-展望と紅葉の南岸尾根-
タイトル
立木観音-阿世潟峠-社山-黒檜岳-千手ヶ浜
山域奥日光
地域栃木県
標高社山(1827m)、黒檜岳(1976m)
山行日2010年10月16日(土) 天気
沿面距離14.0km
歩行時間6時間20分
標高差540m(立木観音~黒檜岳)
宿泊-
温泉-
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2010年10月16日(土) 前夜発

富ヶ谷ランプ20:30
首都高速
東北自動車道
日光宇都宮道路

清滝IC5:20
国道120号
5:45立木観音駐車場6:05
6:35狸窪
7:00阿世潟7:03
7:17阿世潟峠7:20
8:20社山8:40
9:45ヤセ尾根ピーク10:00
10:40大平山分岐
11:00黒檜岳11:10
12:37千手堂跡
12:57千手ヶ浜13:00
ハイブリッドバス
13:30赤沼(車庫)13:35
東武バス
14:00立木観音入口
(徒歩)
14:20立木観音駐車場14:30
国道120号
15:55清滝IC
日光宇都宮道路
東北自動車道
首都高速

18:30目黒IC


関連リンク
日光観光協会
東武バス
日光自然博物館(ハイブリッドバス)


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奥日光・中禅寺湖の南岸尾根を初めて歩く。
この社山から黒媚岳への尾根道は、もう何年も前から歩こうと思っていたが、なかなか行く機会を得なかった。ここは紅葉期から晩秋の時期がいいのに、奥日光の秋は混むし、天気も安定しないことが多かったからだ。
車で前夜出発として、朝早いうちに歩いてしまい、夕刻の日光道路の混雑を避ける計画にした。


阿世潟峠上の稜線から、男体山を望む

前夜、東北自動車道の大谷PAまで行く。途中、運転が恐くなるような大雨に逢った。

雨はほぼ一晩中降り続いていた。明日は晴れの予報だが、山地は天気の回復が遅れないか気がかりだ。

朝5時に出発。若干の雨がまだフロントガラスを叩いている。まだ薄暗い中、清滝ICからいろは坂に入っていく。早朝から車の数は多い。


端正な社山
色づく山肌
稜線は紅葉
笹とダケカンバ
社山頂上
伸びやかな草地

中禅寺湖で左に折れ、少し先の立木観音駐車場まで行く。中禅寺温泉の広い駐車場は有料なので、少し奥からスタートすることにしていた。ここから社山・黒檜岳を登り千手ヶ浜に下山する行程は、ちょうど中禅寺湖を半周することになる。そこから先はバスを乗り継いで、立木観音まで戻ってくる。

湖畔の駐車場からは男体山が大きい。中禅寺湖を挟んで社山の形のよい姿も。どうやら天気はよさそうだ。支度をして出発する。同じ方向に行く登山者が数名いた。

始めは湖のすぐ脇の舗装道路を行く。道は細くなり、イタリア大使館の別荘の横を過ぎて、半月荘という民宿を見た先でダートの道となる。半月峠に上がる細道があったが、まだ先を行く。

紅葉にはまだ早い樹林帯の道が一箇所だけ大きく開け、中禅寺湖のほとりから男体山が望めた。そのすぐ先が阿世潟である。
枯れ沢沿いの緩やかな登りで、それほど苦労もないまま案内板の立つ阿世潟峠に着く。若いハイカーのグループが先着していた。さらに初老の夫婦が後から登ってくる。
左に行けば半月山である。この山も高く堂々としたいでたちをしている。反対側の、これから登る社山も然りだ。
低い笹の、展望のいい尾根道を登る。南側の山肌はツツジだろうか、赤系の紅葉が見事だ。中禅寺南岸尾根は、イメージ的には男体山や奥白根山など奥日光側の山の展望台ととらえがちだが、実は南側の足尾の山々の眺めもすばらしい。

高度を上げるほどにパノラマ展望が広がり、気分の最高によい尾根歩きとなった。小さなコブを越えていくような山道も小気味よいもので、つらさは全くない。今年は初夏以降、雨降りだったり、晴れても灼熱の尾根だったりが続き、こういう条件のいい歩きは久しぶりの気がする。
奥多摩あたりでは近年、すっかり枯れてしまった笹もここではほどよい高さで茂っている。

葉を落とし始めたダケカンバの森を抜け、丸いピークをもうひと越えする。中禅寺湖や男体山が間近に迫る。太郎山や高山も。下部の紅葉はいまひとつだが、稜線付近はそろそろピークの感じである。

