を登って御前山。この尾根は5年前に下ったことがあるが、植林が多かったこと以外あまり覚えていない。そういえば、前回は御前山登山口の方に下りた記憶がかすかにある。
田畑の間を通って山道に入る。急坂を少し登り、左に鳥居を見ると道は平坦となる。桧の植林の中の薄暗い道である。 しばらくは斜度もない、穏やかな道。初めのうちはセミや野鳥も鳴いていたがやがてあたりは静寂に包まれ、晩夏から秋への間の独特な雰囲気が漂う。今日1日、頭の中をからっぽにして過ごせそうだ。 1軒の廃屋の横を通り過ぎる。かすかに麓の眺めが得られる。 このあたりはやはり季節柄、ブッシュが多い。植林帯の間は足元もすっきりしているが、いったん雑木林に入ると腕や肩のあたりが草にこすられるところが多い。しかし行程の多くが植林を占めている。
岩っぽいところを過ぎる。このへんが仏岩だろうか。地図には仏岩ノ頭というピークがあるが登山道はどうやら左側を巻くようだ。 なおも緩やかな道が続く。この間、左に湯久保への分岐を2箇所、右に神戸(かのと)岩への作業道を1箇所分ける。湯久保山らしきところも山頂標識がないせいか知らずに通り過ぎる。 足元にはタマガワホトトギス、ソバナなど夏の終わりの花々が多く咲く。 やがて「御前山まで2km」の指導標を見る。前後して造林小屋、ここからようやく急登が始まる。 登り始めは青空さえ見えていたのに、樹林の間から垣間見る景色はガスで真っ白になっている。 急登の道は御前山の西側斜面を巻くように続く。ブッシュが勢いを増し前が見えないほどだ。所々でレンゲショウマ、オオバギボウシ、ノコンギク、フシグロセンノウも現れる。 避難小屋の道を分けもうひと登り。霧の立ち込める御前山頂上へ到着する。「御前山まで2km」の指導標から、たっぷり1時間かかった。 登りでは誰にも会わなかったが、頂上にも人っ子一人いない。やがて奥多摩湖側から何人か登ってきた。 もともと展望に乏しい頂上。今日はそれに輪をかけて何も見えない。しかしほっと落ち着ける場所だ。 御前山は、春先のカタクリで有名な山である。だが夏や冬に登るこの山は、ある意味で一番奥多摩らしさの残る、静かで落ち着いたところかもしれない。今日で通算5度目の登頂、登れば登るほどこの山の良さが感じられてくる。 自然林や花の多さ、展望のよさなどはたしかに、楽しめる山かどうかのモノサシにはなるが、山の魅力はそういった目に見えることだけでは、決してないことに気づかされる。 そんな山にも、時間が経つにつれて到着する人が増えてきた。それでも合わせて5人ほどだ。下りは、まだ歩いていない栃寄森の家へのコースを取る。 惣岳山との間の鞍部まで下り、右に折れる。「境80分」と手書きの標識がある。 すぐに水量の豊富な水場を過ぎ、やや倒木に悩まされながらも霧の道を淡々と下る。あまり歩かれていない道なのだろう、目の前にクモの巣が何度も現れ、そのたびに背を低くしてくぐり抜ける。
あずまやを過ぎしばしの急な下り。下から栃寄沢の水音が近づいてくる。やがて、あっけなく舗装林道に下りる。ここから国道411号線に出会うまで林道を下る。 途中、手打ちそばで有名な「とちより亭」と「栃寄森の家」の横を過ぎる。どちらも人で賑わっている。先週、テレビ番組(アド街ック天国)で奥多摩の特集が放映されたが、その影響もあるのだろうか。 下りの途中で林道を離れ、ショートカットできる道もあったように思えるが、気づかずにそのまま舗装道を下った。そのためか、境橋バス停まではけっこうな時間がかかった。80分では着かなかった。 下りた時間が悪く、奥多摩駅へのバスは1時間後。バスは諦め歩くことにする。 すぐのところにあるトンネルに入る。車道と歩道の境目は白いラインのみ。車がぜんぜんスピードを落とさず走り過ぎて行くので恐ろしい。 30分と少しで奥多摩駅に着く。駅近くの神社にある三本杉を、何人もの人が写真に収めている。テレビ番組に紹介されていた杉の木なのでこれこそその影響だろう。駅前を行き交う人も、いつもより多い気がする。 もえぎの湯に寄ってみたが混雑で30分待ちとの看板。氷川の川沿いのキャンプ場も盛況だ。記録的な冷夏となった今年も、8月最後の週末でどっと人が繰り出してきたようだ。手軽に自然が楽しめる東京の奥庭、奥多摩ならではであろう。 近くの旅館で入浴し、帰路に着く。 |