山の写真集 > 日本アルプス > 北岳
  • -高山植物は上へ-
  • 広河原-白根御池-肩の小屋-北岳-大樺沢出合-広河原
  • 南アルプス
  • 山梨県
  • 北岳(3193m)
  • 2017年7月17日(祝)~18日(火)
  • 6.2km/6.0km
  • 6時間55分/3時間15分
  • 1633m(広河原-北岳)
  • 肩の小屋(テント泊)
  • 金山沢温泉
  • マイカー,乗合タクシー
天気1
天気2

 

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2017年7月17日(月・祝)
五反田IC 3:35
  首都高
中央自動車道
甲府昭和IC 5:20
  県道5号,20号他
5:50 芦安駐車場 6:20
  乗合タクシー
7:10   広河原 8:05
8:28 大樺沢分岐
9:25 第二ベンチ 9:35
10:27   白根御池小屋 11:05
13:00 草すべり分岐
13:25 小太郎山分岐 13:37
14:07   肩の小屋 14:55
15:37 北岳 16:08
16:55 肩の小屋(テント泊)
2017年7月18日(火)
5:40   肩の小屋
6:05   小太郎山分岐 6:25
6:40   草すべり分岐
7:38   大樺沢二俣
8:00   仮設橋 8:10
9:00   大樺沢分岐
9:25 広河原 9:45
  乗合タクシー
10:30 芦安駐車場
金山沢温泉立寄り
11:35
  県道20号, 5号他
12:15 甲府昭和IC
  中央自動車道
14:25 高井戸IC

 

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9年前に塩見岳から縦走して以来、北岳にはご無沙汰している。今回は小太郎山に登ろうと計画したが、結果的に北岳だけに登頂することとなった。
テント一泊で両方の山に登るのは距離的にはたやすそうと思ったが、実際は山小屋の位置や北岳までの標高差などの理由から、かなり忙しい行程となる。できたら白根御池と肩の小屋の二泊とするか、または小屋泊のプランとした方がいい。


ハクサンイチゲの群落(小太郎尾根西斜面)

広河原から、吊り橋で野呂川を渡る

吊り橋からスタート

白根御池へは、樹林帯の急登が続く

樹林帯の急登

ゴゼンタチバナ

ゴゼンタチバナ

タカネグンナイフウロ

タカネグンナイフウロ

タカネグンナイフウロの白花

白花も

白根御池小屋まであと20分、急登はついえる

もう一息

林床に敷き詰められた緑の草木が美しい

緑が美しい

白根御池小屋

白根御池小屋

白根御池のテント場は鳳凰三山や北岳の眺めがいい

テン場は眺めいい

ヒメイチゲ(白根御池~草すべり間)

ヒメイチゲ

白根御池から草すべりまで、再びきびしい急登となる

草付の急登

キバナノコマノツメ(白根御池~草すべり間)

キバナノコマノツメ

草すべりの防鹿柵の内側は、シナノキンバイやミヤマキンポウゲの群落地となっていた

柵の中は満開

防鹿柵の外側も圧巻のお花畑となっていた

柵の外も

草すべりは鳳凰山をバックに高山植物の豊かな登山道が続く

展望と花と

ハクサンイチゲ(草すべり)

ハクサンイチゲ


晴れていた土曜日に出発できず、海の日の後取っていた平日休みを利用する。これなら混むことは避けられそうだ。
早朝に車で出発する。首都高と中央道を使えば芦安の駐車場まで2時間半で行ける。新潟や上信の山なんかよりずっとアクセスがいい。甲府昭和ICから南アルプス街道を走り、芦安駐車場には5時半に着いた。

ここからは乗合タクシーとなる。50分ほど揺られて登山口の広河原へ。明日が平日なのでそれほどの人出はないが、乗合タクシーの運転手さんは商売熱心で、朝早くから下山者を待ち構えていた。
空はどんより、少しだが雨も降っている。今日は午後から天候回復する予報である。急ぐ必要はない。ビジターセンターの展示物を見たり、登山届けを書いたりして小1時間ほどゆっくりしてから出発した。