道は平坦になり、シャクナゲの茂る薄暗い樹林帯に入る。それを抜けたところが社山頂上だった。このあたりでも眺めはそこそこあるが、樹林帯をさらにもう1回抜けたところに、休憩に最適な展望の地があった。
柔らかい日の差す草地からは、まず正面にうねうねした笹の尾根道が目に飛び込んでくる。そしてその尾根が行き着くところが、のっぺりした山体の黒檜岳だ。
黒檜岳の左手に皇海山、袈裟丸連峰、黒茶けたしわを幾重も刻んだ足尾の山も光っている。風もそよと吹く程度で気持ちがいい。今日は年に何度もない山日和の日であろう。

足尾の山も
黒檜岳へ
ダケカンバの森
ツツジ紅葉
黒檜岳は樹林の中
紅葉鮮やか
千手ヶ浜から

社山西面の樹林帯に下っていく。ここから黒檜岳までは、登山道として整備されてはいるが、歩く人は少なくちょっとしたバリエーションルート扱いになっている。道も今までとは違って踏み跡程度になる。

シャクナゲの斜面を抜けると、再び開けた尾根道となる。ツツジの紅葉が、やや茶色がかってはいるが笹の緑といいコントラストを描いている。
左手に水の流れのような音を聞くが、沢には出会わない。左右に見えているまろやかなピークを順に辿っていく。時たま、シンプルに「黒檜岳」「社山」とだけ書かれた指導標にも出会う。

笹の中にある踏み跡は、ピークの上部になるにつれ消えてしまうので、見当をつけて笹の中を泳ぐように進む。
笹の高さは膝下くらいだが、たまに腰あたりまで伸びている場所もある。
今ではすっかり道が出来てしまった大菩薩の小金沢連嶺も、10年前はこういう笹の海の場所があった。また、奥多摩の蕎麦粒山付近も、自分が登山を始めた20世紀末頃は、これに近い雰囲気だったことを思い出した。
この中禅寺南岸尾根の稜線も、ずっと笹の海ということはなく、基本的に道はついている。木につけられたテープが、場所によっては頼りになる。

いったん高度を下げたが、再びゆっくりした登り返しとなる。もうずいぶん高度を取り戻したかな、と思い振り返ると社山が高くてびっくりした。隣の山が高く見えてしまう心理的錯覚(?)が、北アルプス栂海新道以降、身についてしまったらしい。

踏み跡は右に左に、屈曲しながら正面の黒檜岳の高まりに少しずつ近づいていく。ピークの並び方や曲がり具合、ダケカンバを中心とした樹木の配置など、「姿となり」が実に絵になる尾根である。
男体山や奥白根山がよく見えるヤセ尾根のピークで一休みする。周囲は紅葉が美しい。

登山者は社山で引き返す人が多く、道中出会ったのは、黒檜岳側から来た2人だけだった。うち一人は足尾から登ってきたという。この先の大平山の北東に伸びる尾根を登ってきたと、地図で教えてくれた。道はなかったそうだ。
ここを歩く人は猛者が多そうだ。この後、社山南尾根を下ると言って元気よく歩いていった。

笹の丈が少し高くなり、胸あたりという所もあった。広い笹原に出て、さらに緩く高度を上げると、指導標があった。ここがおそらくさっきの人が登ってきた、大平山への分岐だろう(指導標に大平山を示す文言はない)。
ここからはツガの暗い樹林帯となる。うっかりすると方向を間違えそうになる。テープの他、黒と黄色に塗り分けられた四角のプレートを目印に進む。黒檜岳頂上も同じような樹林帯の中だった。
山名を示す標識も見出せない地味な存在なのだが、山自体は根張りが大きく、どっしり感がある。中禅寺湖南岸の一角を占めるに足る主峰の風格がある。

千手ヶ浜への下山路に入る。この道も方向がわかりにくく、プレートやテープをしっかり拾いながら進む。しばらくして急な下りが始まり、針葉樹を抜け出すと紅葉が見られるようになった。
下山地までは思いのほか長く、尾根を右に外れて小沢を渡りながら山腹をトラバースするあたりは、道の状態がちょっと悪い。やがてジグザグな急坂を下り、波の音が聞こえ出したら、ほどなく下山地の千手堂跡に着いた。

ここからは朝と同様、湖畔の遊歩道を歩く。中禅寺湖越しの男体山はここからも大きく、高い。
キャンプ場を過ぎて、千手ヶ浜に着く。左の舗装道を200mほど行った所に千手ヶ浜バス停があった。13時発の赤沼行きバスにちょうど間に合った。観光客も多く、満員状態で赤沼車庫バス停、そこから東武バスに乗り換える。

立木観音入口バス停から、立木観音駐車場まで歩いて戻った。男体山は時々雲がまとわりつくものの、今日はその大きな姿にずっと付き合わせてもらった1日となった。

日光中禅寺湖畔の車道は渋滞していたが、いろは坂の下りはある程度流れていた。早い時間に歩いて正解だった。しかし宇都宮からの東北道は渋滞に次ぐ渋滞。結局日のあるうちの帰宅はならなかった。