山の写真集 > 谷川岳・越後・信越 > 苗場山から小松原湿原
  • -湿原を結ぶロングコース-
  • 小赤沢-苗場山-霧ノ塔-小松原湿原-上結東
  • 信越
  • 長野県/新潟県
  • 苗場山(2145m),神楽ノ峰(2029m), 大日蔭山(2010m),霧ノ塔(1993m), 日蔭山(1860m),金城山(1353m)
  • 2016年9月24日(土)~25日(日)
  • 4.6km/14.9km
  • 4時間10分/7時間40分
  • 837m(小赤沢三合目-苗場山)
  • 苗場山山頂小屋(自然体験交流センター)
  • 小赤沢温泉楽養館
  • マイカー,バス
天気1
天気2

 

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2016年9月24日(土) 前日発
練馬IC 22:30
  関越自動車道
塩沢石打IC(泊) 6:30
  国道353,117,405号
小赤沢 8:00
  送迎車
8:15   小赤沢三合目登山口 8:35
9:05   四合目
9:30   五合目
9:57   六合目 10:02
10:18   七合目
10:37   八合目
10:45   坪場 10:55
11:05   九合目
11:50
苗場山(自然体験交流センター 泊)
2016年9月25日(日)
  苗場山 6:05
7:25 神楽ヶ峰
7:35 上ノ芝分岐
8:40 大日蔭山 8:45
8:55 霧ノ塔 9:10
9:47 釜ヶ峰
10:05 日蔭山 10:15
10:55 小松原避難小屋 11:20
11:55   中ノ田代(分岐)
12:50 金城山 13:00
13:55 風穴登山口
14:10   見倉集落
14:35   見倉橋
14:55 上結東 15:15
  バス
14:40 小赤沢 14:40
  小赤沢温泉立寄り
国道405,117,353号
18:40 塩沢石打IC
  関越自動車道
21:50 練馬IC

 

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朝、天気はよさそう。外に出るとたくさんの人が日の出を待っていた。谷川岳方面からご来光。しばらくして、昨日はまったく見えなかった山上湿原が、燃えるようなオレンジ色に変わっていった。


釜ヶ峰ピークから霧ノ塔(左)、苗場山(右)を望む

苗場山頂でご来光を拝む

苗場山でご来光

苗場山頂から、雲海に浮かぶ赤城山塊を望む

雲海に浮かぶ赤城

朝日に赤くなる苗場山頂から、奥志賀の山を望む。右に岩菅山、中央やや左に横手山

奥志賀の山々

広大な山上湿原のバックに、佐武流山が大きな姿を見せている

佐武流山

岩菅山の右奥には北アルプスの稜線も覗く

北アルプスも

苗場山の山上湿原には無数の池塘がある

池塘が無数に

神楽ヶ峰へ向かう途中で振り返ると、苗場山のまろやかな山体が高い

山頂を後に

10月から11月の紅葉時期には、苗場プリンスホテルを発着点とする「ドラゴンドラ」を利用しての苗場山登頂コースが開かれる。神楽ヶ峰付近でその登山道が合流してくるが、まだ十分に刈り払いされていなかった

