-戸隠の裏山は気高き高峰-
タイトル
戸隠キャンプ場-一不動-五地蔵山-高妻山
山域北信
地域長野県
標高五地蔵山(1998m)、高妻山(2353m)
山行日2011年8月28日(日)天気1
沿面距離12.0km
歩行時間7時間50分
標高差1161m(牧場入口~高妻山)
宿泊-
温泉戸隠神告げ温泉
交通マイカーHome



2011年8月28日(日) 前夜発

練馬IC17:05
 関越自動車道
上信越自動車道
信濃町IC20:20
 国道18号、県道36号
20:50戸隠キャンプ場(牧場入口)5:05
5:20登山道入口
6:10滑滝の鎖場
6:20帯岩の鎖場
6:25氷清水6:30
6:45一不動避難小屋6:50
7:40五地蔵山7:45
8:37八丁ダルミ
(九勢至)
8:45
9:40高妻山10:10
10:55八丁ダルミ11:00
11:42五地蔵山11:45
12:30一不動避難小屋12:40
13:50登山道入口
14:10牧場入口14:30
 県道36号、404号他
神告げ温泉立寄り
17:15長野IC
 上信越自動車道
関越自動車道
21:25練馬IC


関連リンク
戸隠観光協会
戸隠神社
戸隠神告げ温泉湯行館


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戸隠連峰の最高峰、高妻山に登る。
この一帯の山域は北信(長野県北部=北信濃)の山と呼ばれることが多いが、新潟県との県境に近いこともあって信越の山の一部と分類されることもある。他に飯縄山、黒姫山など登りやすそうな山もあり、土日でセットで登れば充実した登山ができそうだ。しかし東京から遠いこともあり、できれば1日休みを付けて計画したい。
今回は土曜日の夕方に出かけ、ひとつの山に絞った。


稜線から望む高妻山

いつものように車中泊ではなく、土曜日のうちに登山口の戸隠キャンプ場まで行く。高妻山登山は往復でも8時間近くかかるので、翌朝早くから歩き出す必要がある。もし戸隠山なり、乙妻山まで足を伸ばすとするなら10時間以上は見ておかねばならない。なかなか大変な山である。
なお戸隠連峰は、峻険な岩場を持つ戸隠山や西岳を「表山」、高妻・乙妻山を「裏山」と呼んでいるが、標高は裏山のほうが高い。しかし一般的には、そそり立つ岩壁を従える表山のほうが、戸隠連峰のイメージに近いだろう。

上信越道を下りるころにはもう、真っ暗になってしまった。時折り小雨の降る中、戸隠キャンプ場まで車を走らす。周囲は真っ暗で、草木も眠る丑三つ時の雰囲気だが、明かりが点々と瞬くのが見えてくると、そこは戸隠キャンプ場の入口だった。
大勢の人がキャンプをしていた。オートキャンプがほとんどだ。キャンプ場はわかったのだが、何しろ真っ暗なので、駐車場のある牧場入口がどこだかわからない。来たことがない場所に夜来ると、こういうことになる。
そこいらじゅうを歩き回って、ようやく牧場入口に通じる道を見つける。数分ほど車で行った先に、広い駐車場があった。

登山道入口
滑滝の鎖場
シラヒゲソウ
一枚岩をトラバース
一不動避難小屋
雲海を抜ける
花の稜線

翌朝、夜が明ける前に支度をし、5時5分に行動開始する。前後していくつかのグループも高妻山に向けて出発のようだ。夜中じゅう賑やかだったキャンパーに変わって、今の時間帯の主役は登山者である。

牧場の中の小道を歩き、草を食む牛を見て登山道入口に入る。入口には柵があるが、薄暗いので見落としやすい。
樹林帯の中も暗い。昨晩の天候を引きずり、雲が多めで周囲の山も見えていない。
沢沿いを歩くようになる。何度も沢を渡り返すうちに、前方高いところに壁のような緑の稜線が見えてきた。そしてその上は青空。どうやら頭の上は低く垂れ込めた雲海になっていて、それを突き抜けると天気のいい稜線に出られそうである。

