棒ノ折山の麓、奥茶屋登山口の沢沿いにハナネコノメが咲き出したというので、見に行った。
ハナネコノメ
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展望列車の青梅線で川井駅下車、バスで上日向まで行く。乗客は自分を含め2人だけ。降り際に運転手さんから時刻表をもらった。
ここからは奥茶屋まで30分ほどの歩きである。薄暗い谷間の道には道脇にまだ雪が残っている。
この界隈にはキャンプ場が多い。清東園を過ぎ、比較的広い中茶屋キャンプ場。コテージ内に管理人さんが一人いるが、暇そうだ。
やがて奥茶屋キャンプ場に着く。沢沿いの登山道はわさび田を見ながらの緩い登りになる。わさびの白花が咲き始めている。
ハナネコノメはどこだろう。時々渡る木の橋の上で沢を注意深く観察する。びっしり白い花のついた岩があった。
ワサビ田に咲く白花
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ハナネコノメ
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棒ノ折山頂上
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雑木の尾根道
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ハナネコノメの花期は3月中旬から下旬。梅と同時期に見られる。米粒ほどの小さな白花に赤色のがくが鮮やかだ。山の春はこの小さな花の誕生から始まる。
山の神から沢を離れ、杉林の急な登りとなる。いったん緩まるが、さらに厳しい急登。展望もなく暗い中、ここはがんばって登るしかない。ここを抜ければ大展望の頂上だ。
頭上まだ100mほど高い場所に、青いものが見えてきた。苦行ももうすぐ終わり。植林を脱しカヤトの原へ飛び出す。太陽がまぶしい棒ノ折山頂上。
キャッチボールも出来る頂上とはよく言ったものだ。50m走位も楽々可能なだだっ広い場所である。
春霞みですっきりとした眺めは得られない。それでも武甲山や大持山、武川岳などの奥武蔵の山がそれぞれの個性ある形で高まりを見せている。
東側にはだだっ広い関東平野が横たわっている。有間ダムの方角を見下ろすと、緑とも黄色ともつかぬ煙がもうもうと上がってきている。花粉のようだ。
雨上がりの気温の上がったこの日、花粉も待ちに待ったようにいっせいに飛び出した感じだ。
ゴンジリ峠で名栗への道を分け、尾根伝いに歩く。黒山(842m)に登り返すと大岳山など奥多摩の山が見えた。すぐ隣の川苔山が高い。
アシビ豊かな稜線を上り下りする。ほのかな木々の匂いが春の到来を実感する。うららかという言葉を通り越した強い日差し、暑いくらいだ。シャツの腕をまくる。
逆川の丸を過ぎるとマンサクの花があった。少し下って川苔山が大きく見える展望の地に出る。何となく黄色っぽい眺めは花粉だけはない。黄砂の影響であろう。
小さなアップダウンをこなし、興越山(こしごえやま)の山名板があるピークへ。樹林越しに尖がった岩塔を従えた岩茸石山が見える。名坂峠からの登りは今日最後の頑張りどころ。
岩茸石山も棒ノ折山に引けをとらない広い頂上を持っているが、お昼時でかなりの混雑ぶりだ。棒ノ折山から続く稜線を眺めながら休憩する。
惣岳山への縦走、さらに神庭尾根を下ることも考えたが、今日は、前回気になった上成木への登山道を下山路とする。名坂峠から升ヶ滝方面の指導標に従い、谷へ落ち込んだ道に入る。
升ヶ滝
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名坂峠~升ヶ滝間は青梅市が平成16年に登山道整備したもので、上成木からの升ヶ滝ハイキングコースと接続している。踏み跡はやや薄いが、惑うことなく下れる。沢沿いとなり、石垣を見ながらのゆったりした下りだ。
途中でネコノメソウを見る。季節が進めば湿性の山野草が見られるかもしれない。
升ヶ滝へは分岐から山側へ少し登り気味の道に入る。鉄製の手すりの前で滝と対面。線の細い女性的な滝だ。滝つぼが四角くなっているので升ヶ滝との名前がついたといわれる。
さっきの分岐に戻るのだが、そのまま進行方向にも踏み跡があるので行ってみる。しかしいつの間にか分岐に戻ってきた。滝見物の道は周回コースになっていたようである。
成木地区の取水場を過ぎ、しばらくすると上成木集落に下り立つ。道脇にアズマイチゲやスミレが咲き出している。カタクリの葉も。民家の庭には梅と満開の福寿草。視線を上げると、山の斜面では畑仕事が始まったようだ。
1ヶ月位あとの春爛漫の風景も見てみたくなる、暖かさに満ちた明るいたたずまいの集落である。
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