~ミズナラに囲まれた静かな山頂~ つるがとやさん(1374m) 2002.9.29.(日) 曇り時々晴れ 9:20中央本線笹子駅-9:45登山口-10:40林道を横断10:45-11:10稜線-12:00鶴ケ鳥屋山12:40-13:40唐沢橋分岐-14:05堰堤-14:30近ケ沢橋-15:00中央本線初狩駅 歩行時間:4時間15分 |
中央線・笹子駅と初狩駅の南側に位置する鶴ケ鳥屋山(つるがとやさん・1374m)は、中央線沿線の山の中では地味な存在だが、自然林の豊かな山である。本社ガ丸と尾根続きにあり、三ツ峠→本社ガ丸→鶴ケ鳥屋山というロングラン縦走をした人もいるだろう。 ただこの鶴ケ鳥屋山は、一山として登るだけでもかなりの脚力を必要とし、1300m台の山としては登りがいがある。紅葉時期前の9月末、船橋沢の登山口から取り付いてみた。 笹子駅を出て、国道とは反対側の右の小道に入る、突き当たりに鶴ケ鳥屋山を示す指導標が立っている。左折して住宅地を見ながらしばらく歩くと、林道を上がって行くようになる。 道端にはノコンギクがまだ咲き残っている。廃屋や水槽などの前を通り過ぎ、緩やかに登って行くと、恩錫林の説明版がある。 やがて船橋沢を何度か石伝いに渡り、山道に入って行く。登山道にはまだ夏の名残があり、少々薮っぽい。 植林の登りを経て道が山腹を巻くようになると、急な登りが始まる。この道は今まで2度下ったことはあるが登りは初めて。これはかなりきつい登りである。道が尾根に上がってからもまだ苦しい登りは続く。
ようやく傾斜が緩やかになると、鉄塔のある切り開きに出る。笹子雁ガ腹摺山、滝子山の展望が背後に広がる。 その後は途中、林道横断する箇所を挟むが大方、傾斜の緩やかな気持ちのいい自然林の中の道である。コナラ、ミズナラ(どちらかよくわからない)が目立ち、上の方にはブナもある。シラカバの白い幹も認められる。 稜線に出るまでの少しの間、ガレていて歩きづらい部分もある。稜線に出たら左に進む。けっこうなアップダウンがある。展望はあまりよくないが、冬の葉を落した頃になれば、富士山などが木の枝越しに眺められるだろう。 稜線にはブナの木がけっこう多い。標高1200mくらいになってきているため、黄変している葉も多く見かけられる。
右にモミの植林帯を見た後は、急坂をひと登りで展望が得られる場所に出る。今歩いて来た稜線の先には、頂上部を雲に覆われた本社ガ丸、その左には同じく雲の中の三ツ峠山が眺められる。三ツ峠の左横に富士山がかすかに見える。しかし今日は雲に隠されて、5合目あたりしか見えない。 進行方向にはようやく、木の間から鶴ケ鳥屋山のピークが見えて来る。 さらに何度かのアップダウンののち、鶴ケ鳥屋山の山頂に着く。下から3時間、稜線に出てから1時間くらいかかる。ミズナラとブナに囲まれた静かな山頂からは、木の間から中央高速の道路が小さく見下ろせるにもかかわらず、けっこう山深い山に感じる。 車の音も聞こえるくらいなのであるが、あたりは静寂が支配する。この山頂は、もう少し時期が経つと、ミズナラの葉が黄変して、あたり一面黄金色の光に包まれるのかもしれない。
下山は東側の尾根をたどっていく。出だしからかなり手ごわい下りである。工事用のトラロープにつかまりながら慎重に足を運ぶ。 踏み跡もややはっきりしなくなり、本当にこの道でいいのか不安になる。指導標はこのあたり無い。この初狩駅への下りは、何度か方向転換しながらの道であるので方向感覚を狂わされ易い。コンパスと地図を見ながら、進行方向を確かめて下るようにする。 足元にはアキノキリンソウ、そしてトリカブトの花が大変多い。そして、今の時期に登山道をにぎわす主役は、いが栗やびっくりするような大きな茸だ。 もう数週間すればこれらの上に、赤・黄などの色とりどりの葉が覆いつくすことになろう。 今はまだ緑濃い林をどんどん下って行くと、先ほどの登りでも出会った林道に下り立つ。さっきすれ違ったハンターの車が停まっていて、その後ろに身長1メートルはあろうかというほどの犬が寝そべっている。犬は自分に気づき後を付いてくる。おとなしそうだがちょっと恐い。 林道の30mほど右手に指導標があり、登山道が続いている。そこまで静かに歩を進め、登山道に入ったところで、犬はさすがに付いてこなくなった。 下り続けると、右側がアカマツの植林地となり、すぐ分岐となる。左折して下るのは唐沢橋に出る尾根道、今日は直進の道を取り、杉の植林地をずんずんと下って行く。 やがて堰堤のある所に出る。朝の船橋沢の登山口の場所をそのまま裏返したような、よく似た雰囲気の場所だ。すぐ先に林道が伸びており、展望が開けて先に高川山が望める。その後は宮川沿いに林道、車道を1時間ほど歩き初狩駅に着く。 高川山は富士山の展望で有名な山。本社ガ丸・高川山・三ツ峠山などの人気の山に囲まれて、鶴ケ鳥屋山はやはり地味な存在である。しかしひとたび登ればピリリと辛い山だった。 本社ガ丸-鶴ケ鳥屋山間の稜線は、中央線沿線の山の中でも自然の色合いが濃く、いつの季節も楽しめる道だ。鶴ケ鳥屋山はハイキングの対象としてもっと人気が出てもいいと思う。 |