茨城の山はこれが初めてだ。古くは「西の富士、東の筑波」と万葉集にも詠まれた東関東の名山である。3776mの山と肩を並べて呼ばれる山というのもそう多くはない。
筑波山は標高こそ900mに満たないが、広い関東平野にすっくと立ち上がるその端正な姿は、奥多摩や丹沢などかなり遠いところからも見ることが出来る。遠くからでもよく眺められるという点で富士山と共通するところがある。登山する人たちだけしか知らないような山ではない、万人の目と心に留まる山と言えるだろう。
山頂近くまでロープウェイ、ケーブルカーが通っているが、筑波山神社からの歴史ある道を登った。
関東平野が一望できる女体山頂上
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土浦北ICを出て、まずは筑波山神社下の駐車場を目指す。普通に国道を走りたかったのだが、カーナビが山岳道路コースを指定していたため、つつじヶ丘の近くまで車で上がってしまった。
手の届く位置に見えている山頂を見ながら坂を下り、神社横を過ぎて市営第一駐車場に着く。筑波山神社付近には市営駐車場が4つあるが、この第一のみ無料だ。ただし神社までは10分くらい歩くことになる。
筑波山神社の桜は5,6分咲きになっている。今日は平日ではあるが、さすが筑波山、行楽客や登山者が多い。
子ども連れのグループが目立つのは、今が学校の春休みだからだろうか。とにかく2人の子どもと抜きつ抜かれつで杉林の登山道を登っていく。
桜咲く筑波山神社
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カタクリ
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広々とした御幸ヶ原
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キクザキイチゲ
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ケーブルカー宮脇駅の横を過ぎる。運行は9時からなので今はまだ静かな道だ。なかなか急な登りが続く。説明板によるとこの道は御幸ヶ原コースというらしい。
随所に植物の説明書きが立っている。ツクバトリカブト、ツクバショウマなど「ツクバ~」との冠名の植物がいくつかあって、それらはこの筑波山にちなんだものらしい。しかしツクバネやツクバネウツギなど「ツクバネ」という語が頭につくものは筑波山に関係ないそうだ。何かややこしい。
高度を上げていくとツバキ、カシなどの常緑の広葉樹が多く見られる。
急登は続き、やがて男女(みなの)川源頭に着く。細いが水の流れがある。次第に頭上が明るくなってくるとようやく御幸ヶ原の一角に出る。売店やケーブル山頂駅が見えてくる。
草むらにかくれるようにしてカタクリ、キクザキイチゲがきれいに咲いていた。
売店の建ち並ぶ御幸ヶ原は観光地そのものではあるが、展望よく広々とした気持ちのよい場所だ。
実は登り出しでカメラの電池を切らしてしまっていたのだが、ここの売店に売っていた。まさか山の上でリチウムイオン電池が買えるとは思ってなかった。
左手にそびえる男体山頂上(871m)を目指す。関東平野の見下ろせる展望台があるが、頂上付近は社や電波施設が建っていて休憩するには落ち着けない。
少し下って自然研究路を一周してみる。日当たりのいいところにカタクリが咲いている。まだ咲き始めなので花がきれいだ。葉が多く出ているので、もう1週間すればかなりの群落になりそうだ。
さらに進むと尾根の突き出た部分があっていい展望台になっている。笹と自然林の気持ちいい道となり、真壁からくる登山道と出会う。この付近の雰囲気はよく、この真壁からのコースは長そうだが一度歩いてみたいと思う。
大仏岩
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御幸ヶ原に戻って来る。ケーブルが動き出したので登山者、いや観光客もずいぶん増えた。売店の横を通ってカタクリの遊歩道に入る。まだほとんど咲いていない。ここが花で埋め尽くされる時期は大賑わいになることだろう。
公園のような整備の行き届いた道を進む。電波塔が立ち並ぶが巨岩も多く、ガマ石・大仏石といったように、それぞれその形を現す名前がついている。
人が急に増え、社を回り込むように石段を登ると、そこが女体山(877m)だった。大岩が積み重なるその場所はまさに関東平野の大展望台である。
また、男体山の見事なまでの端正な三角形も印象的で、筑波山全体の造りが手に取るようにわかる。筑波山は外から見ていい形と思う山だが、山頂から自らを見下ろした時も同じように形のよさを実感出来る。
ここはつつじヶ丘からロープウェイで上がっても、少しの歩きで来ることが出来るので大変混み合っている。岩場の頂上に立つのに順番待ちができるほどだ。
男体山が形よい
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麓から望む筑波山
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女体山を辞し、下山にかかる。平日の山とは思えないほど家族連れや子ども連れ、高校生くらいの若いグループがどんどん登って来る。補助ロープも現れる岩場の急坂で、山に慣れていない人は特に下りに取ると大変な道だ。
弁慶七戻石まで下り、つつじヶ丘コースと分かれる。筑波山神社に向けて下るこの道は白雲橋コースと呼ばれている。キクザキイチゲがここにも紫色のきれいな花をつけている。
少し先に人だかりがある。行ってみるとハクビシンがうずくまっていた。何か毒物を食べてしまったのか、動くことが出来ないでいる。わずかに、登山者の見ているその場から離れたがるそぶりを見せるのみ。もう長くはないようだ。しかしどうすることも出来ない。後ろ髪を引かれるような、つらい思いでその場を後にする。
桧、杉、カシなどの重厚な樹林帯に入り、やがてつつじヶ丘からの迎場(むかえば)コースを合わせる。住宅地を経て、筑波山神社の前に戻ってくる。
期待にたがわぬいい山だった。コースも四方から伸びているようだし、季節を代えてまた来てみたい。
記念にみやげ物屋でガマガエルのマスコットを買っていく。国道で車を下り、端正な筑波山の姿を写真に収めて帰路に着く。
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