~比企の山を越え秩父路の湯宿へ~ |
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今年も冬がやって来た。当たり前の事ではあるが、1年を通して山歩きをしていると、季節の移り具合に敏感になる。 登山口にツツジが咲くのを見て春を実感し、日差しにゆらめく大気に夏のにおいを感じる。今年は特に、自分のほうから積極的に、四季の移ろいを感じようとした1年だった。 東武東上線に乗って山に行くのは初めてだ。やや寝不足で座席でうとうとする。扉が開くたびに入ってくる冷たい風に何度も目を覚まされる。
7:00に終点小川町へ。7:09に白石車庫行きのバスがあるものと思っていたら、6:55発に変更になっていた。 次のバス(1時間後)を待ってもよかったが、タクシーに乗った。車内は腰に根が生えるほど暖かかった。 橋場バス停のところで下車し、しばらくは舗装の車道を登って行く。ヒンヤリと締まった空気が気持ちいい。 途中で栗和田集落への近道が山腹につけられている。急坂もすぐになだらかになり、両側に畑を見るようになる。 20分も登ると再び車道に出る。展望がよくなり、左に大霧山を見る。牧草地の斜面が広がっている。 大霧山をバックに、栗和田集落の民家とみかん畑の風景がマッチしている。 車道が大きくカーブするところで再び山道に入る。植林帯の山腹をしばらく歩いた後、みたび車道へ。すぐに着いた粥新田(かいにた)峠は、左に大霧山、右に登谷(とや)山へ登山道の分岐点。しばらく休んで左へ向かう。 大霧山へのなだらかな道は、大半が自然林で気持ちがいい。 木々の間から秩父の市街地が見下ろせて、意外と高度をかせいだ感じがする。
コンコンコン...と高い所で木をたたく音がする。見上げると小さい鳥が木の幹をくちばしで叩いている。キツツキ科の鳥だろうか。あたりの静寂さにその音だけがやけに響く。 2つ目の木段の所で、もう山頂が見えて来てしまった。峠からものの30分。もう少しゆっくり歩けばよかった。 山頂の少し手前の斜面に、かすかに雪が積もっていた。昨日は奥多摩などの山も、高度1000mくらいでは雪が降ったようだが、こんな800mにも満たないところでも降ったようだ。
山頂からは展望がいい。東面が植林帯で見通せない以外は、三方の眺めが楽しめる。北面と西面の眺めは案内板で同定出来る。 ここからの展望の主役は、何と言っても両神山。他の峰が総じておわん形のこんもりしたものが多い中で、ぶっきらぼうなギザギザの山容は威圧的だ。 南には武甲山。逆光になってはいるが、採石で削り取られた山肌が真正面に見えている。 他に酉谷山、甲武信岳、城峰山、遠くは浅間山、日光の男体山、白根山もかすんで見える。足元に見える切り開きの牧草地は牧場らしい。暖かいころは牛の姿も見れるようだ。
下山路は、かなりの急坂。途中で鉄条網の向こうに牧草地が広がっている。おそらく栗和田集落から見えたところだろう。 桧平で左に折れ、しばらく行くと旧定峰(さだみね)峠。白石車庫に通ずる道を分けて定峰集落の方向に向かう。 しばらくは薮っぽいところがある。再び雑木林の気持ちいいエリアに入り、正面には両神山を見ながらゆるやかに下る。ほどなく下に車道が見えてきた。あっという間の山歩きだった。 車道を下り、定峰神社、定峰集落と歩く。初冬の陽だまりの中の山村風景。道路に面したところに、時計を打ち付けた柱を立てている家がある。道行く人に時間を教えてあげているのだろうか。 まだ11時前である。
近所の人に道を聞きながら不動の湯(温泉旅館)に向かう。旅館には、昨日武甲山に登ったと言う人が泊まっていた。武甲山も昨日雪が有ったようだ。今年の東京周辺の山は、意外と寒く雪も多いかもしれない。 遠くに打ち上げ花火のような音を聞く。今日・明日と秩父は夜祭りだ。秩父地方で1年を通して最大の祭りで、大いに賑わうと言う。 バスも来ないのでしばらく秩父の路を散策する。木戸原のバス停まで歩き、やっと来た西武秩父行きのバスに乗る。駅はお祭りの提灯と出店の準備であわただしかった。 |