-岩稜を越えアカヤシオの頂へ-
タイトル
三峰口駅-熊倉山-シラカケ岩-武州日野駅
山域 奥秩父
地域 埼玉県
標高 熊倉山(1426m)、シラカケ岩(1430m)
山行日 2010年5月9日(日) 天気
沿面距離 13.5km
歩行時間 7時間25分
標高差 1140m(三峰口駅-シラカケ岩)
宿泊
温泉
交通 西武鉄道、秩父鉄道 Home



2010年5月9日(日)

池袋駅 5:39
西武鉄道
飯能駅乗換え
7:24 西武秩父駅
御花畑駅 7:52
秩父鉄道
8:12 三峰口駅 8:15
8:20 神明社
9:10
9:25 聖岩基部 9:30
10:00 802m 10:05
10:50 岩場巻き道
11:10 1165m
12:00 1307m 12:05
12:15 谷津川コース分岐
12:27 三門の広場
12:35 熊倉山
13:00 シラカケ岩 13:35
14:10 熊倉山 14:15
14:35 笹平 14:40
14:50 水場
15:10 官舎跡
15:17 三ツ又
15:35 林道
15:45 車道
15:53 日野コース登山口
16:30 矢通反隧道
16:40 武州日野駅 16:51
秩父鉄道
17:04 御花畑駅
西武秩父駅 17:30
西武鉄道
飯能駅乗換え
19:24 池袋駅


関連リンク
秩父鉄道
西武鉄道


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秩父の熊倉山は、駅から登れる割には山懐が深く、自然環境も豊かで充実した山登りが出来る。しかし自分はかなりご無沙汰していて、今回実に9年ぶりの登山となった。前回は奥多摩の酉谷山への縦走で、熊倉山はどちらかと言えば通過点だったかもしれない。今回はじっくりこの山のよさを味わえたと思う。
一般コースではなく、岩稜の多い聖尾根を登ることにした。バリエーションルートとして有名で、「奥武蔵山歩き一周トレール」にも掲載されている。アカヤシオも咲き残りが見られるかもしれない。


1307m峰付近のアカヤシオ

朝から気持ちのよい快晴。車窓に展開する山々も新緑の衣を纏い、歩くのが一番楽しい季節となった。藤の花が至るところで、その緑の山肌を薄紫に染めている。

秩父鉄道の三峰口駅で下車し、白久方面に少し戻る。指導標にしたがって神明社という神社の横を通る。
民家の間を歩いていくと、ほどなく土の道に変わる。

駅周辺も緑眩しい
身も染まる新緑
秩父市街地を見下ろす
小さな導標
フモトスミレ
通行止めの表示
熊倉山頂上

道の入口に「私有地」という表示があって、ちょっとためらったが、入らせてもらう。東京周辺の山は、誰かの所有地であることが多い。

沢沿いの道を進み、何回か沢をまたぐ。大きな岩が目につくにつれ、道筋がだんだんあやしくなる。右岸から左岸に渡るビニールテープがあるが、そのまま踏み跡の濃いほうを進む。しかしその先の小さな滝の前で巨岩が通せんぼし、進めなくなってしまった。そのうち後ろからもう一人やって来る。
適当な場所で左岸に渡ってみると踏み跡があり、来た人に先に行ってもらう。
この先、左の尾根に上がり、祠を確認するはずなのだが、尾根に取り付く踏み跡が見つけられない。目の前の斜面を半ば這い上がるようにして、尾根上に乗る。振り返ると、数十m手前のところに祠があった。
ちょっと尾根に上がるタイミングが遅れたが、ガイド文の情報と符合して一安心。

植林帯を歩き、左手に尾根状の高まりが見えてきたころ、T字路状の鞍部に到着。右手は聖岩と言われる725m峰、左は熊倉山に続く尾根である。立ち木に「三峰口へ」という赤色の導標が打ちつけられているのを見る。
聖岩基部に立ち寄ると、大岩の陰に壊れた祠があった。聖岩はロープで登れるとのことだが、険しそうなので遠慮し、鞍部に戻る。
左手への尾根取り付きは急登で、大汗をかくが距離はそう長くない。尾根がやせ、ツツジやコナラの自然林が目立ってくると、新緑の瑞々しさを肌で感じられるようになる。ヤマツツジも点々と咲く。木の間から秩父の町が見下ろせた。

802m峰に上がると、さっきと同じような赤色の導標を見る。ここからは進行方向にも尾根が伸びていて引き込まれやすいが、ここは右に折れる。
コンパスを忘れたことに気づく。こんなバリエーションルートを歩いていてやばいと思ったが、とりあえず尾根筋に乗れて、この先迷いやすいところはないと踏み、先に進む。もっと初めのうちに気づいていれば、今日は諦めて一般コースで登り直していたかもしれない。

