-多摩源流の名瀑-
タイトル
白糸の滝-雄滝-追分-丹波
山域大菩薩
地域山梨県
標高-
山行日2010年9月19日(日)  天気
沿面距離17.7km
歩行時間6時間40分
標高差745m(小菅~1465m峰)
宿泊-
温泉丹波山温泉のめこい湯
交通中央線、青梅線、西東京バスHome



2010年9月19日(日) 

新宿駅5:18
中央線
5:55立川駅6:14
青梅線
青梅駅乗換え

7:17奥多摩駅7:25
西東京バス
8:12小菅0:00
9:20白糸の滝9:35
10:20雄滝10:30
10:55日向沢登山口11:05
12:00分岐
12:40ノーメダワ12:55
13:40追分13:50
14:40藤ダワ15:00
15:35林道
15:55丹波
16:10丹波山温泉18:22
西東京バス
19:10奥多摩駅19:24
青梅線
青梅駅乗換え

20:35立川駅20:50
中央線特快
21:15新宿駅


関連リンク
[記録] 丹波から大菩薩峠、小金沢連嶺
小菅村
丹波山村


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9月も3週を過ぎ、記録的な猛暑の日々も終わりが見えてきた。山梨県の小菅村にある滝を見に行く。大菩薩峠登山口の近くにある白糸の滝と雄滝である。
大菩薩峠から小菅へ下るコースは一度歩いているが、滝を見てはいなかった。まだ暑さの残るこの時期、滝壺の冷気が山登り前の清涼剤になるだろう。

奥多摩駅からの小菅行きのバスに乗る。乗客はほとんどが若い登山者。いつの間にか、という感じだ。ほんの数年前、いや昨年までは自分より年上の、「高」よりの中高年登山者が座席の大半を占めていた。
境橋や奥多摩湖、小河内神社など、大方が登山口のあるバス停で下り、終点の小菅に向かうのは自分を含めて3人くらいになった。


堂々とした雄滝

小菅バス停から西に伸びる道を歩き出す。周りには小さな畑と民家が立ち並ぶ。柔らかな麻の光と清々しい空気。農作業のおじいさんが前を歩いている。
小菅は奥多摩と大菩薩の山々に挟まれた、自然豊かな山村だ。隣の丹波山村とともに、平成の市町村大合併の波に飲まれず村として自存の道を歩んでいる。
少し先に「橋立上」という村営バスの停留所があった。今日は滝見物のあとは尾根を越えて丹波山村に下りる予定だが、念のため、発車時刻をメモしておく。

小菅バス停
樹林下は涼しい
ノーメダワへの分岐

左手に養魚場やキャンプ場を見ると、やがて民家の姿もなくなり、砂利道の林道をひたすら西へ歩くことになる。案内板にはこの先「白糸の滝」「大菩薩峠 赤沢登山口」「大菩薩峠 日向沢登山口」があると示している。小菅から大菩薩峠に至る登山口は2つあったのか、初めて知った。

下に川の流れる林道は、大半が樹林の中で涼しいのだが、時々空が見えるたびにカーッと暑い日ざしが届く。暑い夏は峠を越したのだろうが、それでもまだまだ今年の9月は暑い。
中黒茂沢の流れる場所に来ると、追分に上がる登山道が伸びていた。この峠道も登ってみたいのだが、この先の雄滝まで行ってしまうと戻るのが大変なので、今日のところは諦める。やがて、トイレの併設されている駐車場に出た。さらにもうひと歩きして、ようやく白糸の滝入口に立つ。小菅バス停から1時間と少しかかった。

アーチ形の木橋をいくつか渡り、樹林を歩くこと数分で、白糸の滝が見えてきた。名前の通り細くしなやかな姿だが、落差が36mもある。なかなか絵になる滝である。
説明板によると、水の色さえ変わってしまう深い淵には竜が住んでいて、村の水不足を救う守り神であった、という言い伝えがあるらしい。いかにも多摩川源流の小菅村ならではの話だ。その淵の周囲には落ちてくる水の反射であろう、虹のような光が放たれていた。

白糸の滝

入口に戻り、さらに林道を進む。すぐに大菩薩峠(赤沢)登山口に着いた。標柱に見覚えがある。
林道はここから左に鋭く迂回し、緩やかに登っていく。上空に少し雲が出てきた。再び駐車場とトイレがある。簡単な地図の看板があったので、雄滝と日向沢登山口の場所を確認する。

