~草原、花、スリルと大展望~
タイトル
乾徳山(けんとくさん) 2000.9.3 晴れ
中央本線塩山駅~(バス)~乾徳山登山口~錦晶水~国師ガ原~扇平~乾徳山
~下山道分岐~国師ガ原~道満山~乾徳山登山口~(バス)~塩山駅

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登山口から徳和の集落を20分ほど歩くと、乾徳山入口の標識に至る。ここからが登山道になる。
始めのうちはスギの植林を登って行く。

今日は日曜日、まれにみる好天で、人も多い。10人以上の団体もいくつか見かける。林床に夏の終わりを告げるフシグロセンノウ、ミヤマアキノキリンソウ、ツユクサ、キツリフネなどを見かける。
マツムシソウ マツムシソウ

銀晶水の水場は、水の出は少し悪い。このあたりから錦晶水(きんしょうすい)までは、山腹をジグザグに登る急坂が続く。
あたりが明るくなると錦晶水の水場だ。水がジャンジャン出ている。冷たくておいしい。バシャバシャと顔を洗う。

ここからはしばらく、なだらかな道となる。あたりはどんどん開け、間もなく国師ガ原の草原地だ。左前方に乾徳山のピラミダルな姿がかっこいい。
左に高原ヒュッテ(無人小屋)への道、右に道満尾根への分岐の十字路となっている。
広さはそれほどないが、平坦な草原地をしばらく歩いていく。ノアザミやミヤマアキノキリンソウ、ヤマハハコ、タチフウロなど色とりどりだ。そしてマツムシソウ。薄紫の、けっこう派手な形状の花だ。


扇平への登り 扇平への登り

そのうち、小石の多い急坂となる。短い樹林帯を抜け、後ろを振り向くと、黒々とした富士山がバーンとあった。その下には甲府盆地が日に輝いてキラキラしている。扇平の小鞍部までは、そうした気持ちの良い登りとなる。

乾徳山は国師ガ岳からの稜線上に位置している関係で奥秩父の山とされているが、このへんまでは大菩薩の山というイメージが強い。さほど高度感がないにもかかわらず展望が雄大で、山容がたおやかなのがそう感じさせるのだろう。

しかし乾徳山の核心部は、これからだ。高度を上げるにつれてやせ尾根状になり、道の傾斜は増して行く。ツガなどの針葉樹林のすぐ外側に、ダイナミックな岩盤が山の斜面を形作っている。登山道はこの樹林帯と、岩場のちょうど間につけられているようだ。
タチフウロ タチフウロ

時々展望のよい岩場に出て、手を使いながら登る。岩場を登らず、樹林帯の側を行けば巻き道が使えそうだが、巻き道がずっと続いているのかは定かでない。

途中、男の人が1人座っていた。「この先、鎖場が続きますよ。私は恐いので登るの止めました」ということだった。


天狗岩の鎖場 天狗岩の鎖場

しばらく急な登りを行くと、巨大な岩盤に出くわす。ほぼ垂直で剣岳の「カニのタテバイ」のミニチュア版といったところか。中央に鎖が下がっている。鎖は上部、下部の2本に分けられている。
最初の鎖場は足場があり、楽に登れる。2本目は足がかりにとぼしく、鎖を使わずに岩の端っこの方にそろそろと行き、手を使って登る。
かなりの高度感があり、八ヶ岳の鎖場とはまた違った迫力がある。

そこからしばらく行くと、ついに山頂直下、天狗岩の鎖場となる。このへんで食事をしているグループもいくつかある。ここで諦めてしまったのだろうか。

天狗岩は、高さ10mは裕にありそうな、ほぼ垂直の1枚岩。鎖はあるが、最初の3~4mは足がかりがほとんどない。鎖にしがみついてリズムをつけて登る。腕力が幾分必要だ。

天狗岩を越えるとついに山頂。360度の広大な展望が待っていた。これは素晴らしい!

山頂、南面の眺め 山頂、南面の眺め
山頂、北面の眺め 山頂、北面の眺め

今日はもやどころか雲海もない。雲は出ているがみな、山の後ろだ。
南アルプス甲斐駒、千丈、北岳、鳳凰3山、富士山に続き御坂山、丹沢山塊と大山、御前山。大きな山容の飛竜山から始まる奥秩父縦走路はほとんど全部見える。和名倉山、唐松尾山、雁坂峠、破風山、木賊山、甲武信岳、真正面に黒金山(とガイドにはあったが、本当は笠盛山ではないか?)を挟んで国師岳とさらに西に伸びる稜線。
五丈岩の突き出た金峰山だけ、山肌が白いのが印象的だ。

東正面には、大菩薩嶺・大菩薩峠から小金沢連嶺。奥秩父の主脈縦走路を歩いた身にとっては、素晴らしすぎる眺めだった。

15人ほどでひしめきあっていた山頂を、冷たい風がヒュウッとなでていく。Tシャツでの登山は、今年はこれが最後かなと思った。


なごり惜しいが下りることにする。下山は天狗岩に戻らず、岩尾根を真っ直ぐ進み、西に折れて国師ガ原に続く巻き道を行く。浮き石の手ごわい急な下り(登りには不向き)を過ぎると次第に平坦になるので、国師ガ原が近いとわかる。少し標高を下げただけで急に蒸し暑くなる。

高原ヒュッテは、以前は営業小屋だったそうだが、今は無人。しかしサッシの扉はちゃんと開閉でき、シュラフでの寝泊りは出来そうだ。薪ストーブもある。

さっき通った国師ガ原を過ぎて道満尾根へ。道満尾根は単調で、ただ下るだけの道だ。大平(おおだいら)牧場へ続く林道を何度か横切ったあと、展望の無い道満山へ。そこから転げるような急坂を下っていくと、徳和の集落が見えるのは意外と早い。

バス停に戻ったのは午後3時。予定より1時間早かった。売店でもりそばと缶ビール2本で暇をつぶしつつ、4時17分のバスを待った。麓はまだ暑いが、風が気持ちよかった。

塩山駅から新宿までは、2階建ての臨時電車「ホリデー快速ビューやまなし号」に乗った。所要時間はあずさ、かいじ号とあまり変わらない。特急料金が浮いた。


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