2週続けて高尾山に登った。花もなく、カエデなど落葉樹も葉が落ちた今、高尾山で見られる自然は照葉樹(常緑広葉樹)林である。
シイ、カシ、クスノキなど、1年じゅう緑の葉をつけているこの樹木群は、標高の低い、比較的暖かい地方を主な生育の場としている。関東地方でも街路樹や明治神宮などの自然公園で植栽を目にするが、山の中では生育帯が杉・ヒノキの人工林に置き換えられていることが多く、意外と見る機会が少ない。人工林の少ない高尾山では、南に面した稲荷山コースや3号路、6号路で照葉樹林がよく見られる。
春が近づき芽吹きが始まると照葉樹ウォッチングどころではなくなってしまうので、今こそこの高尾山のもう一つの魅力を知るいい機会となる。
今回は趣向を変えて、この2週で確認した照葉樹林を備忘録的に書き留めることにした。ひたすら照葉樹林の世界に浸ることにする。(間違いのご指摘歓迎)
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ユズ |
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まずは登山口、高尾病院の向かいに植えられている樹木で、ミカン科ミカン属のユズ。ナツミカンなど柑橘系の木は、葉に翼がついているものが多い。その中でもこのユズの翼は特に大きい。稲荷山コースにも見られたが、これも植えられたものか
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ビワ |
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ユズと同じところにビワの木もあった。バラ科ビワ属。花は冬に咲く。琵琶滝がこのすぐ近くにあるが、関係があるのかわからない。イヌビワも同じように細長い葉だが、こちらは落葉樹
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モチノキ? |
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3号路。互生で卵型ののっぺりした葉を見たら、まずモチノキと考えるのだが、葉脈が少し見え過ぎているので違うかもしれない。モチノキは葉脈がほとんど見えない。同属のクロガネモチ、ソヨゴかもしれないが、いずれも少しずつ違うところがあるので、消去法でモチノキとする。明るい平滑な樹皮はモチノキ属の特徴
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シロダモ |
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クスノキ科シロダモ属。葉の付け根から3本の葉脈が伸びる「3行脈」はクスノキ、シロダモ、ニッケイとある。クスノキは葉が小さく、山ではあまり見ない気がする。ニッケイの三行脈はもっと単純。シロダモは枝先に集まって車輪状に葉をつけることが多いことがニッケイとの識別点
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ヤブツバキ |
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広卵形の小型葉で細かい鋸歯はほかにサザンカ、ギンモクセイ、モチノキ(鋸歯あり)など紛れが多いが、葉先が尖っていること、枝が褐色でヤブツバキでいいはず。花や蕾が見られればわかりやすい。多雪地だとユキツバキとの違いがわからなくなりそう。ツバキ科ツバキ属。樹皮は明るい色だった
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アラカシ |
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葉の先半分に鋸歯があるのはアラカシで間違いないと思うが、カシの木は大木のイメージがあり、このような人間の背の高さくらいの木は本当にアラカシなのか迷ってしまう。山で一番多く見る照葉樹なので、これが同定できないと話にならない。温暖な高尾山はブナなどの冷温帯の樹木と違って、照葉樹の生育しやすい環境であるから、どんどん若い世代が生まれ、成長しているということだろう。ブナ科コナラ属
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シキミ |
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この手の葉はシャクナゲ、ユズリハ、アシビ、ヤマモモなど似たものが多く、一度迷うと迷宮に入ってしまう。高木のタブノキやマテバシイもこんな形で葉をつけたりするので若い木であれば似てくる。全縁であることや葉柄の色、葉の出方からしシキミだろう。シキミ科シキミ属。ミヤマシキミとの違いは葉の細さくらいしかない
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モチノキ |
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最初は葉のつき方が対生(枝の同じ場所から左右に葉がつく)に見えたのでネズミモチと思った。家に帰って写真で見たら互生(葉が互い違いにつく)の部分も多く、モチノキではないか。虫えいが見られる。木を識別するとき、まずは互生か対生かで大きなグループ分けをするのが第一歩とされるが、実際はどちらにも見える微妙な葉のつき方のものも多く、一筋縄ではいかない。
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ミヤマシキミ |
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ミヤマシキミと思われる。姿かたちが似ているシキミと同じく有毒だが、ミカン科ミヤマシキミ属と、科も属も異なるところが植物界の不思議なところである。シキミとの違いは、葉が少し細いことと、低木であること。上部にアラカシが茂っており、二層の状態になっていた。5号路との合流点付近
