山の写真集 > 日本アルプス > 双六岳、三俣蓮華岳
  • -満点の夏山景観-
  • 新穂高温泉-鏡平-双六平-双六岳-三俣蓮華岳
  • 北アルプス
  • 岐阜県
  • 双六岳(2860m), 三俣蓮華岳(2841m)
  • 2021年8月1日(日)~3日(火)
  • 12.3km/6.5km/12.3km
  • 7時間23分/4時間25分/5時間30分
  • 1754m(新穂高温泉-双六岳)
  • (前夜車中泊)、双六平(テント2泊)
  • 中崎山荘
  • マイカー
天気1天気2天気3

 

2021年8月1日(日)前日発
調布IC 17:45
  中央自動車道
長野自動車道
松本IC 21:00
  国道158,471号
県道475号
23:00 新穂高温泉 登山者駐車場(泊) 5:10
5:20   新穂高温泉 5:25
7:00   わさび平小屋 7:10
7:35   小池新道登山口
8:22   秩父沢出合 8:27
9:40   シシウドヶ原 9:50
10:40   鏡平 11:00
12:05 弓折分岐 12:25
13:40 双六平(テント泊)
2021年8月2日(月)
  双六平 5:10
6:10 双六岳 6:55
7:23 中道分岐
7:40 丸山
8:17 三俣蓮華岳 8:40
8:55 三俣峠
10:22 双六岳登山道
10:45 双六平(テント泊)
2021年8月3日(火)
5:50   双六平
7:00 弓折分岐 7:10
7:46 鏡平 8:10
8:45   シシウドヶ原 8:55
9:50   秩父沢出合 10:00
10:40   小池新道登山口
10:55   わさび平小屋 11:23
12:35   新穂高温泉
12:40 登山者駐車場
12:50
  中崎山荘入浴立寄り
県道475号
国道471,158号
16:20   松本IC
  長野自動車道
中央自動車道
19:40 高井戸IC

 

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今年の夏は久しぶりに北アルプスに登ることにした。
好みの山も年々変わっていく中で、人気集中で人の多すぎる北アに行く気が、ここ最近はなかった。けれどここでしか見られない景色を、4年も経つとやはり目にしたくなる。
新穂高温泉からテント泊で双六岳を目指す。4年前も双六岳だったし、もう何度も行っている。豊富な高山植物と残雪、展望に恵まれたこの飛騨の名山は何度登っても飽きることはない。


蒲田川越しに、久しぶりに見る北アルプス [拡大 ]

案内センターのある新穂高温泉ターミナル

新穂高温泉

蒲田川林道のゲート。わさび平まで1時間半くらい

林道ゲート

悪天にもかかわらず、林道を歩く登山者は多い

登山者多い

わさび平小屋

わさび平小屋

わさび平小屋には今年もトマト(\200)、きゅうり(\100)が売られていた

定番野菜

秩父沢出合は貴重な水場

秩父沢出合

伸びやかな草原状のシシウドヶ原

シシウドヶ原

鏡平から弓折分岐へ、急坂を登っていく

弓折分岐へ

コバイケイソウはあちこちで群落を作っていた

今年も群落

ハクサンイチゲ(弓折分岐)

ハクサンイチゲ

双六平の小屋とテント場が見えてきた

ようやく双六


最初はわさび平で1泊後に山上での2泊の計3泊という、贅沢な計画を考えていたが、例によって直前の天気予報が芳しくない。そのため出発予定を1日遅らせ、前日は車中泊に変更する。
また、コロナ禍の今は双六のテント泊は予約制になっており、計画の自由度が制限されている。しかも北アルプスはテント1泊の料金が2000円と高額になってしまった。1張り1000円、1人1000円と料金要素を2つに分けたのは画期的だと思うが、少し高すぎる。
高速道路も休日割引がなくなってしまっているし、外出自粛要請に背いて出かける身が支払う費用はバカ高い。
でもこのご時世、仕方がないだろう。ワクチンは2回接種済みだが、感染には細心の注意を払い出かけることにする。

東京から新穂高温泉へ (7/31)

7月31日の午後、車で自宅を出発。オリンピックによる通行規制で、一般道が渋滞している。首都高は1000円上乗せ料金なので利用せず、調布から中央道に入る。悪めの天気予報は変わっていなかったがもう出かけてしまったので、行くしかない。
松本で高速を下りて、上高地に向かう真っ暗な道を延々と走る。平湯峠道路は前回と違い無人化され、ETCが使えるようになっていた。

新穂高温泉手前の登山者用駐車場に着いたのは夜11時。今回は運よく空きがあった。天気予報が悪かったのも幸いしたようで、ハイシーズンや特定日だとここの駐車場は前夜から満車になりやすい。満車の場合は上の鍋平駐車場に車を停めることになり、駐車場から新穂高温泉まで30分ほど余計に歩かねばならなくなる。
真っ暗で静か、涼しい駐車場で、6時間ほど睡眠をとる。

新穂高温泉からわさび平へ (8/1 5:20)

