~藪をかきわけ樹林の頂へ~
タイトル
げんじろうだけ(1477m)
2003年11月2日(日) 晴れ

7:30塩山駅-7:50文殊院入口-9:10三ツ沢乗越-9:25恩若峯9:30-10:00・1010m峰-10:30・1150m峰10:35-11:15源次郎平11:20-12:00源次郎岳12:45-13:00源次郎岳分岐-13:20林道-13:55嵯峨塩鉱泉15:20-16:05天目山栖雲寺(天目バス停)17:05-[バス]-17:20甲斐大和駅 歩行時間:6時間15分

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紅葉の尾根道を源次郎岳へ
紅葉の尾根道を源次郎岳へ

大菩薩嶺への中継点、上日川峠の南方に源次郎岳がある。上日川峠や嵯峨塩鉱泉からのコースがあるが、車利用でないと日帰りでは難しい。
塩山駅から恩若峯(おんじゃくみね)を経ての尾根歩きは、下山路とされることが多い。しかし駅から直接アプローチ出来ることと、嵯峨塩(さがしお)鉱泉に下って一浴出来るなどメリットもある。今日はこのルートを辿ることにした。

恩若峯付近はヤブ道が多いとのことで25000地形図を持って出掛けた。塩山駅から見る恩若峯付近の山々はどれも雲がかかっている。

駅からしばらく車道を東に進む。雨敬橋(あめけいばし)を渡り、果樹園に向かう道が左の高みに続く。中央線を踏切で渡る。中央線といっても、ここでは山間の単線なので開かずの踏切ということはないようだ。
このへん、特に指導標はないので地形図とコンパスに従って道を選ぶ。

居並ぶ果樹園はそろそろシーズンも終わり、樹の葉が黄変している。果樹園の一番高いところに上がると、南北に伸びる細い車道と出会う。背後に塩山の町並みや塩ノ山の眺めがいい。「大智山文殊院入口」の標柱があるが文殊院のほうには行かない。

車道を越え、農道を上がって行く。分岐では、地図に従いなるべく左方向に進む。頭上の雲は登っているうちに取れてくれるだろうか。

砂防ダムが現れたところで農道は左に迂回する。5分ほどで半舗装の道路は途切れ行き止まる。目の前はヤブ深い林。かすかな踏み跡らしきものが続きテープもある。どうやらここが取り付き口のようだ。しかし何となく自信がもてない。
取り付き口付近
取り付き口付近
恩若峯
恩若峯山頂

笹ヤブをかきわけ踏み跡をたどると、左折するようになり林道のような山道に行き当たる。これでよかったと思ったのもつかの間、植林帯に差し掛かったところで道は突然消滅する。いや、先に道があるようにも見えるが、倒木やヤブが多くて前に進めない。しばらく右往左往する。さっきの取り付き口まで戻ってみようか。来た方向を辿りながら注意深く斜面を見上げる。

植林の急斜面に、人が這い上がったような跡がある。コーヒーの空き缶も埋まっているのでここを登ってみようかと考える。しかしあまりにも急な斜面なのでためらいも大きい。
考えたあげく意を決して登る。手足を総動員して這い上がること50m、再び山道が現れた。

予想外のはっきりした道。大きなジグザグを2,3回繰り返した後、尾根に上がる。塩山市街地を見下ろせる。
しばらく東進し、何度かヤブっぽい所をこなす。先に恩若峯の大きな山体を見る。

やがて薄暗い植林地に入ると、すぐ右下から道が上がって来るのを見るが、荒れている。方向からおそらく、さきほどのダムから直接沢沿いに上がって来ている道ではないか。
そのすぐ先が三ツ沢乗越。初めて指導標を見、恩若峯への急な登りに入る。

登り着いた恩若峯(983m)は、松などの樹林に囲まれた山頂だが2等三角点がある。道探しのロスもあって、ここまで2時間かかった。
ブナ黄葉
恩若峯~源次郎岳間の紅葉

