~芽吹き真っ盛りの稜線を行く~
タイトル
ほんじゃがまる(1631m)からつるがとやさん(1374m)
2009年4月29日(祝) 晴れ

7:10中央線笹子駅-7:30追分-8:10東京電力変電所-8:30登山口-9:35清八峠-9:40清八山10:00-10:30本社ヶ丸10:55-11:55角研山-12:00小ピーク12:20-12:35船橋沢分岐-13:20鶴ヶ鳥屋山13:45-14:20車道横断-14:30唐沢橋分岐-15:05沢-15:15県道-15:50初狩駅
歩行時間:7時間10分

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GW最初の祝日。放射冷却の影響か、朝の笹子駅はかなり冷えた。フリースを来て出発する。
今日は中央線の山々の中でも、とりわけ自然林の色合いが濃い稜線を歩く。新緑のラインはどのあたりまで上がっているだろうか。例年だと今の時期は標高1000mあたりで新緑、もう少し上で芽吹きが盛んになっている。

本社ヶ丸山頂付近は標高1600mなので時期尚早だが、稜線を緩やかに高度を落としていくにつれ、季節が進んでいくのが手に取れるだろう。

カエデの芽吹き(本社ヶ丸付近)

追分で左折し、稲村神社の前を通らず追分トンネルをくぐる。この辺り、以前歩いたルートと違っている。道の左側にある広い敷地はリニア実験地だろうか。

二ノ沢橋、水源橋と渡り、ゆるゆると車道を上がっていく。所々左の山に踏み跡が入っているのを見るが、そういう場所には決まって「清八峠・三ツ峠は車道を直進」との意味の指導標が立っている。間違えて入っていく人が多いのかもしれない。

天気は上々で寒さも解消した。しかし直線状の緩い登りはつらい。1台タクシーが先に上っていった。

東京電力変電所の前に来ると、背後に山々の眺めが広がり、けっこう高度を稼いだことがわかる。ここから先はダートの道となる。たしか、少しいくと沢を横切って登山道に入るはず。
しかし沢を渡ることはなかった。

笹子駅を出発
登山口付近は伐採
三ツ峠と富士山
フデリンドウ
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目の前の林が広く伐採され、道が付け替わっていたのだ。クレーン車が2台、かなり上のほうまで入り伐採した木を運んでいる。
どうやらカラマツやヒノキの林がなくなってしまったようである。堰堤でも造るのだろうか。中央線沿線の山麓にまたひとつ、大きな人工物が出来ようとしている。前回来たのが7年前、やはりそんなに経っていれば、変わらずにいるほうが不自然というものだ。

臨時に付けられたリボンに従い登っていく。荒れ地のど真ん中に、登山口の標識がポツンと立っている。のっけから急な尾根に取り付くことになる。クレーン車を横目で見ながら、高度を上げていく。
沢を左下に見ながら黙々と登る。工事の音が聞こえなくなると、自然林が目の前いっぱいに広がってるのに気づいた。残りのカラマツ、コナラなど芽吹きから淡い緑に衣替えしつつある。
細かくジグザグを切る急斜面の登りはきついが、日に当たってキラキラ光る若葉に包まれ、辛さも気にならない。匂いたつような春の日差しを全身に浴び、一歩一歩高度を上げる。

上部の稜線が近づくにつれ、芽吹きもほとんどなくなる。いったん開けた場所に出て振り返ると、大菩薩嶺方面の眺めが広がっていた。女性数名のグループを追い抜く。おそらくさっきのタクシーで来た人たちだろう。

清八峠に着く。清八山へは往復15分ほどなので寄っていく。尾根伝いに数分で清八山(1593m)に到着する。数人の登山者が休憩中だった。
ほぼ360度の展望、松の木を前景に大きな富士山。そして南アルプスが甲斐駒から光岳まで勢ぞろいで見られるのも、ここ清八山の魅力である。

