笹子トンネルまでは今にも降り出しそうな空模様だったが、トンネルを抜けると朝日まぶしく、青空も広がってきた。梅雨の時期によくあることだ。進む方向に八ヶ岳の姿も。
須玉ICから一般道へ。山に向かっていくと再び、周囲は雲と霧が目立ってきた。
マツムシソウ
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黒森鉱泉への案内板を見やって林道を上がっていく。この鉱泉宿は日帰り入浴ができるが、前もって電話をしておかないと入れないこともあるそうなので、今回はまたいずれの機会にとする。
そんなことより、今日これから登る横尾山、天候が気になる。少しでも青空の覗くところを歩きたいので、笹子トンネル西側の山にわざわざやってきたのだ。
長野県との県境となる信州峠に上がってくると、残念ながら一面の霧模様になってしまった。
7,8台停まれそうな駐車場は自分の車だけ。時々、峠越えのツーリングの人々が通っていく。
峠といっても、横尾山の登山口以外は、取り立てて何もない。樹林帯に入っていく。すぐに笹のかぶる急登となり、ズボンの裾がびしょ濡れになる。少し前まで、かなりの雨が降っていたようである。
| 道脇に登山口がある |
| 岩の多い尾根道 |
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スパッツを付けるタイミングをさぐるが、すぐに笹が消えすっきりした道となる。しかしまた濡れた笹が多くなってくる。その繰り返しで、なかなかスパッツを付けることが出来ず、どんどん歩いてしまう。
カラマツ林の後は、しばらくはブナなどの自然林の中を登る。さらに笹の丈が高くなって、腰近くまで濡れる。
信州峠まで車で上がってしまえば楽な山、との先入観があったが、これはなかなかきつい山登りになった。
1時間かけてようやく樹林帯を抜ける。草地の眺めよい尾根歩きになるはずだったが、周囲はガスで真っ白だった。
それでも高山植物が多く、しかも種類が豊富だ。こういう天候のときは花の観察・撮影にいそしむことになる。
カヤトの原を過ぎて草原状になるあたりはますます花が増える。淡紫系はマツムシソウ、ハクサンフウロ、黄色系はアキノキリンソウ、オミナエシ、白系にハコネギク、ヤマハハコ、ミヤマシシウド、濃紫・赤系はタムラソウ、トモエシオガマ、ワレモコウと咲き競う。花に雨露がつき瑞々しい。
尾根道は意外とアップダウンがあり、所々で平板状の大きな岩がいくつも現われ、歩きにくい。横尾山の先に「豆腐岩」というものがあるらしいが、何となく形の想像がつく。
樹林帯の登りもまだあり、頂上が遠く感じる。
ハクサンフウロ
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タムラソウ
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タチフウロ
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ワレモコウ
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オミナエシ
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ミヤマシシウド
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トリカブト
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ヒメトラノオ
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マツムシソウ
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ハナイカリ
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| 山梨百名山 |
| もう紅葉の走り |
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ようやく三角点のある横尾山頂上に着く。ガスはこのあたりに来ると霧雨となって落ちてきた。
誰も来ない静かな地。とりたてて展望がいいわけでもない。
なおこの先、飯盛山まで尾根続きとなっている。飯盛山は5年前に長野県側から登ったきりであり、いつかは縦走をしてみたい。展望がよく、笹が多いようなので秋口か初冬がよさそうだ。
来た道を戻る。下山は雨具の下を着ることにする。低潅木の葉には、よく見ると紅葉しかかったものもあり、ここのところの涼しい気候は山の上ではかなりの冷え込みになっていることが想像された。
行きにはきづかなかったが、青色系の花にヒメトラノオとトリカブト、白系にハナイカリが加わる。天気がよければ爽快で楽しみの多い尾根道である。今日はこのままおとなしく下る。
樹林帯を黙々と下っていくうち、周囲が明るくなってきた。ガスが薄くなり日が差し始めている。鳥のさえずりを聞く。今日は登りの最中、鳥の声を全く聞かなかった気がする。耳にしたのは草むらの虫の音だけだった。
信州峠に下りると、青空と日差しが戻っていた。車で増富の湯まで下りる頃には爽やかな夏空が広がる。
天候の回復がもう半日早ければ、うってつけの登山日和だったかもしれない。でもこういう静かな晩夏の山もいいものだ。
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