-豪雪の地でのアイゼン・ピッケル講習-
タイトル
ロープウェイ駅-天神平スキー場付近
山域谷川連峰
地域群馬県
標高天神平(1350m)
山行日2010年12月23日(木・祝) 天気
沿面距離-
歩行時間-
標高差-
宿泊-
温泉湯檜曽温泉 なかや旅館
交通上越新幹線、関越交通バス、上越線、高崎線Home



2010年12月23日(木・祝)

東京駅8:04
 上越新幹線
MAXたにがわ403号
9:23上毛高原駅9:30
 関越交通バス
10:15谷川岳ロープウェイ駅10:30
 ロープウェイ
10:45天神平駅
11:00雪上講習15:00
 天神平駅16:05
 関越交通バス
湯檜曽温泉立寄り
17:23水上駅17:29
 上越線
18:31高崎駅18:36
 高崎線
快速アーバン
19:58赤羽駅


関連リンク
イエティ登山教室
水上観光情報
谷川岳ロープウェイ


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この冬は、昨年以上に雪山に触れてみたいと思い、雪上技術の講習会に参加した。
2年前に初めてピッケルを手にし、2月の天狗岳に登った。そのとき、やはり冬の高山はぶっつけ本番で行くのは恐い。ピッケルの使い方など、ちゃんと身につけていないと場合によっては命にかかわると強く思った。

某スポーツ用品店主催の机上講習を受け、いよいよ富士山での実習を待つのみだったが、不覚にも風邪を引いてしまい、やむなく直前キャンセルした。翌週に谷川岳天神平で、1日コースではあるが講習会が予定されていた。天気が危ういが、ピーカンよりも少しくらい荒れた天気の方が練習にはいいだろう。
先日雪山道具を揃えたばかりの友人を誘って行くことにした。


天神平の斜面を登る。新雪のラッセルとなる

東京駅発の上越新幹線で出発。高崎駅までは見事なまでの快晴の青空だった。富士山、両神山、西上州の山、雪を頂いた八ヶ岳もよく見える。しかし、進行方向の北から大きな雪雲が迫ってきた。

ここから先、上越新幹線はトンネルが多い。次に地上に出ると空模様は一変、雨が窓を叩きつける。三陸沖の低気圧が発達すると日本海側、特に北陸地方の天気が悪化し、それは上越の山を越えて群馬県北部の空にも影響する。
谷川岳天神平は日本でも有数の豪雪のスキーゲレンデである。新聞のスキー場だよりを見ても、天神平の積雪量は群を抜いている。それでも今年は雪の降り始めが遅く、ゲレンデもつい数日前にオープンしたばかりだった。

バスに乗り換える上毛高原駅からは、雨となった。谷川岳ロープウェイ駅でインストラクターや他の約10名の受講者と合流する。
オーバーズボンやスパッツを着けて出発する。スパッツの向きが左右反対です、とインストラクターの方に指摘された。ファスナーのあるほうが外側に来るのが正しいようだ。今まで14年間、知らなかった。
そういえば雨具のズボンの裾も、チャックは外側だし、アイゼンの歯をひっかけやすい内側にファスナーは無いほうがいいだろう。どうやら今日は、ピッケルの練習以前に、今まで間違って覚えていた知識を修正する日になるかもしれない。

ロープウェイ「フニテル」
斜面歩行
かなりの傾斜
滑落停止

天神平は一面の銀世界。しかも降るものは雪に変わっていた。おまけにゴロゴロと雷まで鳴っている。天神平上空に雷雲が近づいているとのことで、ロープウェイの運行も一時見合せとなった。
谷川岳の雄姿を見たかったがこの空模様ではどうしようもない。講習には問題はなさそうだ。スキーリフト横の緩斜面で、まず歩行の練習、そして少し上に上がってピッケルワークに移る。

積雪は50~60cmほどあり、さらにどんどん降り積もっているので少しの移動でもラッセルになる。若い人のつけたトレースについて行く。
なお、11名の受講者で、自分(49歳)と友人(51歳)がおそらく最年長のようである。

講習の内容はおおよそ、以下の通りであった。

1.アイゼンを使わない登降(キックステップなど)や斜面歩行
2.滑落停止
3.初期制動
4.耐風姿勢
5.アイゼン歩行
6.アイゼン装着後の滑落停止

雪山講習といったら最初からアイゼンをつけての練習なのかと思ったら、アイゼンを着けていたのは最後の1時間弱程度で、3分の2以上はツボ足での練習である。まずは登山靴のみでの歩行に慣れることが大切であり、滑落停止技術にしても、最初からアイゼンをつけて行うのは危険との配慮からであるらしい。
そもそも今日は降り続ける雪の中での講習だったため、凍結している場所は皆無で、転ぶと止まらないような斜面はどこを見ても無い。そのため、最初に皆でお尻で滑り降りて雪を固めて、滑りやすい斜面をこしらえ、ようやく練習用の雪面に仕上げた。

また、これらの練習で一番時間をかけて行ったのは初期制動だった。これは、歩行中バランスを崩して転倒したとき、滑落する前に止まるためのピッケルワークである。さらに、転倒した姿勢から滑落停止の体勢にもっていくための流れがある。
滑落停止技術もマストだが、まず大事なのは滑落しないこと。さらにもっと大切なのは転倒しないことである。

初期制動ではいくつかの転倒パターンをやったが、背中から転倒したときの体勢立て直しがどうしてもできなかった。これが出来るのは10名中せいぜい2,3人らしい。若い人は覚えが早いのか運動神経がいいのか、早くマスターしている。
一度やって偶然出来ても、体で覚えていないので2度目は失敗する。何度もやっているうちに、滑落停止の体勢だけは何とか自然にもっていけるようになった。それでもたまに滑り落ちるスピードがつき過ぎて、止まらないこともあった。

皆で作った斜度30度程度の雪面はけっこう急なもので、特に下るときに恐怖心が募る。夏山では「きついな」という程度の感触でいたところが、雪山では違う。まずは「恐い」が先に立つ。
こんな斜面を、お腹から倒れ込んで滑り落ち、滑落停止を試みる。そんな練習が続いた。

横にはリフトがあり、その向こうにスキーやスノーボードに昂じている人がいる。リフトに乗るスキーヤーの目には、スキーもつけず斜面を転げ回っている自分たちが、どう映っているのだろうか。

3時を過ぎて講習は終了。ロープウェイで下って解散となる。窓から見る谷川岳の山稜は、真っ白の完全な雪山になっていた。
休憩時間を除くと、せいぜい3時間くらいの講習だった。1日コースではこのくらいがいいところであるが、自分の体力的にはけっこういっぱいいっぱいだった。
あとで気づいたのが、雪山では疲労を感じる感覚が鈍るということだ。最後まで雪は止まず、気温もずっと氷点下の1日だったため、体もいつもと勝手が違っていたのだろう。次の日以降しばらくは、体中(特に二の腕)が激しい筋肉痛になっっていた。五十肩のように腕が上がらず、服を着るのもつらかったくらいだ。
日頃体を鍛えることをさぼっていたのも原因かもしれない。滑落停止技術、歩行技術より先に、雪山に登るには、まずは落ちた体力をどうにかしなければならない。

湯檜曽温泉で体を温め、上越線で帰京する。


講習のため写真はあまり撮れなかったので、YouTubeの滑落停止映像をリンクしておく。