東京の低山もなお雪山
タイトル
小下沢-景信山-底沢峠-陣馬高原下
山域 中央線沿線
地域 東京都
標高 景信山(727m)
山行日 2010年3月12日(金) 快晴
沿面距離 10.1km
歩行時間 4時間15分
標高差 496m(日影バス停-景信山)
宿泊
温泉
交通 中央線、西東京(京王)バス、京王線
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地図

2010年3月12日(金)
新宿駅 7:10
中央線
8:05 高尾駅 8:12
西東京バス
8:30 日影
9:15 小下沢野営場跡
11:00 景信山 11:25
12:05 白沢峠跡
12:20 堂所山分岐
12:40 底沢峠
13:10 林道
13:50 陣馬高原下 14:25
西東京バス
15:00 高尾駅 15:13
京王線
16:03 新宿駅


関連リンク
八王子市
京王バスナビ (バス時刻表)


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週の前半に発達した低気圧が通過し、南関東も内陸部は大雪となった。
久しぶりの平日休みだが、今年は積雪の厚い山ばかり登っているので、そろそろ土を踏んでの歩きがしたい。高尾山稜ならそれほど積もってはいないのでは、と思い出かけたが甘かったようだ。


景信山山頂は一面の雪

JR高尾駅から小仏行きのバス。平日ではあるが、さすが高尾山。ハイカーで座席はほぼ埋まった。しかも今日は、現役を引退されたと思われる高齢の登山者が多くを占めている。

そういう自分もあと15年くらいで引退年齢となる。いつのまにか、今まで働いた年数よりも、あと何年仕事が出来るかのほうが数字が小さくなってしまった(もっともフリーの身なので厳密には定年はないのだが)。



裏高尾の農地や民家の庭は、白梅がそろそろ満開となっている。気温も上がり、周囲はどことなくほっとした雰囲気が漂う。日影バス停で下車。中央線の線路をくぐり高台に上がる。さらに中央高速の橋げたをくぐると高尾梅林の前に出る。ほぼ満開だが、もう数日でさらに見栄えが出るだろう。

梅林はほぼ見頃
小下沢林道
雪の下に咲いていた
ハナネコノメ

小下沢林道はここから緩く下っていく。路面には5cmほどの雪がついている。土が見える部分を選びながら進んでいくが、そのうち一面が白くなる。いや、雪解けで泥の色になった箇所も多い。小下沢沿いにも雪がびっしりと付いている。これではハナネコノメはせっかく咲いていても、今日は雪の下かもしれない。
沢沿いの林道はくねくね曲がり、日陰になったり日向になったりする。そのたびに冬と春が入れ替わる。
足元を注意して見るが、スミレなどはまだのようだ。めぼしいものを確認できないまま、小下沢野営場跡についてしまった。少し手前に車が1台。広い敷地は雪で真っ白。休憩せずに、このまま景信山への登路に入る。

この沢沿いの緩やかな登りが、ハナネコノメを見られる一番の場所。しかしここも雪に覆われていた。半ば諦め気分になり、今日は景信山頂で眺めを楽しむことだけにしよう、とも思う。今日は2週間ぶりの歩きなので、足も長い距離を歩くことを欲している。
対岸の岩に、ポツポツと白い点のようなものがついていたので、念のため沢身に下りてみる。ユリワサビの花だった。さらにもう少し登ってみる。ハナネコノメが頭を出していた。しかし見えているのはつぼみばかり。薄い雪をほじってみると、中にちゃんと花をつけていたものがあった。
前方に明るい光が見えてきた。沢を離れて景信山へのジグザグ登りとなる。今日のところは花見はこれまで。ハナネコノメを少しでも見られてよかった。

登山道は湿ったシャーベット状の雪がついている。そして、あちこちで倒木が登山道をふさいでいる。
今回の大雪は標高の低いところはみぞれや冷たい雨だった。鶴岡八幡宮で樹齢1000年の大銀杏が倒れたのは、強風に加え、水分を多く含んだ雪が枝葉に付着し、その重量に耐え切れなかったことも原因と言われる。山の中でも同じようなことが起こっていて、倒木がここしばらくは登山者を悩ませそうだ。

山頂ベンチ
奥多摩方面を遠望
雪深い道
陣馬高原下

ベンチのある箇所を過ぎると、景信山山頂への一直線の登りとなる。雪が溶け、歩く場所だけが田圃のようになっている。
左側の樹林から伐採の音が聞こえてくる。「作業中のため通行に注意して下さい」との看板が立っていた。そのまま登っていくと、作業中のおじさんに出くわす。「危ないから歩いてほしくないんだよな」とボヤく。でもここで通行注意の看板を見て、すごすごと他の登山道に変更する人はいないだろう。
まあ、登山者の少ない平日なら、こんな愚痴も言われてしょうがない。

ぐちゃぐちゃの道を何とか登り、景信山山頂に到着。休憩用のテーブルやベンチが所狭しと並んでいる。売店の人が飼い犬といっしょに上がってきた。
都心方面だろうか、平野部の眺めが広がっている。反対側には丹沢の山並みが白いが富士山は雲に隠れて見えない。何となくモヤッとした大気はすでに春のそれであり、天気がいいからといって山頂で富士山が必ず見れるとは限らない。
平日の山は人も少なく、時間がゆっくりと流れているようだ。眺めを楽しんでいるうちについつい眠気をもよおしてくるような、穏やかな早春の山頂である。

稜線を歩いて、できれば陣馬山まで行きたい。しかし雪質が悪く足に負担がきやすいので、そこまでたどりつけるか。
山頂からの緩い下りで軽アイゼンをつける。正面に奥多摩方面の山々が白い。あちらは相当な積雪がありそうだ。
日当たりのいい斜面は泥濘と化しており歩きにくいことこの上ないが、尾根道そのものは快適。植林に入ってしまう時間が長いのが惜しい。白沢峠跡を過ぎ堂所山分岐。ここから先は初めて歩く。
登山道はおおむね薄いシャーベット状の雪だ。ようやく眺めが開け、陣馬山につながる尾根筋が高く、遠い。底沢峠からどうしようかと思ったが、今日のところはこれで下山とする。

陣馬高原下に向かう尾根道を下る。北斜面のため、雪は溶けずに残っている。積雪はこのへんでも20cmを超えていて、足首は軽くもぐる。東京の低山なのに3月なのに、この風景はまるで雪国の山だ。
しかしそんな気分のいい道も長くは続かず、路面に土が見え出すと早い。どんどん高度を落とし、林道に下り立つ。
オキナツルシ沢沿いにもハナネコノメは少し見られたが、今日は花よりも雪見の1日となった。春の点景を探す山通いは、もう1週間先延ばしになったようである。

キャンプ場と釣り場を過ぎ、やがて民家が見えてきた。庭には福寿草や梅が咲き、山は雪でも麓には一足早い春がやってきている。細い道を歩き陣馬高原下バス停に到着。食堂や小さな橋、旧式のポスト。どこか懐かしさの残る里の風景だった。