春の足音が聞こえるようになって天気がめまぐるしく変わる。今日は何とか天気は持ちそうだがえらく寒い。
この冬で一番の寒気が入ってきているようである。
寺沢から熊倉山
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早春の山野草、ザゼンソウとセツブンソウを見に秩父の荒川村へ足を運ぶ。秩父鉄道を武州日野駅で下車し、まず山翠荘近くにあるザゼンソウ自生地へ行ってみる。熊倉山へ行く道と同じである。
寺沢の集落から見上げる熊倉山は、北面であるせいかかなり雪化粧をしている。花見のついで山行としてこの山はちょっと荷が重い。
舗装車道をゆるく登って行き、山翠荘への分岐に入る。山荘の裏手は工事中でクレーンが動いている。
ザゼンソウの見学には協力金を払うはずだが、平日の朝だからか、係の人もいないのでそのまま奥に上がって行く。
右手の暗がりに、茶色いタケノコのようなものがいくつも、ニョキニョキと生えている。ザゼンソウとはぴったりの名前だと思う。百人一首の札でよく見る、背中を丸めたお坊さんに姿形がよく似ている。じっと見ているとリンゴを切って立てているようにも見えて来る。
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ザゼンソウ
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春を告げる野草としては地味だが、なかなか味わいがある。ある程度の大きさがあるので写真にも収めやすい。
見学者は自分のほかにもう一組二人だけ。お金を払うような知られた場所での花見は、やはり平日がゆっくり見れていい。
山荘前に戻るとおじさんが立っていて、しっかり300円を取られた。セツブンソウの咲く場所へ案内してくれた(とは言っても目と鼻の先だが)。
八重のセツブンソウ
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セツブンソウはとても小柄だった。何しろ一年に一回しか見ない花なので、花の大きさがどのくらいだったか記憶があやふやだ。ここのは1cm以下のかわいいものばかりだ。でもやはり咲き始めなのだろう、花びらのように見える白いがく片がまぶしく鮮やかだ。
八重咲きのセツブンソウも一輪あった。本当は何輪もあったそうなのだが、今年はまだ一輪しか咲いていないそうだ。
おじさんはここのセツブンソウも自生と言っていたが、それにしては密集して咲いているのでちょっと手が入っているのかもしれない。
いっしょにフクジュソウも植えられているが、朝からどんよりした曇りであったせいか、例によって花開かずクチャッとしおれている。
車道に戻り、更に登って行く。ザゼンソウを1時間以上見てしまったので、やはり熊倉山はあきらめて城山に登ることにした。
登ると言っても、ほとんどこの車道を上がって行くだけの行程である。車道はところどころ凍結している。
城山の雑木林
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武甲山
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熊倉山の登山口を2つ見送り(1つめは依然として通行禁止になっている)、城山コースの登山口に着く。ここから熊倉山にも登れるが、反対側の尾根に入って行く。ここでやっと舗装道から解放される。
すぐに整備された道になり、杉林の中に熊倉城跡と書かれた木柱と案内板を見る。山道に入って10分弱のところだ。
もう少し進むと雑木林が現れる。山頂表示もなくすぐ下り道となってしまうので、こんなはずはないと思ってそのへんを歩き回る。杉林にもう1度入り、進む先に赤テープが見えたのでそれに向かう。
しばらくすると、何だか見覚えのある道形となり、何時の間にか登り出しの場所に戻って来てしまった。危ない危ない。山で道に迷うパターンだ。
やはりさっきの木柱のあたりが山頂だったようである。城山は、熊倉山の前衛のように位置している648mの低い山で、城峯山の鐘掛城跡・奥多摩の鳩ノ巣城山と同様に昔は城郭となっていたようだ。見晴らしのよい場所だったのだろう。しかし今はうっそうとした杉林で眺望はない。
雑木林に戻り休憩ののち、下山にかかる。地図には特に記載はないが、城山からは尾根通しで北に山道が伸びていて、白久駅近くに下りることが出来る。自然探求路と名付けられているようだ。
丸太の階段が多いが、尾根上は終始コナラやアシビなどの雑木が続くいい道だ。適度なアップダウンがあり、なかなか歩き応えもある。眺めは広くはないものの随所で武甲山、両神山や上武の山々を望める。
秩父御岳山
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気づくと頭上は気持ちの良い青空になっていた。秩父御岳山をバックに見下ろす谷津川沿いの集落全体に柔らかな日が当たり、春近しの印象を受ける。
テレビアンテナの施設を過ぎ、植林帯を下る。墓地の横を通って広い畑地に出ると、白久地区ののどかなたたずまいが目の前に広がった。秩父鉄道の踏み切りを渡って今日の山はおしまいとなる。
この付近にもセツブンソウは咲く。東京に住む者にとって、この花は一年におよそ一度(か数度)しか出会えない。なのでつい大騒ぎしてしまうが、このあたりではセツブンソウなど当たり前に自生しているものなのかもしれない。
そしてこういう山里に咲くからこそ魅力的なのだと思う。
線路沿いの車道を10分ほど歩き白久駅へ。平日でハイキングの客などとも会わず、駅舎には地元のおばさんが1人いるのみ。まだ時間は早いが、今日は温泉はやめておこう。通勤ラッシュが始まる前に東京に戻る。
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