清八峠に戻って本社ヶ丸を目指す。途中の岩棚からも富士山の眺めがいい。岩場をしっかりと登ってどんどん高度を上げる。斜度が緩むとブナが現れるが、まだ芽吹いてはいない。
最後のひと登りで本社ヶ丸頂上である。ここもなかなかの展望台だ。清八山からさらに高度を上げているから、周囲の山並みの眺めも高度感がプラスされ素晴らしい。
しかしこの頂上は思った以上に(もう何度も来ているものの)狭い場所で、腰を下ろせるスペースがそれほど多くはない。北東面は樹林に目隠しされているため、360度展望というわけにはいかない。甲乙付けがたいが、個人的には清八山からの展望のほうが好みである。狭い頂上はたちまちのうちに満員になった。

鶴ヶ鳥屋山へ
ヤブレガサ
雲間の富士山
アケボノスミレ

本社ヶ丸から緩く下っていく。カラカサ岩コースを分け、さらに高度を下げていくと芽吹きが復活し、歩きやすい登山道がさらに快適な散歩道になる。
足元にはエイザンスミレ、タチツボスミレ、そしてヤブレガサが今年も多く見られる。ヤブレガサはすでに大きく葉を広げたもの、まだつぼめていてシワシワのもの、親子のように大小いくつかで寄り添っているのもなど様々な姿のものがあって面白い。
木々の芽吹きも多種多様だ。木の名前がわからないのが残念だが、いろいろな葉の出方があるものである。登山道は芽吹きの見本市の下をくぐっていくようだ。
よく見ると、ナラ系の樹木で、葉の色が赤っぽく染まっているものがある。おそらく葉が出たてのときはあのような色になるものもあるのだろう。まさか酸性雨の影響ではないとは思うが。

送電鉄塔の立つ草地に出る。春の空気で霞み気味ではあるが、あたりが開けて気持ちのいいところだ。
ここから先は少しアップダウンの多い道となる。角研山(1377m)を過ぎて次の岩の目立つ小ピークの上に立つ。足元にはイワカガミの葉がびっしりついている。あたりを探したが、2,3輪の開花を見るにとどまった。
船橋沢への下山路を分ければ、鶴ヶ鳥屋山の領域となる。モミの木が点在する尾根を登り返していく。
スミレ類はアケボノスミレが多くなる。キジムシロの鮮やかな黄色も目立つ。再び芽吹きの割合が少なくなり、やや右に曲がる尾根を行くと、ミズナラに囲まれた鶴ヶ鳥屋山頂上である。

以前、9月に来たときは濃緑の中の静かな頂上、という印象があったが、今の時期は明るい空の下だ。そして富士山方面だけが切り開かれており、雪で真っ白い春富士を目の当たりに出来た。
ここは朝、光のいいうちに登ってくるとなかなかいい姿の富士山が見られそうである。

長い尾根歩きも、下りを残すのみだ。鶴ヶ鳥屋山はここからの下りが少しきつく、岩や木の根の出たヤセ尾根にはトラロープも張られている。ゴージャスな色合いのナガバノスミレサイシンが、急斜面のあちこちに群落を作っている。
いったん車道に下り立つ。これは朝、追分から上ってきた車道から分岐している道で、今まで歩いてきた尾根の下のほうの山腹をずっとなぞって伸びているのだ。新緑・紅葉時は特に自然林の素晴らしさを体感できるこの山稜も、主稜線のすぐ下まで人工物がやってきている。
車道を右に行き、すぐに山道に復帰する。下るほどに緑が濃くなり、このあたりは芽吹きから新緑への移行時期である。
アケボノスミレがここには大変多い。ミツバツツジの咲き残りも見る。振り返ると鶴ヶ鳥屋山がすでに高い。

アカマツの多い林となる。唐沢橋方面へ下る分岐には「難路」と書かれていた。直進してさらに下っていくとあたりはもう初夏の入り口といっていいほどの緑濃い装いとなっていた。
沢を渡ってその沢沿いに林道を進めば、やがて県道に下り立った。

スライドシアター

中央線沿線の山といっても、鶴ヶ鳥屋山は比較的奥まった位置にあり、ここからさらに40分近く車道を歩く。水がなくなっていたので、自動販売機でジュースを買う。
山と山の間をくりぬいて伸びているリニア実験線の下を通り、右の道に入る。民家や中央線の線路の先に、滝子山が大きい。

付近の田畑はまだ茶色のまま。5月中旬になれば、鮮やかな緑色の苗が植えられていることだろう。
酒屋でビールを買い、1分で初狩駅に着く。


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