すぐ先の雄滝入口から再び山道となる。こちらは少し長く険しい道だ。沢沿いの樹林帯は涼しく、ホッとする。雄滝まで10分、と入口に書いてあったが、それは山を歩き慣れている人の所要時間だ。一般の人はもう少しかかるだろう。
大きな岩を挟んで二本のぶっ太い滝が落ちていた。雄滝の高さは10数m程度なのだが、ダイナミックで堂々とした滝である。
説明板には、男性のシンボルに似ていることからこの名が付いたと言う。また、上流にある石丸峠は元々「石マラ峠」と呼ばれていたらしい。伸びやかな高原である石丸峠のイメージが少し変わってしまうような言い伝えである。勢いよく落ちる2つの流れの前に立つと、何となく精力が吸い取られていくような気がする。

多摩川の水源はまず、笠取山の水干で最初の一滴が始まり、それが水源林を伝って仲間を増やし、このような滝で生命力あふれる姿で世に出てくる。そして川となって都下に流れていくのだ。水の一生の中で滝は、まず初めに世の中に姿を現す、ひとつの舞台と言えるだろう。
滝を見ていると、水のそういったライフサイクルを、自己の生涯になぞらえて思いをはせることがある。

丹波大菩薩道
追分(今と11年前)
ヤマジノホトトギス
丹波山村に下る

滝入口に戻り樹林を脱すると、たちまち暑い日ざしが復活する。時間もお昼近くになってしまった。林道をさらに行く。一回折り返して直線状の道をひたすら歩いていくと、日向橋の手前に大菩薩峠(日向沢)登山口があった。
この登山口は今まで知らなかった。雄滝を見たあと入山するのに、赤沢の登山口まで戻らなくてはならないと思っていたので、少しだけ時間が節約できた。入ってすぐの所で水も得られるので、休憩にはいい場所である。

樹林帯の緩い登りで始まる。つづら折りで登っていくうち、赤沢登山口からの道に合流した。それから先も、あくまで緩やかな斜度の山道が続く。昔から歩き継がれてきた峠道らしい。
高度を上げるにつれ沢音がどんどん遠ざかり、ついには聞こえなくなる。緑濃い樹林の中は、風もなく静寂が支配する。鳥や蝉の声もない。
9月の森の静けさは、それまで躍動感に満ちていた山が、冬に向けてかじを切ったことを気づかせる。

小菅からの登りは、フルコンパで丹波道と合流して大菩薩峠に至る。そこまで行ってしまっては長くなるので、どこかでショートカットして稜線に上がりたい。そんな道は地図には書かれてなく、全く不確かなのだが、きっと近道があるだろうと思っていた。
案の定分岐があった。右の道をとればノーメダワに直接行けるようだ。指導標には標高1350mとの記載があった。
ノーメダワまでは、自然林や檜林下のほとんど平坦な道だった。時たま緩い下りがあるが、単調で長い。地形図に描かれた等高線に沿うように、道がつけられているようだ。
この時期はほとんど歩く人もいないと見え、クモの巣に何度もからまれる。分岐から40分かけてノーメダワの鞍部に到着する。開けてはいるが、正面に大菩薩嶺北尾根(の支尾根?)が望まれるくらいだ。大菩薩峠からの下山者が数人いた。

この丹波大菩薩道は、11年前の晩秋に歩いて以来だ。緑濃い樹林帯の道。小菅村への下山道が随所につけられていた。
この時間ではもう、登る人もいないだろう。クモの巣もなく、のんびりと稜線上の道を丹波まで下ることにする。

サカリ山を南側から巻き、追分に到達する。11年前に撮った写真を見ると、熊笹の緑が目立つ場所だが、今はすっかり枯れてしまっている。
笹は50年から60年ごとに一斉に花や実をつけ、そして一斉に枯れていくという不思議なサイクルを持った植物らしい。奥多摩のほかの山でも今、笹はどんどん枯れている。温暖化や動物の食害の影響というわけではないようだ。
これから数十年、奥多摩や周辺の山域では、笹をあまり見ない山歩きが続くことになるのだろう。
追分からも、小菅への道が下りている。これを下ると、朝見た中黒茂沢からの取り付きの道に着くはずだ。今日は左手の丹波山村に下る道を行く。

沢沿いと檜林の中を延々と歩き、藤タワに至る。ここは十字路になっていた。右下方に舗装された林道が延びてきており、以前の記憶と少々違う。前回はどの道を歩いたのだか、記憶があいまいだ。
左の「貝沢を経て丹波」の道を下る。遊歩道のように整備されていた。ヤマジノホトトギスの咲くのを見る。山の花も、今年はそろそろ見納めだ。林道を歩き、丹波山交流センターのキャンプ場施設に下りた。川遊びをする家族連れで大いに賑わっている。
歩くとオルゴール音楽があたりに響き渡るやまびこ橋を渡り、丹波山村の宿場道に出る。

ピークにはひとつも登らず、尾根を越えて村から村へ。いつもとは違った山歩きの1日となった。