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シキミ |
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高尾山頂を経由して稲荷山コースに入る。しつこいようだがシキミだろう。花が咲き始めている
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マンリョウ |
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稲荷山コースにて。ヤブコウジ科ヤブコウジ属の低木。葉の下に隠れるように赤い実がなっている。
葉は丸みのある鋸歯で独特。同じ赤い実をつける低木にセンリョウがあるが、こちらは葉の上部につくようだ
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アカガシ |
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日当たりの良い尾根道にアカガシの枝が下りてきた。披針形の葉で葉柄が長い。ブナ科コナラ属。ウラジロガシ、カゴノキのような気もしたが、全縁であること、葉の中央付近が一番幅広いのでアカガシと同定。葉の裏も緑系なのでシイ類ではないだろう。冬芽が伸びていた。樹皮はアカガシ特有の赤身のあるものであってほしかったが、この点だけ期待を裏切った。
登山者はみなスタスタと走るように通り過ぎていき、立ち止まって草木を観察しているのは自分だけのようである
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アラカシ? |
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稲荷山コースにはこのような、葉が枝先に集まってつく小高木が至るところで見られるのだが、アラカシでいいのだろうか。葉は鋸歯と全縁が混在している。冬芽
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イヌツゲ |
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稲荷山コース下部。本物?のツゲは全縁葉で対生らしいが、これは鋸歯で互生。モチノキ科モチノキ属。山で見られるツゲにもいろんな種類があるようで、高山型のハイイヌツゲが登山者にはなじみがある。木部
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アシビ |
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稲荷山コースの下のほうになってようやくアシビとはっきりわかるものに出会った。ツツジ科アシビ属。花がついていないとヒメユズリハとかシキミなどと間違えやすいかもしれないが、この木は年がら年中花や蕾をつけているように思う。アセビという人も多い。パソコンはアセビでもアシビでも「馬酔木」への漢字変換をしてくれる
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ヒサカキ |
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稲荷山コースの登山口から10分ほど登ったところに社があり、その両脇にヒサカキとサカキが植えられている。見比べるのにちょうどいい。両方とも社寺に植えられ、神事に使われる木で、山ではやはり神社の境内近くで見ることがほとんどだ。高水山常福院にもあった。ヒサカキは鋸歯で、葉の根元から伸びる爪のような芽が特徴。葉先がふた割れのように窪んでいる。早春、に枝に張り付くようにたくさんの小花を咲かせる。ツバキ科サカキ属
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サカキ |
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サカキのほうは全縁で、ヒサカキよりさらに長い爪のような芽を伸ばす。ツバキ科サカキ属
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クロガネモチ |
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稲荷山コース登山口のすぐ上。葉脈がはっきり見えるのでモチノキではないだろう。枝が黒から茶褐色なのはクロガネモチだと思うが、自信がない。モチノキ科モチノキ属
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こうして並べてみると、ページ全体が暗いモノトーンのイメージになってしまった。一見、どれも同じような葉っぱに見えるが、最近になってようやくそれぞれの違い、個性が少しずつ分かるようになってきた。けれど一般的には登山者の間で不評の樹種であることはしかたがない。
照葉樹は西日本の極相林で、このまま自然の遷移が進めば遠い将来、西日本は照葉樹の森になっていくと言われている。東北のブナ林と同じである。人の手の入らなくなった里山や人工林地もやがては照葉樹で埋められていくらしい。
温暖化が進めば西日本だけでなく、関東地方も照葉樹の森がこれからどんどん標高を上げ、勢力を伸ばしていくことになるのだろう。
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行程:
1月13日(月) 7:12高尾山口駅-7:17ケーブル清滝駅-8:00稲荷山下-8:45高尾山9:10-9:25・4号路-9:40ケーブル高尾山駅-10:00金比羅台-10:25ろくざん亭-10:38高尾山口駅
1月19日(日) 10:55高尾山口駅-11:10高尾病院-11:35・2号路-11:55・3号路-12:50・5号路分岐-13:08高尾山13:35-14:40稲荷山展望台-15:33ケーブル清滝駅-15:40高尾山口駅