ドラゴンドラコース

上ノ芝分岐で和田小屋への下山ルートと分かれ、左の霧ノ塔~小松原湿原への登山道に入る

ここから小松原へ

小松原への分岐に入るとすぐ、大きな石を伝って下っていく

いきなり難路

神楽ノ庭は草紅葉となっていた

神楽ノ庭

神楽ノ庭へ上がると穏やかな登山道となる。木道はない。振り返り苗場山を仰ぐ

一転して穏やかに

大日蔭山へは、標高差100m以上の直登となる

100mの直登

大日掛け山の尾根続きには、針葉樹林に囲まれた湿原が見えたが、ここに至る登山道はない

手つかずの自然

霧ノ塔の山頂標識は登山道の途中に置かれていた。すぐ近くの笹原の稜線に眺めのよい部分がある

地味な山頂

霧ノ塔からは正面に日蔭山(三ノ山)の稜線を見ながら、滑りやすい急降下となる

急降下

秋山郷のもうひとつの名峰、鳥甲山が大きい

鳥甲山

釜ヶ峰へは紅葉した稜線を登る

紅葉の尾根を行く


周囲の山々の眺めも素晴らしい。谷川連峰や皇海山、雲海に浮かぶ赤城、昨日も見えていた佐武流山はさらに大きい。そしてここ苗場山からは奥志賀の山がよく見えるのも興味深い。一番高く見える富士山の頭に似た山は岩菅山、山頂部にアンテナが見えるのは今年行った横手山だ。岩菅山の後ろには北アルプスの峰々が霞んで見えた。
新潟の山と志賀の山とは、山の雰囲気もアプローチ方法も異なるので全く別の山域と捉えがちだが、実際は隣り合っている。秋山郷から車でさらに西に行くと奥志賀エリアにれるというのは、ちょっと不思議な感じがする。

今日、小赤沢や和田小屋へ下るだけの人は時間があるので、朝食後坪場方面へ散策しに行ったようだ。一方、自分はあまり時間に余裕はない。
一昨年小松原湿原から日蔭山に登り、そこから見た苗場山などの大展望を前にして、今日のルートは早く歩きたいと思っていた。しかし冒頭に書いたようにこのルートは下山路としてもかなり長い。しかも、コースタイムがガイドブックによってバラバラである。アルペンガイドは7時間50分だがエアリアマップだと8時間50分、他には10時間を超えるガイドもある。
これほど差があるのは、歩く人がそう多くないことの裏返しだろう。小松原湿原前後は一度歩いているのでおおよその推測がつくが、霧ノ塔や金城山付近はまだ未踏で、ここは実際に歩いてみないとわからない。
ゴールの上結東バス停から小赤沢へ戻るバスが15時15分発なので、それをメドにして6時過ぎに山頂を出発する。

展望の山上湿原に別れを告げて急坂を下る。お花畑の鞍部はまだ日が差してこない。少し登り返して雷清水の水場に着く。早くも登ってきた人が水を汲んでいた。自分も今日1日の水はここで調達する。山頂の小屋はペットボトル350円もするのだ。
神楽ノ峰へはジグザグの急登。背後が開け苗場山の丸い山頂が大きい。足元には夏の忘れ物か、イワカガミが可憐な花を咲かせていた。
燧ヶ岳など尾瀬の山、赤城連峰やダム湖や和田小屋も見下ろせる神楽ヶ峰の肩に着く。山頂への踏み跡があるがヤブで眺めは悪い。途中で水場で水を汲んでいたこともあるが、苗場山頂からここまで1時間25分もかかってしまった。しょっぱなで25分のオーバーは大きい。

すぐ先でドラゴンドラから上がってくる道を合わせる。この世界最長のロープウェイを使えば、公共交通機関のみで苗場山を日帰り往復できるかもしれないが、運行期間が10月中旬から11月までと短い上に、料金が2400円はちょっと高い。片道でも往復でも同料金というのも納得がいかない。

箱庭のような潅木と針葉樹の道を行くと上ノ芝分岐で、ここで和田小屋ルートと小松原ルートとに分かれる。和田小屋のほうから何人も登ってくる。暗いうちから登り始めたのだろうか。
小松原ルートへ足を踏み入れる。木道ではなくなり、やがて大きな石をまたぎながらのなかなか険しい下りとなる。次のピーク付近に数名の登山者が歩いているのが見える。今日このルートを歩くのは自分だけではなかったようだ。
難所を抜けると、草紅葉が鮮やかな神楽ノ庭に出る。さっき登山者が見えていたのはこのあたりだ。眺めが楽しめるプロムナードはすぐに終わってしまい、やがて針葉樹林下の上り下りが続く。
ぬかるんでいても木道はなく、泥を除けながら歩き切ることは無理。自分は他の人より歩き方が乱暴らしく、こういう所では派手に泥を跳ね上げてしまい、スパッツが真っ黒になる。

