~黄葉のブナ林に包まれた静かな縦走路~
タイトル
あまがはげやま(1466m)・かしょうざん(1322m)
2002.10.19.(土) 曇り時々晴れ

5:02池袋駅-[埼京線、高崎線、上越線]-8:10上越線水上駅8:17-[バス]-8:35長沢橋バス停8:45-9:10玉原発電所-9:20山道に入る-10:20玉原越え-10:35尼ヶ禿山登山口-11:15尼ヶ禿山11:45-12:55白樺湿原-13:25迦葉山13:40-13:55和尚台-14:10弥勒寺-14:45迦葉山バス停15:05-[バス]-15:45上越線沼田駅16:11-[上越線、高崎線、埼京線]-19:05新宿駅
歩行時間:5時間10分
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群馬県の尼ヶ禿山は、鹿俣山(かのまたやま)とともに玉原(たんばら)高原の観光地開発によって切り開かれた山で、それまでは道もなかったとされている。 関東地方でも有数のブナ林の宝庫である。天気予報は曇りから雨模様だが、ブナの黄葉を期待して出かけた。

水上駅までは谷川岳に登ったときと同じアプローチ。湯ノ小屋行きの関越交通バスに乗る。紅葉の名所で知られる「照葉峡」もこのバスで行けるとのこと。
しかしこのバスは運賃が高い。長沢橋バス停まで、20分たらず走っただけで710円も取られた。
帰りは同じ会社のバスを40分以上乗るので、いったいいくらかかるのか不安になった。

玉原越えの取り付き
玉原越えの取り付き点

長沢橋バス停から、右に車道が分岐していて、車両通行止めのゲートがかかっている(導標なし)。ゲートのわきを通り、舗装道路を上がって行く。
50mほとのトンネルを通り、ジグザグに登高していくと、背後に藤原ダムの湖面と上信の山々が望めるようになる。しかしやはり、雲が多く今日はすきっとした展望は得られそうにない。

玉原発電所の横を過ぎ、さらに登ると、車道が大きくカーブするところに「玉原方面へ」の指導標が初めて現れる。方向は山腹を平坦に行く道を示している。
他に、車道と平行して尾根伝いに上がって行く道も分岐していて、むしろ踏み跡がはっきりしている。しかしこちらのほうはおそらく送電鉄塔の巡視路だろう。指導標通りに山道に入る

杉の植林の中、踏み跡はか細い部分もあるが、滝を過ぎ何度か沢を渡っていくと道ははっきりしてくる。だんだんと木々の葉の彩りがにぎやかになってくる。

ぶどう坂と言われる道を登って行く。周囲には山ぶどうが多いとのことだが、どれがぶどうの木なのかよくわからない。沢沿いの静かな登路だ。
彩り豊かな道
彩り豊かな道

玉原湿原周辺は、南側のセンターハウスまで車で上がってくるのが今は一般的で、自分のように裏側から歩いて登るのは今では少数派だ。この道は「玉原越え」ともいい、古くは峠道としてよく使われていたようである。
沢筋を離れ、道は尾根に乗る。急登と平坦な道を繰り返し、高度を上げて行く。右側に見える尾根には鉄塔が建っている。上部がきれいに紅葉していて、これから登って行く期待が膨らむ。

道はいつしか斜度を失い、自然林の中ののびやかなプロムナードとなる。ホオノキ?やクリ、カエデの紅葉・黄葉が目に新鮮だ。

あたりが開け、電信柱の立っている林道に上がる。「玉原越え」の標識がある。左方向から人の声が聞こえてくる。ブナ平、玉原湿原や鹿俣山への道だ。
自分は直進し、尼ヶ禿山の方に進む。もっと立派な車道に出くわす。が車は走っていない。おそらく車両規制されているのだろう。
尼ヶ禿山へは右折し、10分弱の車道歩きで、ようやく登山口となる。
紅葉のブナの森
紅葉のブナの森

沢で水を補給し、緩く登って行く。いよいよブナの林に入る。周囲は黄色やオレンジ色に紅葉していて気持ちがいい。落葉広葉樹だけでなく、常緑木も多い。これはネズコという種類だろう。ブナと背の高さを競って茂っているようだ。
急な登り下りもなく、平穏で静かなブナの森だ。人もけっこう入っているが、豊かな樹木が声や物音を吸い取ってしまうような、そんな静けさに包まれた森である。笹がかぶっている所もあるけれども大した距離ではない。

