東上線の小川町駅からバスに乗る。左前方に笠山の端正な姿が冬の大気の中、くっきりと捉えられる。
学校入口で下車する。2年前の同じ時期に、この先の皆谷(かいや)からの道を登った。今日はここ、和紙センター前から笠山林道沿いに上がる。「外秩父七峰縦走」コースの一部となっている。
萩平集落
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治山用の車が時々走り過ぎる中、冬枯れの舗装林道を進む。日陰には一昨日降った雪が溶けずに残っている。
少し高度を上げると、すぐに小川町の家並みが見下ろせるようになる。道は七峰縦走コースの案内標が絶え間なく立っていて迷いようがない。
山側に注意していると、リボンのかかった踏み跡が上がっているのを見つけられたので、そこから山道に入っていく。
最初のピークらしき場所は桧林の中。さらに踏み跡を辿っていくと林道に下りる。林道をそのまま進んでもよいのだが、物見山(411m)・リュウゴッパナ(493m)といった目印になるピークもあるようなので、踏み跡が山に続いていればなるべくそれを辿るようにする。
このあと何度かピークに立ったものの、山頂標識などはどこにも立っていなかった。そのうち、前方に笠山が大きく望める所にまで来てしまった。
古い導標
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再び林道に下り、そのまま萩平の集落に入って行く。明るいのどかな山村だ。皆谷から上がる道と合流する。
七峰縦走の案内標の他に、昔ながらの指導標が立っている。「道しるべ」と呼んだほうが似合う素朴な作りだ。
笠山の登山口に入る。何度か林道と交錯していくうちに自然林の尾根になる。急登がこたえるが背後には展望が開け、奥秩父や上州、上信の山々がパノラマで眺められる。
両神山と八ヶ岳、さらに御荷鉾山の先に白い頂の浅間山が、まるで富士山のようだ。期待していた谷川連峰は、ぼんやりした蜃気楼のように見える程度だ。風が無く暖かいのはありがたいが、やはり展望はいまいちとなる。
笠山西峰
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堂平山
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このあたりから笠山頂上までの尾根道は素晴らしく、展望こそ隣の大霧山や丸山からのものに一歩譲るものの、自然林に囲まれた気持ちよい場所である。頂上まで距離が短いのが惜しいところだ。
アシビが目立ち始め、笠山峠への分岐を見るとすぐに笠山頂上(西峰・810m)となる。北東側の小川町や寄居の町並みが広く見下ろせるが、先ほどの両神山が見れる場所のほうが眺めはよく、休憩に適している。
東峰(837m)には笠山神社があるが、今回はパスする。車道の交差する笠山峠、七重峠を越える。展望の得られる笹山(740m)が左手に見えるが、これも今回は登らずに堂平山への緩い長い登りに入る。
頭上が明るくなると、芝生が広がる堂平山頂上(875m)だ。上州の山並みや眼下の集落の眺めが素晴らしいが、ここはパラグライダーの発着地として利用されているので、のんびり休憩が出来る雰囲気ではない。さらに、頂上まで車道が伸びていて車が一杯(20台ほど停まっている)、三角点付近には国立天文台の大きな建物もあるので落ち着かない。
今日は久しぶりの長丁場、車道と山道を交互に上り下りしていく。先に見えるピークにはどれも鉄塔やアンテナ施設が立っている。この付近では最高峰の剣ガ峰(876m)も含め展望はいまひとつ。だが、車道が近いにもかかわらずのんびりと歩ける道だ。
定峰峠への明るい尾根道
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定峰集落
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白石峠から、再び急登の山道に入る。ここから「関東ふれあいの道」となるのだが、傾斜きつい木段に溶けた霜がついてわずらわしい。川木沢ノ頭(874m)を巻くあたりから歩きやすい尾根道となる。左方が伐採されて丸山や両神山などの眺めがよくなる。
暖かい日だまりの中に、座ってくれと言わんばかりに木の切り株があるので、腰を下ろす。定峰(さだみね)峠までは細かなアップダウンが多く、意外と時間がかかる。白石峠から1時間近くかかった。
売店の営業している定峰峠からさらに進み、旧定峰峠を目指す。歩きやすい尾根は続き、雑木林の割合が多くなる。春は桜並木が楽しめる所だ。
コナラやカエデなどのスラリとした樹容とは異なり、桜の木は真っ直ぐではないので、花をつけていない季節は見栄えがあまりよくないと感じる。正面に大霧山と直下の牧草地が見えてくる。
展望の尾根と別れ植林帯に入る。旧定峰峠には大男「ダイダラボッチ」の伝説の説明板がある。定峰峠に腰掛け、かぶっていた笠を笠山に掛け、伸ばした両足は槻川となり、粥仁田峠でかゆを煮て、釜は釜伏山にかぶせ、2本の箸を二本木峠に挿したそうである。会津の二岐山同様、こういった大男の逸話が日本各地の山地に残されているようだ。
3年前の大霧山からの下りと同様、定峰集落に下る。山間の静かな集落で、民家の庭先にある時計付き指導標をまた見ることが出来た。
冬の柔らかな日差しを一杯に受けた、静かな山歩きだった。バスで新木鉱泉に寄り道し、帰路に着く。
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