白根御池を通る登山道は初めて歩く。大樺沢沿いの道と違い、大樺沢分岐から先は樹林に覆われた急登の尾根道となる。登山道の整備は行き届いているが所々で段差があり、なかなか骨が折れる。
やがてシラビソなどの黒木の登りが延々と続くようになる。展望もなく、大樺沢ルートとは雰囲気が180度違う。あちらの道は明るい谷間の道ながら、左右を深い谷に囲まれ南アルプスの山のスケールを感じさせてくれるが、こっちは針葉樹林の中の単調な登りである。
今日は3連休の最終日で、この道を下ってくる人が多い。登りは大樺沢沿い、下りはこちらをとる人が北岳登山の定番のようだ。
昨日は大盛況だったようで下山者は後から後からやって来て、それこそ30秒ごとにこんにちはの繰り返しになる。

テントを背負ってのこの急登はきつい。前回は大樺沢ルートでさえもバテバテだった。ふたつめのベンチのあるところでたまらずザックを下ろし息を整える。
やがて少し緩やかな斜面になると背後が開け、鳳凰三山の稜線が望めた。小さな沢の流れるところには、この山域ではおなじみのタカネグンナイフウロがたくさん咲いていた。白花も少し見かける。他にキンポウゲやサラシナショウマなど、高山植物が少しずつ揃い始める。

さらにひと登りで、白根御池小屋に着く。歩き出しから2時間と少しだった。小屋の前には多くの人が集い、夏山シーズンに入ったことを実感させられる。ソフトクリームがよく売れているようだ。
空は白っぽいものの、御池を前景に鳳凰三山の眺めがいい。正面には北岳バットレスも姿を見せていた。

さあ、ここからどういうプランでいくか、まだ決めかねていた。池周りは居心地が良さそうなのでここにテント泊し、明日小太郎山を往復する案。ただそれだと明日の行程が長くなるので、北岳肩の小屋まで頑張って登ってしまおうか。
小太郎山は肩の小屋からの方が近いし、今日のうちに北岳にも登れそうで楽しみは多い。最初はあまり考えもしなかったこちらの案でいくことにした。してしまったというべきか。

シナノキンバイ(草すべり)

シナノキンバイ

小太郎山分岐付近。稜線の先に小太郎山、その奥に甲斐駒ヶ岳が高い

展望の稜線

小太郎山分岐からは、北岳を仰ぎながら森林限界上の稜線歩きとなる

ゴール近し

仙丈ヶ岳

仙丈ヶ岳

北岳の山頂部を見ながら、肩の小屋まであと3分となる 拡大

ビールまで3分

北岳肩の小屋

肩の小屋

肩の小屋のテント場は、鳳凰三山が真正面に大きく望める絶景の場所にある

絶景のテン場

岩稜を辿って北岳の山頂部へ

北岳へ

北岳の山頂直下で、猿の大群と遭遇する。親子猿もいた

猿が横断

北岳直下にて、肩の小屋から続く稜線を見下ろす。バックは甲斐駒

伸びやかな稜線

標高3193m、北岳山頂

日本第二位

雲海沸き立つ北岳山頂

天空の地

北岳山頂から、間ノ岳に続く3000mの縦走路を望む

縦走路はどこまでも



登山口から御池まで標高差700m、さらに肩の小屋までは800m。まだ半分もこなしていないがここから上は花と展望が楽しめそうだ。それを励みに、池の横から伸びる急斜面の登山道に取り付く。
草付きの明るい雰囲気が続き、花もタカネグンナイフウロやミヤマキンポウゲに加え、これもこの山の主役であるミヤマハナシノブ、さらにはキバナノコマノツメが現れる。小さな白花はヒメイチゲだろうか。
ダケカンバの背が低くなるにつれ見通しもよくなって、北岳が真上に大きく、どんどん近づいてくるのがわかる。白一色だった空もどことなく青みがかって来たように見える。

展開はよいが体はこの上なくきつい。高度を上げるにつれ傾斜がどんどん増してくる。休み休み登るしかない。
ハイマツが出てくると広い草地の斜面となり大樺沢からのルートが合わさった(草すべり分岐)。防鹿柵の内側にはシナノキンバイが大群落である。これを見るとやはり、鹿の食害は南アルプスの景観に大きな傷跡を残してきたように思える。柵の設置が1995年というから、かなりの年月をかけてのお花畑復活、ということになろうか。
引き続き登っていくと、さらに大規模なシナノキンバイ群落。ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、ハクサンチドリまで咲いている。しかもこれは柵の内側ではない。あたりを見渡すと、柵の内外関係なく草すべり全体が圧巻のお花畑になっていた。
今までの2回の北岳登山でも、これほどの花を見ていなかった。北アルプスや飯豊、朝日連峰に勝るとも劣らない。防鹿柵だけでない全体的な鹿の駆除対策が功を奏したのか。

