~峠を越えて登る不遇な山~
タイトル
よこがいやま(594m)
2006年1月29日(日)快晴

7:25秩父鉄道・野上駅-7:55林道-8:23出牛峠8:35-9:00いろは橋折返し場-9:25登山口9:30-9:47平沢峠9:55-10:10稜線10:20-10:25横隈山11:15-11:40平沢峠-11:55三角点-12:00更木林道-12:20更木-12:50出牛-13:55満願の湯16:15-[バス]-16:25秩父鉄道・皆野駅
歩行時間:5時間10分

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平沢峠の石標
平沢峠の石標 超拡大(622×936)

秩父山地で、荒川の外側にあたる部分を外秩父、また北秩父とも言われるが、山に独特の雰囲気がある。
昔ながらの峠道や古い導標、秩父事件に代表されるような土地にまつわる史実など見所も多い。低山ばかりなので冬の時期に訪れるのがいいのだが、この一帯は稜線や頂上付近に舗装車道が造られている場所が多く、せっかくのいい雰囲気を半減させている。行程の半分以上が車道歩きということも多い。

普通なら車道の多い山は敬遠するのだが、ここの山の魅力は捨てがたいものがあり、毎年この季節にどこかの頂を踏んでいる。今回は横隈山を登ることにした。

秩父鉄道野上駅から、西に見えるゆるやかな稜線を目指して進む。民家の軒先にはもうロウバイが花開き始めている。背後の山の間からようやく日も上がって来て、ほのかなぬくもりを感じる。
静寂、そして凛とした大気が支配する山村の朝。あたりは開け空が大きい。時が止まったようだ。

犬塚橋の手前で、右に上がる道に入る。「長瀞ゴルフ倶楽部」の大きな看板がある。ここはゴルフ場の入口でもあり、歩いている間にも何台かの車が追い越していく。
右にカーブする前に車道を離れ、林道に入っていく。このコースは登山の対象としてもかなりマイナーな部類のようで、ここまでの行程では指導標を1本も見なかった。この林道に入って初めて「出牛峠へ ロングウォークちちぶ路」」の標識を見る。

植林下の薄暗い林道から細い山道に変わる。古い峠道のイメージで歩きよい。小さな竹林を通り15分ほどで出牛(じうし)峠に登り上がる。
出牛峠から男岳・女岳
男岳・女岳
出牛人形浄瑠璃の倉庫
人形浄瑠璃の倉庫
横隈山
横隈山
ロウバイ
ロウバイ

車道の通っている出牛峠からは、武甲山のように削られてしまった男岳・女岳の白い山肌があらわだ。社会発展のためセメント採取は止むを得ないこととは思うが、見るほどに無残な姿である。
眼下に出牛地区の家並みが垣間見える。舗装道路の上ではあるが、雰囲気のいい峠との印象を持つ。

気持ちのいい山道を下っていくと西福寺の横に出て、すぐに出牛集落に下り立つ。車が通るが、町はしんとして誰も住んでいないように思えてしまう。
車道を隔てた正面には、埼玉県の有形文化財である「出牛人形浄瑠璃」の倉庫がある。中を見ることは出来ないが、案内板によれば歴史的にも価値のあるもののようだ。そこからほどなく、いろは橋折返し場バス停となる。
ここまでは皆野駅からバスが出ているのでアプローチを省略できるのだが、このコースはやはりバスを使わず、出牛峠越えをしてここに至るのが楽しいと感じる。
ここで初めて「横隈山」を案内する指導標を見る。さらに林道(舗装車道)を上がって平沢集落。ロウバイの咲く木を再び見て、やっと林道終点。ここが横隈山の登山口となる。駅から2時間余り、峠越えをしてようやく登山口にたどり着くという、今の時代ではちょっと珍しいアプローチであった。

登山口からは、右側の登り道、左の沢沿いに行く道の2本があるが、右の道をとる。指導標やテープがあるので、以前のガイドに掲載されていたようなわかりづらさはない。
緩やかに高度を上げ、平沢峠に着く。木の導標の陰にひっそりと立っている、石の小さな道しるべに興味がいく。「秩父郡~」などと書かれていて相当の年代物のようだ。ここは十字路ではあるが直進の下りはほとんど道形がない。

右折し横隈山を目指す。片側が雑木林となって気持ちがいい。少し行ったところが、雑木林の中の平坦な小広い台地になっていて、休憩によさそうな場所だ。
さらに登ると東西に伸びる支尾根に合流する。右(東)は沢戸に通じる道のようで、こちらのほうが今歩いてきた道よりもはっきりしている。
左折し高度を上げる。と、左上部にガードレールが見えてくる。頂上直下の舗装車道だ。車道を少し歩いて山道に戻るコースもあるが、車道に下りずに踏み跡を辿り、少しの急登ののち頂上手前の稜線に立った。蔵王大権現の石碑が置かれている。

ここは北側が切り立った崖になっていて素晴らしい眺めが得られる。浅間山、草津白根山、谷川岳、赤城、日光の山が白いラインを横たわらせている。まさに北関東の峰々の展望台である。眼下には神流川の流れとともに鬼石の町並みがだだっ広い。
上州の山の眺望があることも、北秩父の山の魅力のひとつであろう。
上越の山の展望
上越の山の展望
浅間山
浅間山
横隈山頂上
横隈山頂上

眺めは良いが南側が植林で日が射さず、寒くて長居が出来ない。東へほぼ平坦な稜線を3分ほど進むと、横隈山頂上となる。眺めはそれほど得られないが、明るく落ち着いた場所だ。こちらは日が十分に射して、暖かさを感じる。

ゆっくり休憩した後、今度は展望台から急坂を下り車道へ下りてみる。5分ほどで山道に戻り、平沢峠へ。今日初めて登山者を見た。例の石の標を見ている。やはり人の目を引くようだ。
峠からは直進し住居野(すまいの)峠、更木へ下る道を取る。鉄塔で切り開かれたところからは神流湖の青い湖面が見えた。

簡易舗装の林道を辿って更木の集落に下る。ここから皆野駅に通じるバスが出ているのだが、日曜日の今日は極端に便が少ない。やはり昼の時間に下ってきてしまっては、ここから歩くしかないだろう。(平日・土曜日のバス便は少し多い)
再び出牛峠越えというのもさすがに気が進まない。どうせ歩くのなら満願の湯に寄って行こうと思い、1時間半ほど車道を歩くことにした。

出牛のT字路で右に曲がり、秩父児玉線を延々と歩く。途中で東側の山から大勢のハイカーが下りてくるのに出会う。宝登山のロウバイ見物の帰りだろう。今年は寒さのため開花が遅れて、今は3,4分咲きだそうだ。
登山者が2人だけの山から下ってきた目には、宝登山の稜線の上のほうでまだ人影がうようよしているのを見ると、同じ山なのにという思いがわく。着いた満願の湯も大賑わいだった。

温泉からはバスで皆野駅に戻る。今日も1日快晴の冬の日だった。

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