~誰もいない平日の陽だまり尾根~
タイトル

しょうまるとうげからまるやま
2002.12.2.(月) 晴れ後曇り

6:40西武鉄道正丸駅-7:05伊豆ガ岳分岐-7:40正丸峠7:50-8:25旧正丸峠-9:25虚空蔵峠9:35-9:55牛立久保10:00-10:35カバ岳10:50-11:05大野峠-11:30丸山12:05-13:15芦ヶ久保駅
歩行時間:5時間15分

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伊豆ガ岳から正丸峠を経て北に伸びる稜線を「正丸尾根」と呼んでいる。奥武蔵の中にあって比較的地味な場所ではあるが、好ましい尾根歩きのひとつに上げられる。
一昨年に刈場坂峠を経て椚平(くぬぎたいら)に下りたが、今回は大野峠から丸山に登る道をとった。
伊豆ガ岳分岐にて
伊豆ガ岳分岐にて

この日は秩父地方に濃霧注意報が出ていた。西武鉄道・正丸駅を出ると、周囲の山や集落には濃密なガスがかかっていて幻想的だ。秩父は朝方によく霧が立ち込める地である。

線路をくぐり、民家の点在する中を緩く登って行く。吐く息が白い。路面は濡れている。
伊豆ガ岳に向かう道を分け、朝日をいっぱいに浴びる1軒の家の横を通ると、すぐ舗装道路は終わる。沢沿いに緩く登るが一部荒れた場所もある。
正丸ガーデンハウスへの道を分けるあたりから、どんどん山道らしくなる。やがて細い水の流れの上を登るようになるが、もしかしたら普段は水は涸れている道なのかもしれない。

背後に朝日を受けながら、息を弾ませ正丸峠直下の急階段を上がる。このくらいの高度になると、まだ朝霧が残っている。
しかし霧から空の青色が透けて見え、この霧が晴れれば気持ちいい青空の下を歩けると期待が膨らむ。
朝霧の正丸峠付近
朝霧の正丸峠付近

正丸峠(640m)に上がる。平日のせいか、人っこひとりいない。この付近は休日になると車やツーリング族でかなり賑わう。
インターネットで正丸峠を検索すると、バイク関係のページに多く行き当たる。ここの尾根を歩くのなら、断然平日がいいと思う。

日が差し、霧がみるみる晴れてくる。眼下はいまだ一面の乳白色だが、峠から上の眺めが効いてくる。階段を上がりあずまやの前に立つと、木の枝越しに武川岳と、右半分が切り取られた武甲山が大きく望める。北側には丸山山頂のアンテナも見える。

カンゼ山(川越山・766m)~旧正丸峠(670m)と、自然林の多い気持ちのいい尾根がしばらく続く。
木の葉も大方落ち、武甲山から丸山方面の眺めが継続して得られる。しかし道は決して平坦ではなく、アップダウンや急な階段(特に下り)が多い。
右や左に折れたり岩っぽいところを通過したり、単調さは感じさせない。いつしか頭上には青空がいっぱいに広がっている。

大きなピークをいくつか越えしばらく行くと、ベンチのある場所に出る。2年前に来たときは大きく展望が開けていたのだが、今は樹林が育ち眺めはない。丁寧に作られた展望案内図が、むなしい存在と化している。
尾根上の大木
尾根上の大木
牛立久保
牛立久保

さらに進むと尾根が広くなり、車道に下り立つ。虚空蔵(こくぞう)峠(710m)で、あずまやの脇に車が1台停まっている。
1点の雲も無かった青空だったが、いつのまにか、太陽の行く先に雲がまとわり付くようになっている。

車道を5分ほど歩き、再び山道へ。静かで時が止まったようだ。夢の中を歩いている気分になってくる。

背丈ほどの低木の林を登る。このへんは昔、スキー場があったそうだ。秩父にスキー場と言っても今はピンと来ない。以前はスキー場を作ろうとするほど、そこそこの積雪があったのだろう。

明るい雑木の中、正面遠くに1本の指導標が佇んでいる。牛立久保という所で、この尾根歩きのハイライトの場所でもある。
右に行けば刈場坂峠を経てブナ峠。そこから椚平に下りる道も(車道歩きが多いが)捨てがたい。今日は左折し大野峠方面へ。

気持ちいい雑木の林がいったん途切れ、北方向、笠山方面の眺めが開ける。下から車道が合わさってくる。道はちょっとした岩場となり、やがてカバ岳(896m)に着く。半分が植林の味気ない山頂だ。

展望のよい858mピーク
展望のよい858mピーク
丸山山頂から
丸山山頂から

道は植林の中、車道と平行するようになる。いったん車道に出た所が大野峠だ。笠山・堂平山からの道が合わさる。丸山方面へも通じているため、車道さえ無ければ秩父の山歩きの要所になっていただろう。
車道を越え、急坂を登る。登り着いたところが858mピークで、北側だけだが本日一番の展望が開ける。笠山、堂平山や剣ガ峰の眺めがよい。今日初めて人と会う。

丸山へはさらに、尾根伝いに緩く登って行く。快適な雑木林が続く。所々に電柱らしきものも見えるが、この際気にせず高みを目指す。
正丸峠から確認できたテレビアンテナ塔の下を通る。さっきはあんなに遠くに見えていたのに、ものの数時間で着けてしまう、人間の足とはなんとたくましいものであろうかといつも感心する。

間もなく展望台の建つ丸山山頂(960m)。いつもは賑わう展望台も、今日は1組の夫婦のみ。
武甲山、二子山から武川岳、遠く両神山、反対側には笠山とぐるりと1周の眺めを楽しむ(一角だけ樹林で見通しが効かない)。
青空の占める割合がどんどん少なくなり、武甲山の頂稜部は雲で隠され始めている。奥多摩や東京方向には分厚い雲が垂れ込めている。昼食を取り下山とする。

芦ヶ久保駅への最短距離を下る。直下の防火帯は雨の影響か、少し滑りやすい。
植林帯を経て集落の前に出る。あとは車道を淡々と下っていく。点在する果樹園や野菜畑もすっかり冬の装いだ。

ポツ、ポツと雨が降ってきた。太陽は出ており傘をさすほどでもないのだが、これで3回連続して山行中に雨に降られたことになる。秩父付近はそれほどではなかったものの、東京方面はけっこうな降雨があったようだ。

1時過ぎに芦ヶ久保駅に到着。まだ時間が早いので電車で隣の横瀬駅まで行き、武甲温泉に寄り道する。
平日の山は人は少ないが、麓に下りるとこの地域は採石のダンプカーが走り騒がしい。工場の煙突からは白い煙が勢いよく出ている。

また今日は、花火や太鼓の音がそこらじゅうで鳴り響いている。明日は秩父の夜祭りだ。同じようなことを一昨年の大霧山でも書いていた。
この時期の秩父は祭りや札所巡りだけでなく、山歩きにも一番いい時だと思う。


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