2019年8月11日(日) | |||
◇ | 練馬IC | 4:20 | |
関越自動車道 | |||
◇ | 湯沢IC | 6:30 | |
県道540,541号他 | |||
6:50 | 茂倉登山口 | 7:03 | |
8:17 | 東俣沢出合 | 8:30 | |
10:40 | 蓬峠 | 14:10 | |
15:00 | 七ツ小屋山 | 15:15 | |
16:05 | 蓬峠(テント泊) | ◇ | |
2019年8月12日(月) | |||
6:40 | 蓬峠 | ◇ | |
7:55 | 中ノ休場 | ◇ | |
8:20 | 東俣沢出合 | 8:30 | |
9:45 | 茂倉登山口 | ◇ | |
県道541,540号他 岩の湯立寄り |
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◇ | 湯沢IC | 11:00 | |
関越自動車道 | |||
◇ | 練馬IC | 12:50 |
山の日を交えた連休だが、事情で何日もの遠出はしない。上越国境の蓬峠へ、テントを担いでいくことにした。
2週連続のテント泊で、今回は幕営を中心にしてあまり歩き回ることもせず、のんびり過ごす。標高が低いので気温が高く、快適さはあまり求められない。
蓬峠のあの別世界のような空間を目にできればそれでいいのである。
七ツ小屋山 [拡大] |
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関越を走っていくと榛名、赤城連山には薄いもやのようなものがかかり、近づかないと山の形が見えなかった。武尊も同じようなものだったが、谷川岳は山頂部の2つの耳がよく見えていた。
湯沢ICで戻るように県道を走り、関越・土樽パーキングのすぐ横の空地へ入る。ここは茂倉岳登山口となっており、いつものように車を停める。
いつも思うが、土樽パーキングにETC用出口でもついていてくれれば、湯沢まで大回りすることなくすぐに登山口なので便利なのだが。本当に目と鼻の先なのである。まあ利用者は登山者くらいに限られそうなので、実現は無理だろう。
東俣沢出合に向け、杉林の林道を歩く。樹林の切れたところからは青空の下、遠くの稜線が覗くが、日差し強く汗が噴出す。少し標高を上げるとブナやサワグルミなどの明るい樹林帯となり、しのぎやすくなった。草深い道ながらも小さな水の流れをまたいだり、岩の間から水が染み出したところを通過したりで、このギラギラした暑い日にはありがたい展開である。
薄緑色の実をつけた中低木が多い。何の木なのだか気になるが、先を急ぐ。
東俣沢は幅数メートルで、飛び石伝いに簡単に渡れた。
沢を離れ、急登となる。ブナが目立って増えてくる。大木もある。
谷川岳もブナ100名山のひとつに挙げているが、西黒尾根・巌剛新道の谷川岳本峰だけでなく、この蓬新道や武能沢付近、清水峠の十五里尾根、居坪坂など馬蹄形稜線の各所に豊かなブナの森がある。ひとつひとつは小さいが個性があり、どこも人が少なく、季節を通して静けさが保たれている。
木が少なくなり、緑濃い馬蹄形や主脈稜線が覗く。上部に雲がかかっている。
まだ9時台だが、気温が高いせいもあろうか雲の涌き立つ時間が早い。谷川連峰からは少し外れた、足拍子岳や柄沢山など新潟側の上空にはひとつの雲もない。
足元には夏の花が現れてくる。タテヤマウツボグサ、シモツケソウ、オオバギボウシ。無数の赤い実はアカモノだろう。8月も中旬になると白いかわいい花に代わってこの実が斜面に敷き詰められる。
チシマザサの広大な斜面を登りきり、水場を経て蓬ヒュッテの建つ蓬峠に着く。
むっとするようなむせ返る空気、南側から生暖かい風が吹き上がってきていた。まさかの居心地の悪さに、一瞬テント設営をためらう。ヒュッテ横のベンチに座って、雲に隠れた谷川岳方向をしばらく眺める。しかし帰るのも何なので、やはりここで1日過ごすことにした。
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南の湯檜曽川方面から絶え間なく熱風が吹き上がってくる。日本海側からの季節風が吹くことが多いこの峠も、今日は南からの風が優勢のようだ。
