~春爛漫の山と里~
タイトル
たかつかやま(733m)
2006年4月18日(火) 晴れ、モヤ

8:40中央線四方津駅-9:05-川合峠-10:25御座敷の松-10:45新大地峠10:50-11:20千足峠-11:35高柄山12:35-13:10新矢ノ根峠-13:50御前山分岐-14:20林道-14:55上野原駅
歩行時間:5時間10分

マップ
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平日に休みが取れたので、坪山に登ろうと計画した。ヒカゲツツジでこの時期は混むとのことだが平日ならそれほどでもないだろう。
上野原駅に着き、バス停に並ぶ長蛇の人の列を見て、それは甘かったと気づいた。すでに50名以上並んでいて、さらに後から後から、ヒカゲツツジ目当ての登山者がやってくる。せっかくの平日の山行なのに人のお尻を見て登るのは避けたい。ヒカゲツツジは惜しいが、今日は別の山に登ることにした。
それにしても平日でこの人出。地元の観光協会が最近売り出している山とはいえ、あまりにも特定の山に人が集中し過ぎている。上野原駅の南にある高柄山は、それは静かな山だった。

ヤブレガサ(高柄山付近)
ヤブレガサ(高柄山付近)

高柄山は上野原駅からも登れるが、隣りの四方津駅まで行って、新大地峠経由の道を登路とする。これが一番オーソドックスなコースである。
線路をくぐって集落の中の道を行く。周囲の山は、低いところはもうすでに芽吹きが始まっている。
最奥の民家の横を過ぎると山道となる。いや山道と言うよりも、未舗装の林道のようだ。しかし雰囲気はよく、昔の峠道の趣がある。

小さな広場の川合峠を過ぎても、緩やかな幅広の道が続く。あたりは雑木林で、ちょうど芽吹きから新緑への移行期だ。萌黄色の葉を透かして柔らかい太陽光が登山道に降り注ぐ。山が一番きれいな時期といえる。ヤマブキの黄色も芽吹きの山道に彩りを添えている。
足元にはタチツボスミレの群落。ヒトリシズカも多い。少し高度を上げると、斜面にはピンクや白のイカリソウが見られるようになる。


四方津駅と中央線

イカリソウ

高柄山頂上

気温が高く、春霞のような空気に包まれている。この日は日本各地で黄砂が観測されたというが、この付近も少しは黄砂がやってきていたのかもしれない。
短い杉林の道を抜けるとさらにいい雰囲気の雑木道となる。寛政六年と書かれた石仏が佇んでいる。御座敷の松を過ぎて再び杉林。潅木の芽吹きが日に照らされ、そこだけ明るくなっている。

前方から、工事の音が聞こえてくる。車道の延伸中だ。今日は平日だからか工事は休みでない。
舗装車道をかすめて高みに上がるとそこは大地展望台(新大地峠)だ。大丸という名前もある。眺めが利くところで、ここから見る高柄山はまだ遠く、いったんかなり下って登り返さねばならないのがわかる。

新大地峠から下って、もう一度車道に下りる。車道を通すために山の斜面は切り明けられ、日当たりの良くなった場所にはスミレが群落をなしている。ここまで見られたタチツボスミレ、ナガバノスミレサイシン、シロバナナガバノスミレサイシンのほかに、アカネスミレやマルバスミレも咲いている。
車道を下っていく方向は金山峠への道、高柄山へは上り気味に進んで右の細道に入る。

新大地峠までのなだらかな登りに比べ、稜線に上がってからはアップダウンの多い道が続く。芽吹きが始まったばかりの自然林の尾根上には、そう多くはないがミツバツツジが点在する。稜線を吹き抜ける風が心地よい。


淡い新緑の道

芽吹き

登山道変更の看板

春爛漫の鶴島集落

千足峠に着くと、北側に四方津方面へのはっきりした下り道がついていた。ここは荒廃しているとの話だったが見たところ指導標もあり、歩けそうな気がする。帰りはここを下ってもいいなと思った。
左が植林、右が自然林の急坂を登る。足元にはセンボンヤリを多く見かける。やがて三角点と山梨百名山の標柱の立つ高柄山に到着する。

春霞で周囲の眺めはよくないが、南に丹沢の山々、北側に中央線沿線北部の稜線が見える。今日行くはずだった坪山は稜線の後ろだろうか。
空にはトンビが2羽、弧を描くように飛んでいる。高柄山に登って来る登山者はほんの数名、思いきり静かな山頂だ。ご飯を食べ、山頂に咲くセンボンヤリの写真を撮ったりしながら、1時間ほど滞頂する。

山頂から東の方向に踏み跡が伸びている。指導標は金山と示しているがエアリアマップには掲載されていない。さっきの千足峠からの下りも考えたが、やはりここに来たら鶴島への道を下山路に選ぼう。
新矢ノ根峠から鶴島集落を経て上野原に下る道は、ゴルフ場建設のために登山道が付け替えられ、急登や高巻きの歩きを強いられるきついコースとガイド本では紹介されている。しかし登山道の雰囲気そのものについてはあまり書かれているものがない。得てして自然度の高い気持ちいい道なのではないか、と期待していたがはたしてその通りであった。

芽吹き間もない、明るい尾根歩きがしばらく続く。フデリンドウやシュンランも見られ、疎林から透かして見られる斜面には、あちこちに満開のヤマザクラが枝を伸ばしている。
今回の山行で、中央線沿線南部の主だった山は一通り登ったことになる。その中でもこの高柄山をとりまく山稜は植林も少なく、とりわけ季節感に満ちている。
シュンラン
シュンラン(高柄山~新矢ノ根峠間)

そうした快適な道も新矢ノ根峠のあずまやの地点でおしまい。「矢ノ根峠経由の登山道は閉鎖のため、こちらに進んでください」旨の看板が立っているが、なぜ閉鎖されたのかの説明がない。代わりに「ゴルフ場建設のため」といたずら書きで書き加えられている。他にも「ゴルフやめろ」など登山者の憤慨の声が殴り書きされている。

ここからいったん沢筋となり、その後は前方に見える鶴島御前山のピーク目指しての急激な登りとなる。岩っぽいところも現れてきついが、背後に高柄山を背景にした芽吹きの森の眺めが広がる。
御前山手前の小ピークで、とりあえずきつい登りは終わる。しかしその後も植林下の急下降やだらだらした登りは残っている。
いったん下方に堰堤と林道らしきものが見えるが、山腹に付けられた高巻き道のトラバースが長く、さっきの急登よりむしろこちらのほうが大変だ。東北や北陸の低山のきつさと似ているな、と感じた。

ようやく林道に下り立つ。道脇にはミミガタテンナンショウがにょきにょきと伸びている。
すぐに鶴鉱泉が見えてきたが平日なので、入浴は難しそうだ。立ち止まらずに鶴島の集落を通って上野原駅に向かう。
民家の庭にはスモモやミツバツツジの花が満開。鯉のぼりも気持ちよく泳いでいる。山も里も春爛漫である。


タチツボスミレ

ヒトリシズカ

アカネスミレ

センボンヤリ

フデリンドウ


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