まだ暗いうち、テントと2日分の食料を背負って出発。遊歩道を5分ほどで、新穂高温泉のターミナルに着く。
空模様が心配されたが、今のところは青空も見えている。蒲田川の大きな治山施設も以前のままだ。温泉街を抜け林道歩きが始まる。

今日は新しい登山靴で歩く。ややハイカットの、頑丈な靴にした。軽登山靴だと、テント泊などの重い荷物では負荷がかかって歩きにくい。2週間前に買ってから、どこか低い山で試し歩きしてきたかったのだが、機会がなかった。靴ずれ防止として、かかとに絆創膏を貼っていく。

蒲田川林道に入る。空模様は少しずつ下降線で、樹林の道が時々明るい河原に出るたびに、空が雲で覆われる面積が増えてきている。予報では、双六に着く予定の14時か15時くらいにひと雨来そう。そして夜半に雷雨となるとのことだ。

雷と暴風雨。2004年にこの稜線で恐ろしい思いをしている。激しい大雨のあと、止むことのない雷光・雷鳴にテントの中で怯え、そしてテントが飛ばされるのではないかというくらいの強風に生きた心地がしなかった。
今回も数日前から、岐阜と長野の県境で雷が頻発している。この日も雷雨予報が出ており、テント泊するのにためらいがあった。双六は小屋泊も予約制だがこの日は空きがあり、当日朝なら変更が可能とのことだ。

歩き始めて1時間30分ほどで、わさび平小屋に到着。ウッディな建物は新しく、最近増築したのだろうか。入口の前にはいつもの夏と同じく、きゅうりとトマトが水にプカプカ浮いて売られていた。
ここに宿泊して次の日に早発ちすれば、涼しい中を双六までの登ることができるのですごく楽になる。今日これから歩く登山道は南南東側に開けた斜面についているため、午前中の日差しが背中炙りになりとてもつらい。わさび平を朝5時に出れば、その日差しが避けられる。
今回は新穂高温泉が出発点のため、ここから日照りとの格闘となるが、少し天候が悪めなことが救いかもしれない。

日照りの登山道を鏡平へ (8/1 7:30)

ブナ林を抜けて小池新道登山口。河原の石畳を登っていく。4年ぶりで懐かしい。曇りがちだが明るく、暑い日差しが河原に届いている。
久しぶりの重い荷物なのか、暑さなのかわからないが、足取りがすぐに重くなった。秩父沢で水を補給。このコースは水が得られる場所が多いので、500mlくらいしか持たない。
背後の穂高連峰は雲を被っている。ただ一部は青空も見えており、意外と天気は持ちそう。降られないのはいいが、日照りに悩まされそうだ。
タオルを沢水に十分に浸し、「濡れタオル」を作っていく。首に巻いておくと体が冷え、対熱中症としては効果てきめんである。

ソバナ(小池新道登山口)

ソバナ

ミヤマコウゾリナ(鏡平)

ミヤマコウゾリナ

オニシモツケ(弓折分岐付近)

オニシモツケ

ダイモンジソウ(弓折分岐付近)

ダイモンジソウ

ハクサンフウロ(弓折分岐付近)

ハクサンフウロ

コバイケイソウ(弓折分岐付近)

コバイケイソウ

双六平のテント設営地

双六テント場

イワツメクサ(双六小屋付近)

イワツメクサ

ミヤマキンポウゲ

ミヤマキンポウゲ

クロユリ(双六小屋付近)

クロユリ

コイワカガミ(双六小屋付近)

コイワカガミ

樹林の背が低くなりイタドリヶ原。中低木と草付の斜面はここからが急登。次のシシウドヶ原までがやけに長く、休み休みの登りになってしまう。
小池新道はもう何度も歩いており、ペース配分も心得ていたつもりだが、今回はまだ半分も来ていないうちに完全に顎が上がってしまった。
シシウドヶ原付近の開放的な雰囲気は気に入っていて、ゆっくりしたいところ。大迫力の大ノマ乗越の岩壁、そこから発する一筋の雪渓が草原に届く景観は北アルプスならではのものだ。しかし今日はそんな景色を楽しむ余裕もない。暑さによる体力消耗もあるだろう。やはりわさび平での前泊をしなかったことが悔やまれる。

シシウドヶ原で右に折れる。ここからしばらくは、急な登りはない。ゆっくりでも、先に進むしかない。足がもつれて転倒しないように注意しながら、岩の多い斜面をトラバースしていく。クルマユリ、カラマツソウなど高山植物もちらほら見られるようになった。
再びの急登を我慢してこなしていくと、コバイケイソウに埋め尽くされた斜面に出て驚く。このすぐ上が鏡池である。

コバイケイソウは花期に隔年性があり、たくさん咲いた次の年には全く咲かないことがよくある。北アルプスでは昨年よく咲いたそうなので、今年は咲かないかと思われていたがそんなことはなかった。
こういうことは最近、他の植物でも見られる。例えばブナの開花・結実年も、以前は4,5年周期で満開・豊作を繰り返していたのが、最近はその間隔が短くなってきた、と言われる。温暖化により自然全体のリズムが壊されてきた表れ、ととらえる向きもある。
コバイケイソウはこの後も随所で大群落が見られ、今回の山行で一番目にした高山植物となった。