お花畑の間をジグザグに登り、ようやく稜線に出る。小太郎山分岐で北岳と小太郎山を結んでいる。標高はすでに2900m近い。
この先は樹林もないアルプスならではの景観となる。ここはぐるっと360度の眺望で北岳はもちろん、目の前に仙丈ヶ岳が大きく、小太郎尾根の先に白い甲斐駒ヶ岳、さらにアサヨ峰から鳳凰三山、遠く富士山があった。北岳の懐には肩の小屋も見えている。

その肩の小屋まで40分。仙丈ヶ岳や中央アルプスを見ながら涼しい稜線を行く。ミヤマキンバイイワツメクサ、ミヤマダイコンソウ、イワベンケイなど高山植物が切れ目なく咲いていた。
比較的大きな岩場を乗り越えていくと、尾根の西斜面には大規模なハクサンイチゲの群落が続く。花と展望がほしいままの稜線だ。「生ビールまであと3分」の案内を過ぎ、標高3000mの肩の小屋に到着する。
標高差1450mは、鴨沢からの雲取山や先日の岩木山と同じくらいなのだが、北岳のこのルートは、要する体力が一回り違う。それでも何とか登ることができた。しかし体は相当くたびれている。

テント設営を終えてビールでも飲みたい気もするが、どんどん大きくなってきた青空に誘われてしまい、北岳山頂を往復することにした。
岩ガラガラの稜線にも不思議と花がたくさん咲いている。今まで見ていなかったものだけ挙げてもイワウメチョウノスケソウオヤマノエンドウ、アオノツガザクラ、ツガザクラ、タカネシオガマ、クモマナズナタカネヤハズハハコキバナシャクナゲ、タカネツメクサ、ミヤマオダマキ、コイワカガミなどきりがない。
最初の北岳登山の時見ていたタカネマンテマは、目を皿のようにして探したが見つけられなかった。前回は帰宅してから写真を見てそれとわかった。絶滅危惧種であり是非今回ちゃんと見てみたかったが残念。それでも北岳が日本有数の高山植物の宝庫であることがよくわかった。

肩の小屋から山頂まで、岩屑に足を取られながらの標高差200m。背中の荷物は軽くても、さっきまでテント泊装備で登ってきた身には相当つらかった。それに今日は右足の足首と膝に痛みがある。途中でダマシのピークもあり、なかなか着かない。
山頂が見えてきたころ、前方30mくらいのところを猿の群れが横断していった。その数は半端でなく、おそらく50匹くらいいたようだ。標高3000mに鳥以外の動物の群れがいること自体、驚きである。
猿がいなくなるのを待って、最後は疲れ果てて南北に長い北岳山頂に到達した。

雲が多くなってしまったが三等三角点の山頂は眺望満点。甲斐駒や鳳凰三山に目が行きがちだが、長野側の綿々たる山並みも見応えある。間ノ岳から赤石岳にかけての主脈稜線もダイナミックだ。
疲労がピークに達し、すぐに下ろうとするのは怪我をし兼ねず危険を感じた。疲れがある程度取れるまで、展望を楽しみつつしばらくベンチで休むことにした。
足首と膝痛は重い荷物にかかわらず靴はいつものライトトレッキングシューズであることが原因なのかもしれない。登山は背負う荷物の重量によって履くべき靴を変えたほうがいい。軽い靴はあまり重いザックだとしっかり支えられず、ガクガクして足に変な負担がかかってしまうようである。

時間をかけて肩の小屋へ下る。生ビールはすぐに酔いがきた。気圧が低いせいもあるが、体が参っている証拠だ。しかしまだ食欲があるだけいい。
この日のテン場は結局3分の1くらいの入り。テントの前で食事を作り始めると雨が降ってきたので中に入る。30分くらいで止んでくれたが、テントで横になっていると、もう体を動かすのがおっくうになる。
西の空に沈む夕日を見に外に出たが、その後はすぐに寝た。