山の写真集 > 北関東(群馬) > 奥利根水源の森
  • -関東随一のブナの森-
  • 森林浴のみち-武尊湿原-ブナの森のみち
  • 上州
  • 群馬県
  • -
  • 2019年6月23日(日)
  • 11km
  • 4時間20分
  • 321m(キャンプ場-1700m地点)
  • -
  • -
  • マイカー
天気1

 

2019年6月23日(日)
練馬IC 5:15
  関越自動車道
水上IC 6:45
  国道291号
県道63号水上片品線
7:50   水源の森キャンプ場 8:00
8:05   森林浴のみち
8:28   管理車道
8:33   ヒメカイウ駐車場
9:00   武尊田代湿原
10:00   1700m地点
10:40   武尊田代湿原 10:45
11:12   ヒメカイウ駐車場
11:30   ブナの森のみち
  ブナの森のみち~ほほえみのみち周回
12:05   森林浴のみち
  ささやきのみち経由
12:25 水源の森キャンプ場
  県道63号水上片品線
国道291号
13:54 水上IC
  関越自動車道
15:50 練馬IC

 

奥利根水源の森は山というよりも自然公園やキャンプ場として知られている。登山としてはここから武尊田代湿原を経由して武尊山に登るコースがある。
標高が1400~1600mと高いため、残雪が遅くまで残っている。関東地方でも緯度的にはずっと北で、谷川連峰や苗場山と同じくらいのところに位置する。日本海型の特色を強く持つ森林帯である。

昨年の6月8日にブナ探索として歩き、ブナ林の層の厚さに感銘を受け、もっと季節の早い芽吹きごろに再訪してみたいと思っていた。そして今年の5月下旬、冬季閉鎖していた道路の開通直後に行ってみたところ、残雪が多くて登れなかった。
それから1か月。今年は昨年より季節の進みが遅いため、今行ってもおそらく昨年と同じ感じだろう。でもやはりあのブナ林を見たくて再訪することにした。


武尊田代湿原付近 [拡大]

水源の森キャンプ場を出発

キャンプ場

水量の多い沢を渡って登山道へ

水量多い

登山道は歩きやすい

歩きやすい

ブナの大木あり

大木あり

笹(ネマガリダケ)の下にたくさんのブナの幼樹が控えている

笹の下に

森林浴のみち

森林浴のみち

シナノキの大木

シナノキ

直径10cm以下、背丈1~2メートルほどのブナ細木が密集しており、将来ブナ林を形成する稚樹バンクといえるかもしれない

稚樹バンク

ブナの雌花が少ないながらも見られた

少ないながらも


群馬県みなかみ町にあると言っても東の外れで、山奥深い。アプローチも谷川岳より1時間余計にかかる。東京を早朝4時発でも、奥利根水源の森キャンプ場(駐車場)に着いたのは8時近くなった。今日は午後から天気が崩れる予報なので、早めに歩きたい。
昨年は上部の管理歩道沿いにあるヒメカイウ駐車場から登ったが、今日はこのキャンプ場から歩き始める。
「熊出没に注意」の看板を見て、沢を渡る。鳴り物を持ってくるのを忘れてしまったので、金目の物をザックにつけて何とか音を出す。「森林浴のみち」の指導標に従い、小山への登りに入る。
はっきりしたいい道だ。1か月前は一面が雪で、どこを登っていいのかわからなかった。こんなにも変わってしまうのだから雪は恐ろしい。

コースは最初から濃密なブナ林である。林冠を占めているのは樹齢200年くらいの木が中心だが、直径10~20cmくらいの壮年木、ヒョロヒョロと伸び始めた直径10㎝くらいの若木、膝下以下の幼樹、そして今年発芽した双葉まで、視界にあるものはみなブナである。あらゆる空間や地面を埋め尽くしていた。
ネマガリダケの繁茂する道脇でさえも、その林床はブナの幼木で敷き詰められていた。ネマガリダケが枯れたら一斉に伸びる準備をしているようだ。

尾根に上がり道が平坦になっても、そんなブナの森が続いていた。昨年歩いたヒメカイウ駐車場から上部、武尊田代湿原への道のブナ林も、これほどではなかったように思う。森林浴のみちはまさに「ブナの空間」であった。

平坦な道を歩いて、管理車道に出る。車道沿いもブナ林である。少し下りヒメカイウ駐車場、ここからは昨年と同様に登りとなる。ここも「こもれびのみち」と名付けられてはいるが、遊歩道というよりも普通の登山道に近い。
昨日の雨のせいか道はぬかるみ、葉をつけたまま折れた木の枝が散乱している。相変わらずブナが優占する中、シナノキの大木があった。葉は心形(ハート型)だ。
背丈60~70cmの笹の上からブナの幼木がここでも頭を出している。昨年も見たがその時はこれを稚樹バンクだと思った。すなわち、今はこのくらいの大きさを保っているが、林冠の木が倒れて日が届くようになったときに成長し始め、数十年後に樹林を形成するというもの。
水源の森のブナ林は全世代型の、成長し続ける森である。これだけ生命感を感じさせてくれる森も、関東甲信越にはそれほど多くないと思う。