目の前に高いピークが迫ってくる。標高100m以上を直登気味に上がっていく。途中、ピークから右手に派生する尾根上に美しい湿原が見られる。そこに至る登山道はなさそうで、文字通り手つかずの楽園のように見える。
急登は続き、最高点に上がった所で先ほどのグループが休憩していた。霧ノ塔に到達かと思い聞くと、「霧ノ塔まではあと15分ある」と言われる。標識にもあるようにここはまだ大日蔭山だった。苗場山からも2つのピークがよく見えていたが、ここはそのひとつめのようだ。

釜ヶ峰から日蔭山へは、笹原についた伸びやかな尾根道となる

伸びやかな笹原

日蔭山山頂にて、今歩いてきた稜線と霧ノ塔を望む

日蔭山より

小松原避難小屋

小松原避難小屋

小松原湿原は広くはないが、夏は高山植物が多く小尾瀬と呼ばれている

小松原湿原へ

小松原湿原は低潅木も色づいていた

潅木も紅葉

小松原湿原を抜け、金城山付近まで標高を落とすと緑の森が復活する

緑の森へ

金城山はブナが多い

ブナの山

金城山からは、木の根の張ったいやらしい急坂が続く

急坂が続く

風穴登山口の先に見倉集落がある

見倉集落

見倉橋を渡ればゴールは近い

見倉橋

上結東へ下山。正面には路線バスの待合所がある

ようやく下山

小赤沢へ戻り、苗場神社を見学していく。苗場山の山上湿原は「神の苗代田」と呼ばれ、農耕の神様として祀られてきた歴史がある

苗場神社

小赤沢温泉「楽養館」立ち寄り入浴していく

赤い温泉


大日蔭山では休憩せず先を行く。それほどの下り登りなく次のピークは右側から回り込むように進む。このあたりも展望がよく、湯沢方面の町並みが見える。
霧ノ塔の山頂標識はその展望地のすぐ先にあった。花の百名山であり、日本酒の名前にもなっている山は意外と地味な山頂だった。

霧ノ塔からの下りは、滑りやすい草付の急斜面である。先ほどのグループも前方で悪戦苦闘して下っており、うっかりスリップでもしようものならそのグループも巻き添えにしていっしょに滑り落ちてしまいそう。
下のほうには日蔭山に続く穏やかな稜線が横たわっている。何とかそこまで下り着きホッと一息。日蔭山までの尾根道はいくつかの小ピークが連なり、三ノ山とも呼ばれる。低潅木と笹の間に登山道が伸びており気分のいい所だ。
最初のピークである釜ヶ峰に上がると、笹原に点在する紅葉がいい感じだ。9月下旬でここまで紅葉しているのだから、早いほうである。
グループを抜いて先に行く。笹原なので全山紅葉とはいかないが、気分のよい赤黄のパッチワークの稜線を歩いていく。展望の尾根をひと登りで、日蔭山に到達する。これで前回の山行とつながった。
見上げる苗場山から神楽ヶ峰、霧ノ塔に続く稜線はまだ記憶に新しく、今回はさらに眼下の紅葉の山の景観も加わり、見応えのある眺めが広がっている。しかしまだ今日の行程は半分も来ていない。ここからが長そうだ。

グループの人たちが追いついてきたのでスペースを譲り、次の目的地の小松原湿原を目指す。さっきのようなきつい下りはなく、足任せにどんどん行く。ただしぬかるみ具合が半端ではなく、2年前もひどい道だったが今日はそれに輪をかけてドロドロである。
尾根を外れて沢に下り、小松原湿原の一角に入ると久しぶりに木道を踏む。木道のないところグチャグチャだ。
小沢を渡りやがて、小松原避難小屋に到着する。ズボンを見ると、泥がスパッツ装着部分よりさらに上の方まで跳ね上がっていた。ここでようやく、まとまった休憩を取る。
霧ノ塔まではコースタイムをかなりオーバーしていたが少し取り戻した。やはり一度歩いたところは足が覚えているのである程度計算がつく。しかしまだ、のんびり歩けるような余裕はない。
小屋の前の湿地帯を渡ると水場があり、ここで補給する。歩きを再開するとまたすぐに小さな沢に出会う。枯れ笹で水がせき止められており、浅いところでも足首ほどの深さになっている。しかし渡らないわけにはいかないので、スパッツの中にあまり水が入らないよう注意して足を運ぶ。