何とか鏡平に上がってこれた。ここから広がる槍ヶ岳や穂高、飛騨の峰々の眺めを見て初めて、北アルプスに入ったと実感できる。今日はあいにく槍・穂高は雲の中だ。荷物を下ろして休憩する。
この暑い中、マスクをして登っている人はさすがにいなかったが、小屋の前で休んでいる登山者はほとんど全員がマスク姿だ。5名以上のツアーもけっこう見かけ、会話が盛んに交わされている。
何しろ全国から人が集まってくる山域なので、他の場所とはまた違った感染リスクがあるだろう。

弓折から双六、花と展望の稜線 (8/1 11:00)

腰を上げ、木道を歩いて弓折分岐までの登りに入る。急斜面が目の前に壁のように立ちはだかるが、見かけほど急な登りではない。
しかし歩き始めてすぐ、蓄積していた疲労がピークに達して、たまらずザックを下ろす。テント2泊は冒険だったか。しかしその壁の上には意外にも青空が見える。
弓折中段まで来た。仕切り直しで頑張って登る。壁の上の方が白く染め上がっている。近づいたら何とコバイケイソウの群落だった。ここにこんな群落があることも知らなかったが、来る時期によって彩る花が微妙にずれるのだろう。

弓折分岐でついに稜線に上がる。ここまで来ればあとは緩い登り下りのみだ。ハクサンイチゲを見る。3年前に白山で見て以来、久しぶりのご対面。ハクサンフウロやチングルマも。
目の前に槍・穂高の眺めはないが、高山植物の出迎えで北アルプスに登れた実感が湧く。樹林の山もいいけれど、夏に登る山ならやっぱりこういう雰囲気でなくちゃならない。岩に腰を下ろした状態から立ち上がろうとしてもなかなか腰が上がらない。ストックを支えに何とか立つ。

歩いていくほどに花の種類、数とも格段に増える。ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、タカネヤハズハハコ、ヨツバシオガマ、ダイモンジソウ、トリカブト、オニソモツケからニッコウキスゲまで、初夏から初秋の花がぎっしりと詰め合わせされている。
さらに高度を上げていくと、意外にも双六岳が雲に隠れることなく姿を見せていた。雲の厚い信州側と、見通しのある飛騨側とで、この尾根を境にくっきりと分かれている。
雪田のある花見平。ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、コバイケイソウの三色・三層のお花畑の先に双六岳が見事。真ん中の黄色はシナノキンバイであればもっと見ごたえのあるお花畑となるのだが、以前に比べこの花の数は減っている。代わりに同じ黄色の花が面積を増大している。
コバイケイソウと同じく、ハクサンイチゲも今回は全域でたくさん見れた。クロユリベンチ付近にクロユリは咲いていなかった。

双六平までは、緩やかだが小さくはないピークを一つ越えていく。登り・下りとも思いのほか長い。その双六池と双六小屋が見えてきた。空が暗くなりつつあるが、なんとか降られずに到着できそうだ。
しかしそこからもかなり長く、30分くらいかかった。池手前の木道に足を下ろすことができて一安心。

雨の中のテント設営 (8/1 14:00)

まず双六小屋でテントの申し込みをする。雷が恐いので小屋泊も考えていたが、ここまで来てしまえば初志貫徹。10年以上前の2004年に、ここで恐ろしい思いをした大雷雨と暴風。その再現とならないことを祈りつつ、テント場に向かう。

双六平テント場はまだそれほど混んでいない。というより、悪天予報なのでこの程度かもしれない。幕営する場所も決め、ホッと一息ついていると突然、大粒の雨が降り出した。すぐに強い降りととなる。
地面に置いておいたザックは、カバーをしていなかったのでたちどころに濡れてしまう。急いでテントを広げ、ポールで組み立てる前にザックを中に押し込む。ザックの中身は濡れず、最悪の被害は逃れた。用心のためマットやシュラフをビニール袋でくるんでおいたのは正解だったようだ。

しばらくの間、テントの中で雨をしのぐ。ザーザー降りとなるが、テントの中から聞こえる雨音は実際より大げさに聞こえるもの。予報通りに雷も鳴り始めた。しかし雷光・雷鳴とも、多くて数分に1回くらいの割で、近くに落ちた気配もない。少し拍子抜けだった。
2004年に笠ヶ岳、双六池でテント泊したときは、それこそ15秒ごとにピカッ、30秒ごとにドドーンと来て生きた心地がしなかったが、ああいうのは本当に運が悪い所にいたというか、まれな出来事だったんだなと思った。
もちろん用心するに越したことはないが、あまり慎重になりすぎるのも、登山する機会を逸すると思う(2004年のときは、自分が笠ヶ岳付近を歩いているときと同じ時間に、爺ヶ岳や白馬岳付近で複数の落雷事故があり、死亡事例もあった)。
夜、雨は上がり星空となった。