登山道は沢のすぐ脇につけられていて、場所によっては道そのものが沢状になっている。6月の七ヶ岳以上に今日は靴を濡らす山となりそうだ。シラヒゲソウが日の光を浴びて輝いている。
10名弱の団体さんがいた。その先で沢はいくぶん傾斜のあるナメ滝になっていて、鎖がかけられている。滑滝の鎖場と呼ばれるところだ。
その後も沢の中の急な登り。滝のようになっているところを鎖を伝ってへつる。次は帯岩の鎖場で、垂直に立つ大きな一枚岩を、鎖と足場のくぼみを頼りにトラバース。カニの横ばいか、妙義山か、ここは。
そのすぐ先の鎖場は距離は短いが、足場が見えない登りとなる。

とりあえずの難所はここで終わり、沢を詰めて行った所に「氷清水」という水場があった。登山ガイドによってはここを「一杯清水」と書いていて、水場の上に「お手持ちのガイドを『氷清水』に訂正しておいて下さい」と看板が掲げられている。自分の持っていたガイドも一杯清水だった。
口に含んでみると、これが冷たくておいしい。ついたくさん飲んでしまいそうになるが、一応は沢水である。これから長い登りが控えていることもあり、たくさん飲むのは自重した。

水場より上は普通の登山道になる。ひと登りで一不動避難小屋に着く。いつの間にか稜線はガスで覆いつくされていた。
頑丈な造りの小屋だが、トイレがないので宿泊はしづらい。ここに泊まるのは控えてほしいとの掲示も壁に掲げられている。そうは言っても、戸隠連峰は戸隠山から高妻山まで縦走するとなるとかなりの距離となり、日帰りはきついであろう。この日も何人か宿泊していたようだ。小屋の横に携帯トイレブースが出来ていた。

今日は1日ガスの中か・・・薄暗い樹林帯を登っていく。高妻山は信越の山にしては珍しく、稜線に出ても樹林が多い。
ガスを透かして、空の青が染みてきている。少し高度を上げれば雲海を抜け出せそうだ。一不動の次、二釈迦に出るとそこは青空の下になっていた。ようやく開けた展望。戸隠連峰のゴツゴツが立ち並んでいる。切れ落ちた足元は一面の雲海だ。
稜線上にはところどころ小さな祠があり、三文殊・四普賢・・・というようにそれぞれに名前がついている。高妻山山頂まで、10個あるそうだ。
歩いていくと左手に、高妻山の端正な三角形が、それこそ文字通り「そびえて」いた。びっくりするほど高くて、大きい。気品というか、気高さを持っている。戸隠連峰の主役は戸隠山なのであろうが、日本百名山に選ばれたのは高妻山だという理由がわかる気がした。
しかしこれから、あのてっぺんまで登るのか・・・ちょっと気が重くもなりそうなほど、高い頂きでもある。

登山道は主に樹林帯の中につけられているが、時々開けた場所に出る。尾根続きで正面に高く見えるのは五地蔵岳だろう。そこを目指して、アップダウンを繰り返しながら高度を上げていく。
ミヤマママコナ、ソバナ、ツリガネニンジン、タムラソウ、アキノキリンソウ、ヤマハハコなど涼しげな初秋の花が咲き競っている。

エゾリンドウ
八丁ダルミ
高妻山山頂
小さなアップダウンが多い
ツリガネニンジン
沢沿いの道
広々とした牧場

青空の下の歩きは長く続かなかった。五地蔵に着くころはまたしてもガスっぽくなる。ピークである五地蔵山は五地蔵の少し先にあった。尾根はここで西に鋭く曲がり、高妻山に通じることとなる。
方向が変わると再びガスの切れ間が目立ち始め、左側の山裾が見える。六弥勒を過ぎるあたりで標高は2000mを越すが、まだ尾根筋の半分以上は樹林帯である。
こんなに日本海に近い山の場合、この高度なら普通は樹高が低く眺望がよくなるか、または森林限界を越えた笹原にでもなっている。戸隠連峰の山はその例外のようだ。
地理的に近くても、尾根や谷の向いている方角が違うだけで風の向きや強さなどの気象条件も変わるから、植生も大きく異なってくるのだろう。