湯檜曽川流域から馬蹄形の稜線にかけて、一帯はすり鉢の底のようになっており、強い日差しで暖められた空気が上昇気流となって蓬峠まで上がってくるのに、ちょうどいい地形になっているのだろう。
蓬峠は今まで、いつ来ても穏やかで開放的な空間を提供してくれていたが、今回はどうも勝手が違う。これはおそらく、西日本に上陸しようとしている台風10号の影響もあるのだろう。
蓬ヒュッテにテントの申し込みをする。いつもの仙人風の小屋番さんは「ここは基本的に幕営は認められていません。トイレ使用料として500円いただきます」。
風貌に似つかわしくない建前社会的な言葉。ここでそんなことを言われたのは初めてだ。北アルプスではいいけど蓬峠では聞きたくなかった。
テントは自分の1張りだけ。日帰りの登山者が谷川岳方面に登っていった後は峠には誰もやって来ず、テントの中でしばらく寝て過ごす。
やがて少し青空が目立ってきた。武能岳の往復は明日にとっておくことにして、今日は七ツ小屋山まで散歩がてら往復する。
チシマザサの稜線には夏の花がいっぱいだ。ヨツバヒヨドリ、ハクサンフウロ、アキノキリンソウ、キオン、エゾリンドウ、ミヤマコゴメグサ、オタカラコウ、ヤマハハコ、アザミなど。アジサイ系の白花はノリウツギだろう。
七ツ小屋山は蓬峠との標高差は100m程度しかないのだが、目標にして歩いているとかなり高い山のように見える。手前の湿原状の鞍部にはイワショウブも少しだけ咲いていた。暑苦しい夏でも、高山植物はいつもの顔ぶれだった。
蓬峠に戻ると、テントが4張りに増えていた。考えることは同じで、他の山でテン場が混雑するのを避けてここに来た人が多い。蓬峠にテントを張る人は、山の嗜好も考え方もどこか似ている気がする。
夜半はガスが濃くなり星空どころではなくなった。そんな中で、テント同士で話が弾んだことが楽しかった。
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翌朝、昨日にも増して強風、視界ゼロ。ガスが霧雨状になってテントを濡らしている。
テントの人の中には縦走を続けて早発ちした人もいたが、小屋泊まりの人も含め多くは下山したようだ。自分も武能岳やその他の山に登る気は失せ、昨日登ってきた道を下ることにした。
夏のチシマザサの稜線で咲く花は一通り見ることができた。今日はこんな天気で早く下ってしまったので、樹林帯に入ってからも花や木への観察の目を持ち続けることにしよう。
その場でわかったものもあるが、多くは家に帰って図鑑で確認したものである。
沢沿いの道ということもあって、サワグルミの巨木が目につく。葉の一部がクルクルっと巻かれているのがあった。春先のブナ林で見たオトシブミという虫の仕業の様である。
薄緑色の丸い実をつけた木はアブラチャンだろうか。春を告げる花としてばかり注目してしまう木も、夏にはこんな実をつける。
左右片方だけ深く切れ込んだ大きな葉が目に留まる。と思ったら同じ枝に切れ込みのない卵型の葉もついていて、七変化のような木はヤマグワだろう。蚕の餌となる桑の種類は、このヤマグワだそうだ。
細長い茎に薄ピンク色の小さい扁平形の花をつけているのはヌスビトハギだろうか。ハギはいろいろな種類があってよくわからない。
リョウブはフタリシズカのような棒状の白い花をたくさん伸ばしている。上部の稜線にもたくさん咲いていた。イタドリはどこでも目にしているような花だが、地味なので見過ごしがちだ。
アカソは初めて見た(というより初めて気づいた)が、ギザギザした葉が特徴的だ。
松かさ状の小さな実をつけているのは、ヤシャブシの仲間と思われる。葉の形、側脈の数からヒメヤシャブシと見た。
極めつけは岩に張り付いていた地衣類が筒状に背を伸ばしている。ジョウゴゴケの一種とのことだ。
夏山の標高の低い部分を歩くとき、普段なら心は下山に向かっていて見過ごしてしまうようなものばかりだが、注意しているといろいろな種類の花や木が目に留まる。
林道に下り立つと日差しが戻っていたが、武能岳~茂倉岳の稜線はいぜんとして厚い黒い雲に覆われている。谷川連峰の性悪の天気に、ひさしぶりにやられた。
まあこんな日もある。めげずにまた太陽の下のテント泊をしたい。