~史跡と峠、山上集落を巡る~
タイトル
たかやまふどうからこうぶりとうげゆがて
2005年11月19日(土)晴時々曇り

7:15西武鉄道・西吾野駅-7:30パノラマコース入口-8:10石地蔵-8:35高山不動8:50-9:20虚空蔵山-9:45八徳-10:40顔振峠11:00-11:10展望台11:20-12:05越上山12:10-12:30一本杉峠-13:00十二曲り13:05-13:25エビガ坂-13:40ユガテ13:55-14:10車道-14:45東吾野駅
歩行時間:6時間20分

マップ
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西吾野(にしあがの)駅で下りたのは初めてだ。まだ日の射さない、寒々とした中を川沿いに進む。
線路をくぐって高山不動登山道のパノラマコースに入る。林道のような道をジグザグに登っていくと、次第に奥武蔵の山々が背後にせり上がってくる。
しかし展望の道も、すぐに植林帯に入って終わりとなる。急な尾根を登りあじさい館への道を分ける。ほどなく石地蔵の分岐。ここで萩の平からの道が合流する。

高山不動
高山不動
樹齢1000年の大イチョウ
樹齢1000年の大イチョウ
西吾野駅からの登路は、萩の平茶屋を経由するシバハラ坂コースのほうが一般的で、このパノラマコースは比較的新しい登山道のようだ。高山不動や関八州見晴台を示す指導標が随所に立てられているが、いっしょに麓の店の名前も書かれている。店の人が宣伝も兼ねて立てた導標のように思える。

一面が杉の植林の緩やかな山道。風が強く、頭上で杉の木のギシギシいう音が不気味に響く。
右手が不意に開け富士山の頭の部分が見える。若干の上り下りのうち、高山不動の建物の前に着く。
眺めの良い高台に大きなイチョウの木が鎮座している。樹齢1000年だそうだ。紅葉はここでも遅れているのか、葉はほとんど緑色のままだ。
急な階段を登って高山不動の本堂に入る。誰も居ない。

関東の三大不動のひとつである高山不動尊は国の重要文化財に指定されている。荘厳で大きな造りの建物だ。他の2不動(成田不動、高幡不動)と比べると知名度では一歩譲るが、標高600mを越す場所にこのような大きな建造物があるとは驚きだ。信者の信仰の深さが伺える。
本堂だけでなく、堂内の不動明王像も重要文化財(見ることは出来ない)、先ほどの大イチョウも天然記念物に指定されており、大変価値の高い場所である。
おみくじを引いたら「願望叶うべし、病人本ぶく凝りなし、待ち人来る、失物出る」の大吉であった。くじ代をお賽銭箱に入れる。

さて今日は、奥武蔵ののどかな山村であるユガテまで行きたい。早々に出発する。
境内から、今度は緩やかな階段を下りて左下の車道に下りる。八徳(やっとく)の集落を経由する道を取りたいのだが、どうもこの舗装道路はちょっと違うようだ。三角点のある虚空蔵山にも登っておきたい。

顔振峠からの展望
顔振峠から奥多摩の山々を一望。中央右寄りに川苔山

車道左脇の墓地の奥に見える尾根をたどって、急な山道を行くと登山道に合流。さらに北側にピークがあるようなので、適当な踏み跡を見つけて登っていく。反対側の視界が開け、右手の高まりを登るとそこが虚空蔵山(大門山・618m)であった。林の中に祠と三角点標石があるだけの、狭い山頂だ。

登山道に戻る。八徳へは急な下りだ。標高200mくらいは高度を落とす。車道に出ると静かな八徳に出る。日がさんさんと射して落ち着いた山上集落だ。10分ほど歩くと右側の土手に導標があり、再び山道に入る。相変わらずの杉林。

高度を上げいったん車道に出る。その少し先が顔振峠(こうぶりとうげ・500m)で、薄暗い杉林から出てきた目には眩しいくらいに開けた地だ。富士見茶屋からの眺めは、武甲山から長沢背稜の山々、御前山・大岳山、丹沢の山が勢揃い、さらに富士山も輝く、何とも贅沢なものだ。源義経が顔を振り振り歩いたのもわかる。
また下のほうに見える風影集落の佇まいも奥武蔵ならではの眺めだ。
車が時々通り、茶店にはお客さんもいるが、言われているほどここは混雑する場所ではなさそうだ。それでも春の花咲く頃は行楽客で賑わっているかもしれない。
背後の展望台と名付けられているピークに登る。北側の展望が開け、眼下に関東平野、遠くに赤城山が見えるが、木が邪魔して思ったほど広い眺めではない。

展望台からは来た道を戻らず、やや南側の踏み跡を下る。ボーイスカウトの団体がいた。歩くスピードがほとんど同じなのでそのうち列に入ってしまう。ペースを上げて列から脱する。
越上山頂上
越上山頂上
ユガテ
ユガテ

車道を少し歩き諏訪神社に上がって、越上山(おがみやま)への登山道に入る。岩っぽい急斜面を這い上がると、再び奥多摩・丹沢方面の展望が広がる。今日の行程で一番山らしい場所だ。
少し先にある越上山頂上(566m)は、杉林の中で展望はない。

穏やかで指導標の多い登山道が続く。それにしてもどこまでも杉の植林帯。今日は紅葉の下を歩くどころか、落ち葉を蹴散らして歩くこともままならないようだ。
森閑とした杉林は歩いていて心休まるのだが、登山道としてはやはり変化と彩りがほしい。
またこの尾根には所々に竹林も点在する。頭上でカーン、カーンと風に揺れて竹の当たる音が静かな山中に響く。

一本杉峠、十二曲りと車道と山道を出たり入ったりする。高度を落としてエビガ坂へ。鎌北湖への道を分けて下っていくと、明るいユガテの集落に出る。
2軒だけの静かな山上集落であるが、周囲には野菜畑と草地が広がり、のどかな雰囲気がとてもよい。トイレもあるので観光コースにもなっていて、ハイカーだけでなく一般の行楽客もこの地を訪れる。
ユガテという名は「湯ヶ手」または「湯ヶ天」から来たものらしく、かつてはお湯の出る場所だったようだ。
それにしても2軒しかない集落というのも珍しいと思う。両家はどういう関係なのだろうか。特にすることのない冬の時期はどういう生活を送っているのだろう。ここの人の暮らしぶりに興味がわく。

何となく立ち去り難い場所であるが、15分ほど下って新田の集落に下りる。あとは東吾野駅まで車道を歩く。
駅前には特に観光名所も気の利いた店もない。東京から近い場所にまだこういう駅が残っているのを見ると、何となくほっとする。

歩いた場所は植林だらけで自然を楽しめる道ではないが、顔振峠からの展望や明るい山村など、奥武蔵の持つどこかエキゾチックで独特な雰囲気に浸れるコースである。


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