小さなアップダウンを経て、正面の視界がきいてくる。高妻山には大きな雲がかかり始めた。これでは、青空の残るうちに山頂に立つのはおそらく無理だろう。晴れはするのだがすぐ崩れる、今年の夏山はこんな天気ばかりである。
七薬師、八観音と樹林の中の小ピークを過ぎると、次第に開けた尾根になってくる。八丁ダルミ(九勢至)に着くと、高妻山の大きな山体がおそらく目の前となる。ほとんどが雲の中なので想像である。稜線に花は相変わらず多く、このあたりではエゾリンドウが盛りになっている。岩っぽいところにはミヤマコゴメグサも。また、低い潅木には早くも色づき始めたものもあった。

山頂を目指して最後の登り。初めのうちは緩やかだが、次第に斜度がきつくなり、ネマガリダケが現れると容赦ない急登が続く。休み休みの登りになる。
早発ちの登山者が下ってきた。道が狭いのですれ違うのにも注意が要る。ようやく道が平坦さを取り戻すと、上空にまたしても青空が。登り切ったところの笹原を少し歩くと、十阿弥陀の石碑の前に出た。
この平原は南北に細長く、岩の多い道を5分ほど辿ってようやく高妻山山頂に到達する。岩の積み重なった、なかなか居心地のいい山頂だ。
本来なら360度展望が楽しめるようなのだが、今日はやはり無理だった。一瞬ガスが薄くなる気配があっても、眺望が開けることはない。北アルプスの眺めを想像しながらしばし休憩とする。直下の急登でかなり体力を消耗しており、乙妻山へは時間の関係でパスすることにした。

登山者が次から次へと山頂にやって来た。来た道をそのまま下山路とする。
この先の急傾斜の道は下りでもやはりきつく、登り以上に慎重さが要求される。「あと何分くらいですか」と、登ってくる人から何度も聞かれる。みな相当つらそうだ。
日本百名山狙いの人も多く登っているはずで、他の百名山の整備された登山道に慣れてしまった人には、こういうきつい山は体に堪えるだろう。高妻山は下部の沢歩きや上部の急登など、百名山の中でも飛びぬけて登りにくい山のようである。
自分もここまで相当体力を使っていて、この先の鎖場が少々不安である。

八観音から六弥勒までは、登りのときに感じた以上にアップダウンのきつい道だった。水もほとんどなくなり、五地蔵でほぼ飲みつくす。
一不動で休憩ののち、氷清水に着く。もう下るだけなのでお腹がゆるくなってもいいと思い、がぶ飲みしてしまった。数箇所の鎖場はそれほど緊張もなく通過。水の流れるすぐそばを鎖で伝うので、涼しくて気持ちいい。
靴を濡らしながら沢沿いを下っていく。樹林帯に入るとホッとした。

戸隠牧場は大勢の観光客やキャンパーで賑わっていた。昨日の夜に着き、今朝暗いうちに出発していたので、ああこんな風景だったのか、と今初めてわかった。
このあたりは天気もよく、飯縄山や黒姫山もよく見える。振り返ると戸隠連峰は雲の中だった。
駐車場へは2時過ぎに到着する。行動時間は9時間あまり。なかなか気の抜けない、緊張感を持続させてくれる山であった。久しぶりに明日は筋肉痛かもしれない。

戸隠中社まで車を走らせ、温泉に入っていく。ちびっこ忍者村のある中社は飯縄山の登山口にもなっている。
多くのハイカーが下山してきた。飯縄山にも今度は登ってみたい。あと、戸隠山にもいつかは。