さらに東に進む、樹林の中の静かな道が続く。
恩若峯からは、踏み跡は細いながらも指導標・テープが随所にありわかりやすい。

小さなピークが連続するが南側・北側から巻く。1050m峰までひと登り。休憩していると、もう一人同じ方向からやってきた。人のことは言えないが、奇特な人もいるもんだ。

1150m峰の急登をこなすあたりから、深山の趣が増し、自然林の割合が多くなる。カエデなどの紅葉が目立ち始め、道は落ち葉で埋め尽くされる。
さらに緩く高度を上げ、ブナのオレンジ色の葉がきれいな一角に差し掛かる。遠くに大菩薩嶺、少し手前に湯ノ沢峠のアンテナ塔が見上げられる。
源次郎岳
源次郎岳
源次郎岳山頂
広い源次郎岳山頂

源次郎平という明るい鞍部に着くと、目の前に源次郎岳が大きい。端正な三角錐で高く感じる。またこの付近はシラカバの木が多い。
左に踏み跡が続いているようにも見えるが、ここは直進。さあこれから標高250mの急登が始まる。

最初のうちはそうでもないが、急な登りにだんだんと息が上がって来る。ここは無心に高度を稼ぐしかない。
何箇所かの岩場をこなし、落ち葉に足を取られながら踏ん張る。

枡岩という大岩を北側から巻くと、ようやく広い源次郎岳頂上(1477m)だ。ここも樹林に囲まれ展望はない。木々もすでに葉を全て落とし、頭上の青空だけが鮮やかだ。
駅からここまで4時間半もかかってしまった。登りにこれだけ時間を要したのはアルプス以来かもしれない。

冬枯れの雰囲気に満ちた静かな場所だ。岩に上がると富士山が眺められると聞いていたがそれはかなわない。樹林が生育したせいだろうか。
そもそも今日は晴れているとは言っても気温が高く、周囲はもやがかかって遠くの山の眺望はない。

頂上を後にし、東側の嵯峨塩鉱泉に下山する。下ってさらに大きな登り返しがある。着いたピークは源次郎岳より高いくらいだ。

もうひとつピークを越えてようやく下り一方の道となる。源次郎岳分岐で下日川峠への道を分ける。周囲はカラマツ林となるがすでに落葉している。笹の繁茂する林床もやや荒れ気味だ。もっとも恩若峯付近に比べればまだましである。

少しの下りを経て、あっけなく林道(嵯峨塩深沢林道)に下りる。ここには「源次郎岳登山口」の標識がある。山梨百名山に選定されてから、こちらの嵯峨塩鉱泉側のルートはいくぶん整備されているようだ。
林道を隔てたすぐ反対側には、さらに踏み跡が下りている。「嵯峨塩館25分」との導標があるが少し引っ込んだ場所に立っているのでわかりにくい。
嵯峨塩鉱泉
嵯峨塩鉱泉

嵯峨塩鉱泉までの踏み跡は緩やかな下りであるがヤブっぽく、随所で黄色テープに導かれる。
右に牛奥への道を分け、テレビアンテナのある場所を過ぎ、なおも下ると右下に農地のようなものが見えてくる。道は反対側の暗い斜面を下りて行き、木段を少し下ると嵯峨塩鉱泉の前に出た。

700年もの歴史のある嵯峨塩館は、こんな山奥の山奥にひっそりと建つ一軒宿だが「日本秘湯を守る会」の指定旅館である。湯の香漂うアルカリ性の温泉は気持ちいい。建物も落ち着いた風情の造りで泊まってみたくなる。

ここから45分ほど舗装車道を歩き、村営バスの停留所(天目)に着く。次のバスまで時間があるので、すぐ上にある「天目山栖雲寺(せいうんじ)」の石庭を見学する。モミジの紅葉が赤々とすごくきれいだ。
石庭の一番上まで上ってしまい、風呂上がりなのにまた汗をかく。上からは今日初めて富士山が見えた。

日も沈み、周囲が闇に包まれる頃バスがやってきた。車内でうとうとしている間に甲斐大和駅に着く。山越えの1日が終わった。


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