小広いところに出ると武尊田代湿原となる。早い時期には水芭蕉が見られるというが、このあたりには葉さえも見当たらない。湿原の周囲は緑のみで、昨年は隣りの花咲湿原でコバイケイソウやリュウキンカが見られたが、それはまだ早いようだ。花を目当てにしての湿原歩きは適期がまだ先かもしれない。
奥に続く登山道に入っていく。ほとんど斜度のない道が継続する。緑は濃くなっており、昨年6月8日に歩いた時と景観はそう変わらない。
山がどんどん深くなっていくにつれ、熊と遭遇する心配も大きくなってくる。これだけブナ林を歩いていて、今まで(山中では)熊にまだ一度も会っていない。幸運と言ってしまえばそれまでだが、今日がその日かもしれない、と毎回覚悟しながら歩くようになってきた。

水源の森のブナの葉は大きく、長辺13cmのスマホが隠れてしまう

スマホ隠れる

濃密なブナ林が続く

ブナ林

標高1700mを境に、植生はブナからオオシラビソに変わる

標高1700m

ブナの森のみちは幅広の遊歩道

ブナの森のみち

クロベの大木があった

クロベ

カエデのは時期がたつとL字型の羽根のついた種子になって、風で飛んでいく

花から種子へ

車いすの通行が可能なバリアフリーの「ほほえみのみち」。このときは倒木が道を塞いでいた

車いす通行可能


ブナ林にはハウチワカエデ、ナナカマド、オオカメノキなども現れる。オオカメノキの白花はすでに地面に落ち、ウワミズザクラの花も終わり近い。
ブナは葉のサイズが大きい。日本海型のブナはオオハブナと呼ばれるように葉が大きいが、ここのは突出している。自分の持っているスマートフォン(iPhone6、13.5㎝×7cm)が葉にほとんど隠れてしまう。
枝を低いところから伸ばす若いブナが多いからか、目線の位置で葉を観察できるのもこのブナ林の特徴である。倒木が登山道の上に覆いかぶさっており、枝葉には雌花をつけていた。昨年に比べ数は少ないが、全くないことはない。

ブナとダケカンバの大木が仲良く並ぶ場所から先、ダケカンバが目立ち始め、ブナは目に見えて減ってくる。標高1700m近くなると初めてオオシラビソを見る。
そこから先はオオシラビソの黒木の森となり、ブナは1本も見られなくなった。おそらく上空から見下ろすと、森の色がここから変わっているだろう。何かにつけて、多雪地域の森は植生の分布がはっきりしている。
武尊避難小屋のある稜線まで行こうか考えたが、空模様の推移を考慮し、ここで引き返すことにした。

ヒメカイウ駐車場まで戻ると車が一台。おじさんから「上まで登ってきたの?勇気あるね、熊いなかった?」と言われた。今日のような悪天の日の谷間、山中では一人も会わなかったし、花もない緑濃い山に登る人は他にいないだろう。しかし歩いている間、獣の気配は感じられなかった。

キャンプ場に戻る前に、他の遊歩道にも寄っていく。管理歩道を少し歩かされたが、「ブナの森のみち」を一周、さらにバリアフリー化された「ほほえみのみち」を歩いてみる。
ほほえみのみちは車いすでも通行できるということで、地面に緩衝材が埋められているのだろうか、ほぼ起伏のない遊歩道になっていた。わずか300mの距離だがれっきとした深い森の中の道である。しかし出口付近に大きな倒木があって、この現状では車いすは無理である。おそらくじきに除去されるのだろう。

森林浴のみちに戻り、さらに「ささやきのみち」でキャンプ場へ戻ることにした。しかしこの道はかなり藪化しており、おまけに沢を渡るとき、雨で増水していて足首まで水に浸かった。
キャンプ場側の出口に「このコースは未整備により通行しないでください」との注意書きが。ささやきのみちはどうやら歩いてはいけなかったようだ。
沢沿いを歩き、キャンプ場に戻る。車の数は増えていなかった。今日は、雨に降られずに歩き終えることができよかった。梅雨最盛期にこれだけ歩ければ十分だろう。

奥利根水源の森のブナ林は、関東地方ではおそらく一番の規模と高い自然度を持っている。自分の印象では玉原湿原以上で、新潟や会津のブナで有名な山にも遜色はないと思う。
遊歩道にロープ柵はなく、木道を歩かされる場所も少ない。歩く人が多くないからその必要もないのだろう。倒木もそのままで植生はかなり自然のままに任せている感じがする。
車道がつけられているものの、必要以上に手が加えられていないのがいい。
ブナの幹、葉、花に間近に触れることのできるところは新潟のブナ林でもそう多くはなく、この水源の森はそういう意味でブナファンにとっては格好のフィールドであると言える。紅葉も素晴らしいというのでまた来たいと思う。

帰路の運転も長いが、高速の渋滞もそれほどでなく、無事に帰宅する。