迦葉山への分岐を分け、山頂へのちょっとした急登となる。やせ尾根に乗り展望が開ける。紅葉でカラフルな自然林の山肌が、眼下いっぱいに広がり、すぐに尼ヶ禿山頂上に着く。

頂上は狭く、ボーイスカウトのグループや家族連れなど、満員になっている。笹を隔てて南面は切れ落ちている。
山頂標識付近で立って見れば、展望は広大だ。あいにく雲がかかってはっきり見えるのは武尊山やダム湖である玉原湖、迦葉山への彩り豊かな稜線くらいである。正面に遠望されるのは赤城山だろうか。
尼ヶ禿山頂上から
尼ヶ禿山頂上から
尼ヶ禿山頂上
尼ヶ禿山頂上

袈裟丸山を確認しようとしたが、どれだかわからない。20万分の1程度の地図があれば同定出来るのだが、持ち合わせていない。
紅葉の縦走路
紅葉の縦走路

スペースを見つけて腰を下ろす。しかし笹にさえぎられて見えるのは空だけだ。ここまで静かな森を楽しんできただけに、頂上が満員で落ち着けなかったのが残念だ。

頂上を後にし、迦葉山への縦走路に入る。頂上にいた人たちは皆、センターハウスに下りるのだろうか、縦走路も人は少ない。
緩く下って行く道は、やはりブナやカエデの紅葉が素晴らしい。東北の山でよく見られるように、根元の曲がったブナも時々ある。意外と雪が多い地域なのだろう。

笹かぶりのところもなく、全身の力がすっと抜けて行ってくれるような、落ち着いた道である。
そして、パリパリと落ち葉を踏み鳴らす音。1年ぶりに聞く、心地よい秋の音である。赤・黄・茶色とカラフルに敷き詰められた登山道を、ずっと1人占めしている。

紅葉の縦走路
紅葉の縦走路
カエデのカーテン
カエデのカーテン

白樺湿原という、湿地帯に入る。カエデの黄色があたりをパッと明るくしている。葉を落としモノクロームの世界に入る間際に、森は最後の力を振り絞って、光を注いでいる。

前方に迦葉山を見上げる。けっこう高い。1歩1歩登って行くが、今日初めてのつらさを感じる。
尾根に上がり左に折れ、さらに急登。空は暗さを増し、今にも雨が降って来そうだ。つい急ぎ足になってしまう。
そんな幽玄な雰囲気の中、迦葉山頂上に登り着く。

頂上は南面に切り開かれているものの、ガスがかかりまったく見えない。堂々としたブナの太い幹に、山名表示のプレートがかかっている。
和尚台
和尚台の鎖場

下りは、油断ならない岩混じりの急勾配だ。膝への圧迫をこらえながら慎重に下って行くと、背の高い大岩が何本も立っている。和尚台というところだ。
指導標は右方向への巻き道を差しているので、そのまま進む。大岩の基部に下りるて見上げると、鎖が岩と岩の間にかかっている。ここをくぐってくるのが「胎内くぐり」で、けっこうスリルがありそうだ。
しかし基部まで来てしまったため、今さら登り返す気になれず、その場を後にする。

和尚台から下は木々の葉は、だんだんと緑色に戻る。弥勒寺までは思ったより早く下って来れた。
弥勒寺は日本一巨大な天狗の面(5m)が安置されているらしいが、山を下りてきたあとで知ったので覗いて来なかった。
こんな天気の中、人出も多く観光バスが停まっていた。

参道を下り、大門をくぐる。すさまじい形相をした仁王像が立っている。
最後は車道を一直線に歩く。T字路を右折し橋を渡ると、迦葉山バス停がある。弥勒寺から45分ほどだった。
バス停から望む迦葉山は実に堂々としていて、古くから信仰の山とされてきたことがうなずける。

バスに乗り込んだところで、初めて雨が落ちてきた。心配していたバス賃は、沼田駅まで800円だった。
上越線、高崎線と帰りの乗り物の中では終始眠りこけていた。東京に戻ったら雨は本降りになっていた。


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