明瞭な尾根を進むと、フモトスミレが道の真ん中に咲いていた。周囲にはあちこちにカタクリの葉も見られるが花は終わっていた。
その先で、切り立った岩場に出くわす。ここは右手につけられた巻き道を進み、少し先で尾根に戻る踏み跡を上がる。
再び片側が植林の単調な登りを行くと、県造林のプレートが立つ地形図上の1165m地点である。ここでいったん、急な登りが一段落する。いよいよ露岩が目立つようになり、岩の上に立つと眺めが開ける場所も出てくる。
アカヤシオの花が地面にたくさん落ちている。これはもう花期は終わってしまったかと思ったが、咲き残っているものも見られるようになった。咲き残りといえば、イワウチワも早春の忘れ形見のように、一輪だけポツンと花をつけていた。もう少し時期が早いと、ここは意外と花の尾根になっているのかもしれない。

進む方向に、おそらく1307m峰と思われる三角形が見えてきた。山肌にピンクの衣をまとっている。標高が高いところではアカヤシオはまだ見られそうである。それに反比例するように、木々の緑の色は軽くなる。
その1307m、岩角を手がかり、足がかりに登ろうとしたが途中で足場がなくなり、すぐ目の上の満開のアカヤシオを前に、いったん撤退。
周りをよく見ると左手にロープが張られたトラバース道がある。そこを慎重に通過して1307mに上がる。少し北側の岩棚に出ると先ほどのアカヤシオと対面。そしてここからの眺めはなかなかよく、アカヤシオ越しに秩父の町や新緑が駆け上がりつつある山肌を目の当たりにする。
下界に、12時の放送(チャイム?)が鳴り響く。ここまでたっぷり、4時間かかってしまった。

少し先に行くと、よりはっきりした道に出る。赤い指導標があり左は熊倉山、右は大血川とあるが、そういう下山路もあるのか。聖尾根以上にマイナーなコースのようだ。
熊倉山方向に行くと、左手に植林帯があり、「営林署小屋跡を経て白久駅に至る」との指導標。一般コースである谷津川林道と合流した。そして今歩いてきた道にはロープが張られ「通行止」の表示が掲げられていた。

シラカケ岩からは絶景
アカヤシオ
カエデ新緑
バイケイソウ
坂道のトンネル
武甲山を望む

風の通る清々しい道を、緩く登高する。樹木は所々で芽吹いている。
三門の広場を経てひと登り、久々の熊倉山頂上に立った。眺望は乏しいが、苦労して登ってきただけあって感慨深い頂上である。しかし今日はもうひと仕事。酉谷山方面を少し歩き、展望のシラカケ岩まで足を延ばすことにする。

9年前に縦走したときの記憶が薄れているが、意外とアップダウンがある。シラビソの森が静寂を演出し、アカヤシオが稜線を彩る。今日は頂上付近の稜線でアカヤシオが一番の見頃だった。
歩く人が増えたとは言え、縦走路は一般登山コースではないので踏み跡は薄い。途中で両神山を望める小ピークに出た後、さらに下って登る。明るい場所に出たところがシラカケ岩だった。

樹林が途切れた岩場からの眺めは素晴らしい。正面に奥多摩の長沢背稜。酉谷山から長沢山、最奥は芋木ノドッケだろうか。右手には甲武信岳など奥秩父の山々。高度感があり、胸のすく眺めとはこういうものだろう。アカヤシオも咲いている。
縦走路のもうひとつ先のピークにもピンク色が点々と認められる。汗がにじんだシャツを岩棚で干し、今日初めての大休止を取る。
もうかなりいい時間になってしまった。熊倉山へ戻る。来た道を戻るだけだが、時々枝尾根が合流してくるので、帰路はわかりにくい。コンパスがないのでちょっと慎重になる。
さっき10名ほどがいた熊倉山も、一人の登山者を残すのみとなっていた。

日野コースを下山路とする。城山コースと同じ道を下り、指導標のところで城山コースと分かれ、右手に下っていく。
この日野コースは上部が植林帯のジグザグ下りなのだが、いろいろと変化があり楽しい。
20分ほど下るとバイケイソウに敷き詰められた平坦地に着く。笹平で、周囲は新緑が眩しい。ハシリドコロやニリンソウなど、水際の花が多く咲く。

三ツ又からは沢筋の歩きとなる。ここの登山道は、「水場」とか、「官舎跡」とか、登山地図やガイドに載っている場所の名前がそのまま指導標に書かれており、わかりやすい。木橋を何回も渡り返しながらゆっくりと高度を下げていく。左手に見える林道に上がる踏み跡がついていたので、素直にそこで登山道から脱した。

以前こちら側から登ったときは、寺沢地区から続く舗装道路から、直接登山道に取り付いたのだったが、今回下り立った林道は未舗装で、ちょっと様子が違う。
そういえば一ノ橋という地点を見ずに林道に上がってしまったので、もしかしたらさっきの登山道はもっと続いていたのかもしれない。

やがて舗装道路に出る。しばらく行くと別の登山道入口があって、そこには日野コース入口という標柱が立っていた。やはり登山道は続いていたようである。
さらに下ると、見覚えのある登山道入口があったが通行禁止になっていた。少し前、このコースは崩落で通行止めになったことがあり、その結果、日野コースの登山口は少し上に変更されたようだ。

寺沢地区に下り、振り返ると、熊倉山の高い山稜が傾き始めた日に照らされていた。矢通反隧道をくぐって武州日野駅に出る。よく歩いた1日だった。

ご注意  聖尾根は一般ルートではなく、急登・岩稜の道が続く難路ですのでご注意下さい