樹林帯を出ると、広々とした湿原帯に出る。苗場山頂の草紅葉に比べるとまだ緑色の部分が多く、見頃は翌週になるだろう。それでも周囲の潅木もかなり色づいてきている。2年前の10月中旬に来たときは、草紅葉はほぼ枯れていた。
木道を歩いていると、20名くらいのグループが登ってきた。地元の津南町で募集していたハイキングツアーであろう。ツアーが企画されていることは事前にネットを見ていたので知っていた。今日ここを歩いているのはさっきのグループとこのハイキングツアー、そして自分だけである。他に誰にも会っていない。

さらに木道を行くと少しばかりの下りとなる。木道は日の差さない所は濡れて滑りやすくなっているので、傾斜がなくても注意が必要だ。湿原帯と小さな樹林帯を、交互に出たり入ったりを繰り返す。小松原湿原はだいたい3つのエリアに分かれており、避難小屋の付近が上ノ田代、少し下ったところにあるのが中ノ田代、さらに前回歩いた物見尾根や大場登山口へは下ノ田代を通過する。今日は中ノ田代で金城(かねしろ)山への分岐道に入る。
ここからは初めて歩く部分だ。湿原帯がしばらく続くが木道がなくなった。やがてブナ林の下りとなり、木々の緑が復活。下るにつれ気温も急上昇してくるのを感じる。湧水が現れて、さっきまでの草紅葉の風景から一転、夏山に近い雰囲気が戻ってくる。
標高1300mを切るくらいまで高度を下げると沢を渡る。体力的にもずいぶんいいところまできたが、ここから金城山への登りはかなり堪えた。標高差は50mほどで大したものではないのだが、だらだらした登りが長く続き、山頂に到達する気配がない。ブナが多く新緑や紅葉時にはよさそうな場所だが、今はとにかく登り切ってしまいたい。
最高点らしきところを通過したが、金城山の山頂部は見当たらない。木の根に腰を下ろし休憩した後、再び歩き出す。

長かった下りの道も大詰めだ。しかしここからが最後の難所。登山口の風穴まで標高差600mの急下降だ。平均斜度約26度が2km近く続くのだからかなりのものである。ブナの多い道で巨樹もあり見ごたえがある。
木につかまりながら慎重に高度を下げていくうち、梢の間から麓の見倉集落かが見下ろせた。ただし、まだ気の遠くなるくらい下だ。
しかもこの金城山から見倉までの部分が、登山地図によって一番所要時間に開きがある。一番遅いコースタイムだと、15時15分のバスにぎりぎり間に合うかどうか微妙である。しかし焦ってうっかりスリップしてはならない。このバスを逃しても、1時間30分後に大赤沢止まりながらバスはある。
じっくりと下り、ようやく下から車の音が聞こえてきた。登山道は尾根を外れ右折。やがて見倉トンネルのある風穴登山口に下り立った。ホッと一息である。あずまやが立ち、川を挟んだ対岸に国道らしきものも見える。

そして、ここへきて時間的にはずいぶん余裕ができた。見倉集落の佇まいを眺めながら車道を歩く。見倉橋へはさらに標高差180mを下る。ジグザグにきられたトレッキングコースなので先ほどのような苦労するほどの下りではないのだが、これも体力的にはきつかった。
見倉橋から水のきれいな中津川を見下ろし、じゃまくら石公園や石垣造りの民家を見ながら最後の登り返し。国道353号の上結東バス停にたどり着いた。
バス時刻まで20分。初めのうちはコースタイムから大幅に遅れてどうなるかと思ったが、ほぼ計画通りの歩きができ、早めの草紅葉も十分見れて満足のいく1日となった。気分的には北アルプスから標高0mの日本海に下りてきたのに近い、といったら大げさか。

バスで小赤沢に戻り、車を回収。小赤沢温泉「楽養館」の赤いお湯に浸かり、今回の山行を締めくくる。
苗場山は和田小屋ルートを表玄関とすれば、小赤沢や結東、和山といった秋山郷のは裏玄関にあたる。こちら側を登路や下山路にするとまた違った趣の登山になるし、苗場山のより自然に近い姿に接することができるように思う。